黒澤さん1モノクロ

マーケティングトレースの先にひろがる、格差のない持続可能な世界を。|COMEMO KOL Interview|黒澤 友貴さん

先日、日経COMEMOのKOLでもあるマーケティングトレースを主宰されているブランディングテクノロジーの黒澤 友貴さんのインタビューに、Nサロン COMEMO部として同席させていただきました。

黒澤さんがなぜマーケティングにたどり着いたのか、マーケティングトレースの先にはどんな世界が広がっているのか、非常に興味深いお話をたくさんお伺いすることができたので、簡単にインタビューレポートをお届けいします。

▼黒澤 友貴さん

黒澤さんと「マーケティング」との出会い

ー黒澤さんがマーケティングをはじめたきっかけを教えてください。

最初のきっかけは大学4年生の時にNPOでインターンをしたことでした。NPOという団体は自分達の伝えたいことや社会的な課題を外に伝えることが上手ではないことに気付き、「今後自分がNPOで生きていくためには」を考えたときにマーケティングをはじめとした経営学全般を学びはじめたことがきっかけになりました。特に最初はマーケティングに絞って勉強していたわけではなく、経営全般を20代でどこまで学べるかという観点で勉強しており、NPOでの活動の中でソーシャルマーケティングに出会ったことで、商品を売るだけでではなく「価値をどう届けるのか」を考えることに楽しみを感じていました。

ーその後「マーケティング」の分野に向かった経緯をお伺いできますか。

たまたま新卒で現在の会社でもあるインターネット広告の代理店事業に入ったことがきっかけです。自分でマーケティングがやりたくて絞ったのではなく、たまたま入った会社がそうだっただけ。マーケティングというよりは「コンサルティング」という職種に興味があったので、入社を決意しました。

マーケティングの力で事業者を支え、事業を拡大させたい

ー現在の活動に繋がっている原体験はどの部分でしょうか?
マーケティングの原体験は社会人になってからでした。若手社員の頃にやっていた中小企業向けにデジタルマーケの支援をする仕事での経験がマーケティングでの原体験かもしれません。社会人1年目から3年目までは自分でアポをとってコンサルをするところまで一気通貫で行っていました。

印象的だったのが、とある売上数百万のハンコ屋さんのECサイトの案件です。インターネット広告の支援や打ち出し方のコンサルを行っていました。もともとお客さんからするとハンコは買えればどこでもよく、ここで買うという動機をつくるのが大変でしたが、職人さんのこだわりや打ち出し方を変えるだけで売上が3倍~5倍になったんです。ここで事業を成長させることとマーケティングの成功体験ができました。

この仕事を行っているうちに、マーケティングを全く理解していない経営者の事業がどう衰退していくかも客観的に見えて、自分が本当に届けたいものが見えてきました。マーケティングっていう力でより救える事業者を増やし、事業を拡大させ、支えたいと思った。これがマーケティングの原体験です。

画像1

世の中全体のマーケティングの底上げをしていきたい

ー黒澤さんと言えば「マーケティングトレース」ですが、どのような経緯でつくられたのでしょうか。

最初のきっかけは、マーケターが「トレーニングは何すればいいんだろう?」って思った時に、エンジニアやデザイナーと比べてお互いに学べるコミュニティがなかったからです。「マーケティング思考」を鍛えるコミュニティがなかったため、トレースって言葉を借りてきてコミュニティをつくりました。

2018年の4月に「マーケティングトレースとは」を発行。最初は自分のトレーニングをやっていました。それを体現したのがこの記事(マーケティングトレース-マーケターの筋トレ-とは何か?)です。一人の視点だと学びがないので、コミュニティをつくりたかったのがきっかけです。

マーケティングトレースとは?
成功企業の裏側にあるマーケティング戦略をフレームワークを活用して言語化し、最後に自分が事業責任者だったらどうするかを考える。
分析力と仮設力を鍛えるトレーニング方法です。

アウトプットはnoteで出すのが基本となっています。これはコミュニティをつくるための手段でもあって、ハッシュタグを追いかけることでアウトプットに対してフォローしあう設計にしています。

