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大東京カワセミ日記202 カワセミと都市と生態系と

「都市=人間のつくった人工空間」と「自然」は、二項対立でしばしば語られる。

でも、実際は、二項対立じゃない。

というのも、この場合の「自然」という言葉は、2つのレイヤーがごっちゃになって語られているからである。

具体的には、「(比較的人の手が入っていない)地形」というレイヤーと、「(比較的人の手が入っていない)生き物の集団」というレイヤー。自然という言葉には、2つのレイヤーが含まれている。

この2つのどっちも、私たちは「自然」と呼んでいるわけである。

そして「生態系」というのは、地形と生物集団と、そこに降る雨だったり、大気だったりという環境をひとまとまりにした、まさに「系」である。生態系はひとまとまりで、レイヤーで切り取って語れない。

生態系は、自然状態の場所にもあるし、都市にもある。

都市とはなにか。

都市とは、生き物から見れば、人間がつくった「地形」だ。

そして、そんな人間のつくった都市という地形を含んだ生態系はちゃんとある。

都市という地形のうえにも、さまざまな生物集団が暮らしている。家の中のゴキブリから、下水路に住むネズミから、電線に並ぶ鳩から。。。。こうした生物集団が暮らすことのできる「環境」が備わっているわけである。

それぞれの生物集団の「環世界」の視座を獲得すると、場合によっては「都市という地形」のほうが、「自然という地形」より暮らしやすいケースだってあることが、みえてくる。

たとえば、都市河川のカワセミ。

カワセミは清流の鳥のイメージだけど、カワセミに必要なのはきらきら美しい川じゃない。

①魚食性なので、魚やエビなど水生生物がたくさんいる「水系」があること ②崖に巣をつくるので、巣作りに適した崖があること。

以上2点を満たした上で、③親鳥にとっては、猛禽類などの天敵から身を逃れやすいこと。④卵と幼鳥にとっては、ヘビ類などの天敵から身を護りたいこと。

以上4点が満たせると、そこはカワセミにとって「適応しやすい天国」ということになる。

一見、都会のどぶ川にしか見えない、三面コンクリート張りの都市河川も、その環境に適応した水生生物(魚、エビ、ザリガニ)などが大量繁殖していれば、①の条件を満たすことになる。

また、こうした都市河川の壁面にある水抜きの穴は、一部がすでに使われていないため、格好の巣穴になる。つまり②崖の巣穴がある、という条件を満たすことになる。自分でほらなくていいので楽ちんである。

さらに、都市河川だと、人通りが多いうえに、そもそも猛禽類がいっぱいいるわけじゃないので、③親鳥の天敵がいない。さらに、都市河川の壁面には、卵や幼鳥を狙うヘビもいない。つまり④卵と幼鳥の天敵もいない。

なんと、以上4つを満たした都市河川は、カワセミにとって「天国」だったりする。都市という地形のレイヤーの要素を精査すると、実は生き物によっては、「自然」よりも「暮らしやすい」ケースだってある。

ゴキブリがそうだけど、案外カワセミだってそうかもしれない。

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