光を当てて変えていく  NexTechWeek 2023 東京農工大学 ブース

<光を当てて変えていく  NexTechWeek 2023 東京農工大学 ブース>
 
これは NexTechWeek 2023 東京農工大学 ブース備忘録である。
 
「光を当てて変えていく」というコンセプトテーマでの展示である。「可視光とイメージセンサによる行動支援と光空間通信により人とデバイスを繋げ、サポートします」と掲げられている。このグループでは事業内容・テーマとして「発光体AR」「水中・農業IoT」「行動解析・支援」 「関係性の分析・可視化」ということを挙げて活動しているようだ。
 
これら4分野の中で「水中・農業IoT」が目を引いたので説明を受けてきた。
 
先ず、こんな事象を想像してほしい。
 
養殖場・畑の中などに、水中・土中にセンサーが設置されている。そこでは水中の酸素の濃度であるとか、土壌のある成分が日夜問わず測定され続けている。
 
測定されているデータはただ測定しているだけでは宝の持ち腐れだ。データを解析して分析して何らかの知見を得なければ意味がない。そうした解析・分析を行うためには、水中・土中においてセンサーで測定しているデータを何とかして取り出さなければならない。
 
データを取り出すためには、そのセンサー部位のところに出向いて、電子記録媒体を使ってデータを書き出すとか通信手段を用いて通信によってデータを取り出すとかしなければならないのは周知の事実であろう。
 
今回の展示は通信手段を用いてデータを取得するものであった。センサー部位にはLEDの発光装置が付けられている。LEDの発光装置からは可視光が発せられている。発せられている可視光に信号がのる。その信号の中身はセンサーで測定されている数値データだ。
 
数値データが乗った信号が LEDの可視光を媒体として発せられている。LED発光装置は面状であり、発光自体は点滅したり色を変えたりしている。そうすることで信号を可視光に乗せている。
 
レーザのような一直線の鋭い光を使うのでなく、あくまで可視光を使っている。ある程度角度のあるところからも見えることになる可視光を使っている。
 
LEDの発光装置から発せられた信号の乗っている可視光をどのように受信するのか。この取り組みでは何とドローンが出てくる。そのドローンにはイメージセンサが搭載されている。イメージセンサとは、対象物から発した光を受光し、光の明暗を電気情報に変換するデバイスのことである。LEDの発光装置から発せられた信号の乗っている可視光は、ドローン上のイメージセンサで受光する。
 
ドローンはご存知の通り空中を飛行して動いて揺れている。位置が常にぶれることになる。動いて揺れているが故に位置がずれ続けている。単純に考えるとドローンでは受光できないと考えがちだ。
 
しかし、受光する光は可視光である。レーザのような一直線の光ではない。ある程度の角度を持っても見える電磁波である。
 
発せられているのはLEDからの可視光である。だからドローンのように動いている物体でも可視光は見えることになる。だから空中のドローンは可視光に乗った信号をキャッチできる。ドローンはイメージセンサを介してセンサー部位から発せられている信号を受信できることになる。
 
ドローン内で受信した信号はドローン内のイメージセンサにて光から電気の情報に変換され、ドローンに装着された電子記録媒体にでも記録されることになる。
 
ドローンは飛行して地上にいる我々の元へと帰ってくる。そうしてドローン内の電子記録媒体を入手することによって、センサーデータを得ることができる。
 
結果、水中・土中のセンサーからセンサデータがドローンに渡されてセンサーデータを我々が受け取るという事象が描かれることになる。
 
水中・土中にはセンサーが設置されていてLED発光装置から可視光が発せられている。一方ドローンが空中を飛び回ってセンサー情報を収集する。ドローンが帰ってくるとセンサーデータが得られるということになる。
 
そんな事象である。この事象は展示の映像で紹介されていた。
 
なぜ可視光通信を使うのであろうか。ふと考えてみる。一般のIoTを考えるとセンサ部位の近くにWiFi基地局でも設置すればセンサデータが収集できそうにみえるからだ。
 
このグループは農業IoT分野で活躍している。農業IoTが、地上だけでシステム全体が完成するならば、地上のWiFi基地局を使うことは多いにありうる話だ。
 
しかし、農業では水・土をふんだんに使い、農作物は水中・土中の状態にも深く関係しているのはいうまでもない。水中・土中にセンサーを設置するという話には当然なってくる。水中・土中に設置したセンサー部位からセンサーデータを取得しようと誰しもが試みることになる。
 
しかし、水中・土中のセンサーデータをセンサー部位から取得しようとする場合、特に水中においては、WiFi電波が届かないということが起こりうる。水中のセンサ部位にはWiFi電波は届かない。届かないので地上のWiFi基地局経由を利用したセンサデータの収集はできないという話になる。
 
そこでこの展示のグループは、特に水中に設置したセンサー部位からのセンサーデータの取得をするのに可視光を用いることにした模様だ。しかも信号を受信する、あるいは受光するのに、空を動き回るドローンを利用することで、単にデータの収集をするのみならず、さらなる効率化を図ろうとしているのだ。この展示のグループの技術力が唸る分野であるのだ。
 
水中では赤い色の可視光が届きにくいと言われている。水中では赤い色は5メートルくらいであれば届くそうで、この距離5メートルが可視光通信が正確に通じる距離であるそうだ。
 
農業分野での5メートルを考えた場合、例えば水深5メートル・水中の5メートルといったことを考えた場合、この5メートル以上の距離を使うことはあまりないと言えるのではないか。すなわち可視光通信は農業分野では使えるという話にもつながるそうである。
 
水中での通信ということを考慮した場合、可視光の他に「音」を利用するというのがあるそうである。音を通信媒体として利用するのである。通信会社などではこの音を利用した水中での通信の技術があるそうである。これはこれで興味深いが、光を利用した通信に比べて速度はなかなか出ないというのが概略になりそうである。
 
上記「光を当てて変えていく」というコンセプトテーマでの展示の中で「水中・農業IoT」が目を引いたので説明を受けてきた。
 
大学というところは興味深いテーマを探しては技術力を駆使して深掘りしていっている。そんな典型的な展示だとも思えた。他にも「発光体AR」「行動解析・支援」 「関係性の分析・可視化」というのがあった。これらも可視光通信・光の技術を用いた興味深い展示であった。
 
以上
 
 

おちゃ11