ー黒澤さんはかなりアウトプットの量も多いと思うのですが、どうやってネタをストックしてアウトプットしているのでしょうか。

マーケティングトレースをする企業は
・売上が急拡大している
・社会課題、顧客課題を解決する
・自分が好きな企業
をストックしておいて、分析しています。

分析をする際、たとえばPEST分析は日経新聞、博報堂生活総合研究所からとるとか型化をしている。自分が効率よく仮設分析ができる型をつくりはじめました。

ーマーケティングトレースに参加している方はどんな方ですか
マーケティングをこれからはじめたいひと、またはマーケティングの仕事をしていると言っても実際はコンテンツ制作してるだけとか、言われていることを作業する人にしかなっていない人も多くいるので、もっとマーケティング戦略を考えたいという人が参加して頂くことが多いです。中級者以上の人はあまり参加しませんが、普段マーケティングをアウトプットする場がない人にも行ってもらうことで、世の中全体のマーケティングの底上げをしていきたいと考えています。

価値の届け方を学ぶ人を増やし、価値を届ける世界をつくる

ー世の中全体のマーケティング思考の底上げすると、その先にどんな世界が待っていますか。
企業の持続可能性、やりたいことがあるのに事業がなくならない世界をつくりたい。そうするためには世の中全体が価値の届け方がうまくなって価値を届ける世界をつくる必要があると考えています。マーケティング思考をもった人間が増えれば、企業だけではなくもっと個人のやりたいことができる世界になり、もっと世の中全体の仕事が楽しくなると思っています。

いい企業が残る世の中に。
いい価値を届けている企業が生き残り、持続的に維持できる世界を。

企業としては技術をもっているが、マーケティング思考を持っていないばかりに、うまくいかないことが多い。それを救いたいです。日本では市場規模は下がってくるものが多いので、海外や新しい市場に進出できるような人が増えればより競争力が増える。どれだけ世界で戦える企業を増やしていくかもこれからの日本では重要だと考えています。

未開拓のセクターにマーケティング思考を

ー都市のポジショニング戦略ということでCOMEMOにも投稿されていましたが、これからは都市にもマーケティングは必要でしょうか。

都市はもちろん、他にも様々な領域でマーケティングの視点をもっていることが大事だと思います。マーケティングがまだ入ってないセクターにマーケターを入れ、人材流動性を高めたいということも考えています。

▼これからマーケティング必要な領域
「医療系、病院」は本来は届ける先の患者のニーズをいかにくみ取るかが重要にもかかわらず、医療従事者が優先されることがしばしばあります。
「学校、教育」についても、子供たちを顧客と考えたときに、長期的な視点で「育てる」を考えてサービス提供できているのかを考える必要があると考えています。

いままでの既得権益や常識でまわっているような業界、もしくはシード期のスタートアップなど、フルコミットのマーケターを置くのが難しい領域に今後マーケティング思想をもつひとが重要になってくると考えます。いい発想を持っているエンジニアの会社などにマーケターが入って戦略があれば、未来のマーケットを描いて資金調達してもっと大きな未来を描けたりなどもっと可能性がひろがります。

現在、マーケティングトレース for スタートアップをやって、競合のマーケティングトレースをおこなうサービスを行っていますが、事業会社のマーケターはスタートアップのスピード体感してないので、双方にとって学びがあります。マーケティング戦略的には正しいと思っているものでも、そのスタートアップの事業ビジョンに合ってないと採用されない、などを肌で体感することができるので、勉強になります。

画像2

黒澤流アウトプット術

ー黒澤さんの発信はかなりタイムリーにネタをキャッチアップされているかと思いますが、工夫されていることはありますか。

キャッチアップが早いのではなく、アウトプットが早いだけだと思います。アウトプットが早いのは、既に型があってトレーニングをしているからです。編集からのアウトプット量はかなり意識しており、ほぼ毎日noteは投稿していて、1か月に30noteと決めています。毎日だと苦しくなるので、毎日1本ではなく、あえて月に30note。溜めて書くのもOK。1本あたりの執筆時間は30分~1時間半程度です。

毎日アウトプットを出すって決めてよかったことは
・情報のアンテナの貼り方が変わったこと。
・情報のインプットの仕方が変わったこと。

常に4本~5本はストックするようにしていますが、ネタがなくなることもある。todoistをnoteのネタ帳にしていて、5分隙間があったら見直してとか、隙間時間を活用しています。インプットは主に「日経(電子版)」「テレ東(WBS)」「Newspics」「twitter」を筋トレしながら見ています。アウトプット前提じゃないと、なかなかインプットできないです。

ー毎日発信することは自分の頭の整理に役立っていますか?

