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『菜の花の沖』

 ひとつ前の読書感想文をポストしたのが8月。実はこの間、司馬遼太郎の長い長い小説を読んでおりました。
 江戸時代後期に北前船の海運業を営んだ高田屋嘉兵衛の生涯を題材にした物語です。
 淡路島の小さな村の水呑百姓の子息として生まれた嘉兵衛は、船員の最下層であった炊事係から身を起こし、やがて船頭となって北前船の海運業で大きく成功する一方で、しだいに商売よりも船乗りとして蝦夷からその先の千島列島に向かう未知の航路を開拓していくことに対し抑えがたいロマンを抱いていきます。そんなある日、とある事件がきっかけで鎖国日本の禁を破ってロシアとの外交に巻き込まれていきます。
 司馬遼太郎の作品の中では比較的マイナーな部類かと思いますが、江戸時代の日本人の社会構造や海運を中心とした商品経済の仕組み、さらには蝦夷(アイヌ人)統治政策などが緻密な取材をもとに生き生きと描かれていて、歴史小説としても、ビジネス小説としても面白く、全六巻最後まで飽きずに楽しめました。

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