平日エッセイ013:ハイヒールの足音と都会の喧騒。

朝の忙しい時間に限って、以外に鮮明に聞こえる音は割といくつもある。

信号機の歩行者音、スマホの着信音、バッグのジッパー音に、ヒールの音。

朝は騒がしい。
忙しくめまぐるしく人々が行き交って、電車に押せだの引けだのやっているし、1秒たりとも無駄にしないと顔に書いた人たちが通常の5歩を2歩に縮めて歩くなどしている。

朝はめまぐるしいしさわがしい。
自分のことだけで手一杯だし目一杯だし周りになどかまっていられない。

なのに、そんな喧騒のなかで、ヒールの音だけはいつでも鮮明に聞こえてしまう。

就活のとき、ヒールを履くのが好きだった。
今でも、ヒールを履くのはとても好き。

一気に「女」になれる気がするから。
「女性」ではなく
「女の子」ではなく
「おんな」でもなく
「オンナ」でもない。
「女」になれる気がするから。

ふとしたときに耳に入ってくるヒールの音は、いつでもちょっと現実的。
ボーッとした意識のなかに響く。

ヒールは見た目よりも痛い。
踏まれたらもちろんのこと、履くのだってちょっとした修行だ。
朝は良くても昼夜には、足先にも足首にも負担はかかるし。

カツンカツン と響く音
カッカッカ と焦る音
同じヒールの音でも、履いている人によって履いている色によって全く違う音がする。

だからヒールが好きだ。

月曜日の朝、喧騒の中で、自分の興味を引く音を聞いて見てほしい。
”行ってらっしゃい”

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