はい、発信はセルフブランディングよりも、インプット効率のためです。良く見せようと思ってやると、長続きしないので。

とにかくアウトプットの型を決めて、1日ひとつアウトプット出すっていうの決めるとかける用になります。文章の書き方を習ってもかけません。毎日1時間~1時間30分でトレーニングとしてやっている。基本的には数で縛ります。やる時間を決める、文字量を決める、アウトプット数を決める。これができればアウトプットは習慣化できます。

朝はインプットの時間(7時から9時30分)。夜はアウトプットの時間と決めている。いいインプットがないと、いいアウトプットができない。昔から決めてやるのは得意なタイプ。 飲み会から帰ってきた日も25時までに書くと決めてます(笑

ー同じ型を使ってアウトプットする際に、オリジナリティを出すにはどうすればいいですか。

その人自身の仮説を立てるのが大事です。その人の視点がおもしろいことが重要です。「自分だったらどういう打ち手を考えるか。それを活かして次の展開どうする?」のようなアイデアが自分の独自の視点になります。この「自分なりの視点」については難しいので、2020年はここを少しずつ鍛えていきたいと考えています。

格差をなくして、個人のポテンシャルを活かす世界へ

ーちなみに黒澤さんが好きな企業は、どういう軸ですか?

無意識にそのブランドを使っているようなもの、生活になじんでいるものが気になります。こういう仕事をしているので、マーケティング戦略している会社を使いたくなる。使っている=自分の中に浸透している、それを観察しているイメージです。「自分も使っていて、みんなも使っている、それはなんで?」その理由には自分がそれを使っている要因もあるので、その問いを往復しながら考えています。

マーケティングトレースをやってみて好きになったものはBAKEやZARAですね。他のブランドも買いたくなりました。マーケティングトレースやっていると街を歩くのが楽しくなります。

画像3

ー社会課題や福祉問題に興味があるのはどんな背景でしょうか。

NPOとの出会いは大きかったです。ちょうど社会に出る頃は社会起業が成功している時代でした。サラリーマンより、社会起業のほうがかっこいいと思っていて、ビジネスの力で社会課題解決するというのにあこがれて、社会的な問題に取り組んでいました。

弱い人を救いたいというよりは、とにかく格差が嫌いなんです。格差をなくしたい。障害はたまたまその人が持っているひとつの要素であって、その人自身の問題ではなく周りの環境の問題であることが大半です。その環境を変えることで、本来その人の持っている力が伸びるというのをやってみたいんです。

ポテンシャルがあっても環境が悪ければ活きない。それぐらい環境の力はとても大きいので、マーケティングなどを通じてその環境を整える取り組みをこれからも行っていきたいと思っています。

///インタビュー完///

(参加してみての所感)

黒澤さんのマーケティングの力でより救える事業やひとを増やしたいという熱い想いは、とても共感を覚えるものでした。せっかくいいものを持っていてもそれを外に伝えていくスキルがなければ存続できない。いい価値を届けている企業が生き残り、いい企業が持続的に維持できる世界をつくりたいという考えは、とても希望を持てるお話でした。またインタビューの中で「救いたい」というワードをよくつかっていらっしゃったのも印象的でした。そこには、NPOでの活動や、仕事を通してあらゆる格差による悲しい現実をたくさん見ていらっしゃったからこその想いなのではないかと感じることができました。

マーケターだけではなく、もっと世の中ひと全体がマーケティング思考を鍛えることで、もっと個人のやりたいことができる世界になり、世の中全体の仕事が楽しくなる、そう思うとよりマーケティングを学びたいという意欲が湧いてきたのでした。だいぶ前からFacebookのコミュニティに参加しているもののロム専になっていることを反省しつつ、わたしもよりマーケティング思考を身に着けていきたいなと思えたインタビューでした。

終始楽しくお話をお伺いさせていただいた黒澤さん、パンダ🐼が好きですとお話されているときの素敵な表情も忘れません。貴重な機会を頂き、ありがとうございました。

「おいしいものを食べている時がいちばん幸せそうな顔をしているね」とよく言われます。一緒においしいもの食べにいきましょう。