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【王からの手紙7】アフガニーとジャパニーはドーストなんだってば!

 王様のハウスキーパーと思われる、4か国語をあやつる(でも私の分かる言語はない)カーリーと言う男と、言葉を使わないコミュニケーションを図り、少しずつ状況が分かってきた中で、夜中に「ご飯」と言って夜間外出へ連れていかれた…どうなるのだろう。


この話は、以下を読んで頂くと、より楽しめます。お時間のある方は是非ご覧いただければと思います。

また、文中に出てくる王様の話は、以下のものとなります。

※ 今回のコラムは、避難勧告が出ている国、エリアへの渡航を推奨するものではありません。昔の旅の情緒を伝える目的で投稿をしておりますので、あらかじめご承知おきください。


 月明りしかなく、まったく何も見えないデコボコした夜道を、必死に、ぼんやり見える白いカーリーの服を追いかけていた。

”日没後に、あの戦地としてニュースで報じられていたジャララバード”を歩いている…そんな状況に現実味を感じられず、自分が今これを体験しているとは信じられず、まるで「テレビを見ている」ようだった。

 しかし、これが現実であると認識できるのは、私自身の内部から沸き起こる1つの感情だ。

 それは、カーリーへの怒りのような感情…

 こんなとこ歩くから…


 つまずいてこけそうやん!!!



 そんなカーリーに文句をめっちゃいいたい気持ちをぐっとこらえていた。
(と言うか、着いていくので必死で文句をいう余裕がなかっただけなのだが)

 10分ほど歩いただろうか…カーリーは1軒の家に入っていった。

 私も入っていいのか…多分カーリーは良い人な気がする。ここまでの旅の中で嗅ぎ分けてきた「悪い人の匂い」がしない。悪い事をしようとしていたなら、そもそも、さっき私が寝てた時に出来たはず。
 しかし、ここは何が起こってもおかしくない場所。アフガニスタンでの日本のイメージってどうなんだ?カーリーは良い人でも、この家の人は外国人、日本人を見て何を思うのか分からない。そもそも、日本人に対しての印象ってどうなんだ?や、外国人は全部一緒に見えてる可能性もある。

 うかつに家に入っていって、

 「お前らのせいで国が!!!」



 とか言われて襲い掛かられても、おかしくはないんやろな…

 でも、こんな

「ジャララバードの夜に、1人で路上に居る」


 とかいうシチュエーションが、怖すぎる。

幼稚園の時に教わった最も大切な事の1つである

「夜に1人で出歩かない!」


 を私は守れていないじゃないか!


 さっき、怒りを感じていたが、冷静に考えると多分、今、この瞬間私を守ってくれるのは、カーリーだけだろう…
(ここまで0.1秒)


 私は、お作法とか何も考えることなく、カーリーの入っていったドアに飛び込んだ。


 建物の中に入ると、目の前では…

 カーリーと知らないカーリーより年上のおっさんが、談笑をしていた。
 おっさんは、入ってきた私に目をやった。

 よし、ここはお行儀よくイスラム圏での魔法のあいさつの言葉だ!

「アッサラーム ムアライクム!」


おっさんは、笑顔で私に向かって挨拶を返してきた。

「ムアライクム アッサラーム!」

 (注 今調べたらほんとはちょっと違うんですね。当時はこう聞こえてました笑)

 うん、敵視はされていないようだ!


 そのまま、家に上がるように言われ、部屋に入ると…


 ごはんが用意されていた!


ん?ここカーリーの実家か?もしかして、このおっさんはカーリのおやじか?


 カーリーの親父なのか真偽は分からないが、
私は用意されていた顔よりデカいナンとカレーで、

”言葉が分からずなんの会話も出来ないので、静寂が包み込むちょっと気まずいが、ただ笑顔温かいので助かったディナー”

を楽しんだ。

 ご飯を食べ終わると、カーリーとともに、来た道を戻り、お屋敷へと帰った。


 屋敷でまたカーリーと2人きりになり、謎の言葉と日本語での会話が始まった。

 ―そうそう、聞いてみたかった。さっきみたいに、ドキドキしちゃうから聞いとかないと。アフガニスタン人から見て、日本って国は一体どのように見えているのか?

 「ねーねーカーリー、アフガニーは、ジャパニーの事をどう思ってるの?」


「アフガニー、ジャパニー、ドースト!」


 !!!


 ドーストって言った。

 ドースト俺分かる。
 確かヒンドゥーで「友達」だった。

 この辺のインドとかパキスタンとかも似た単語よくあるから、多分

「アフガンと日本は友達だ」


 って言ったはず。

 続けてカーリーはこうも言った。

 「アメリカ― ノー パキスタニー ノー ジャパニー ドースト ヒンディー ドースト」



やっぱりきっとあってるはず。


 アメリカは嫌い。パキスタンも嫌い。インド友達、日本友達って言ってる。
 よく隣国嫌いはどの国でもあるから、パキスタンは嫌いで、敵の敵は味方的な感じで、インド友達って言ってるんだろうな…。

 そして、ヒンドゥーとかウルドゥーとかの単語なら、少し分かるのあるし…

 そうか!ダメ元でもアフガニスタンではヒンドゥーの単語とか話してみれば良いんか!


 今後、困ったらやってみよっと。


 しばらくそんな話をしていると、すっかり眠たくなりカーリーに私は、
「もう眠たいので横になるね」と伝えた。
 カーリーは「おやすみ!また明日」的な事を言って、別の部屋へ行った。

 一人明かりの消えた真っ暗なリビングに居ると、とても不思議な気持ちになった。

 今日、パキスタンから、国境を越えて来たのが遠い昔のように感じる。
 窓の外を眺めながら、改めて、

 本当にここは”あのアフガニスタン”なんだな…

 そして、今、そのアフガニスタンの夜なんだよな…


 冷静になって考えると、「いつ戦闘が始まるのか分からない」みたいな恐怖感が襲ってくるけど、なぜかこの家の中に居て、カーリーが居ると思うと、不思議な安心感が沸き上がってくる。

 アフガニスタンの初日の夜をこのように、謎の男に守られ、謎の王様の家で迎えるとは、今朝は思いもよらなかった。


 明日は、王様の息子「ゼリフ」と「ハニフ」は来るらしい。
 どんな「王子様」が来るんだろう…


 そんな、アフガニスタンでの1日目の夜。 

 ↓つづき↓


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