今度の秋、迫り来る冬

秋を感じる間も無く冬がやってきた。
秋はいつも知らない間にやって来て、知らない間に何処かに行ってしまう。
私たちに気持ちのいい気温を体感させて、優しくそよぐ風で気持ちを落ち着かせてくれる。
例えるならば、あまり気にした事もないようなことに気がついてくれる女性のような、すっと先回りをしてエスコートしてくれる男性のような、しかし気を衒った感じがしない心地よい性格の人。
秋の様な人間と付き合うとなれば、気が夏のような人間なのかも知れない。
夏のような人間、それはあまり気を使わなくて前しか見えない気まぐれな人間。
秋な人間は知らず知らず気まぐれに同調するように接している。
絶妙なバランスが保たれている。
冬な人間は身を守るように周囲に自分をひけらかす事はないが、内なる想いは融雪の芽吹きのように沸々としている。
春の人間は内なる想いを芽吹かせる暖かさがある。
春夏秋冬さまざまな人間模様がある。
人間と同じように季節にも表情がある。
秋は素敵な表情を持っている。
世界が色鮮やかに彩られる。
その短い間に人間は心を奪われる。
とてつもない魅力だ。
営業車で鴨川沿いや大原の山道を走って気づいたけれど、やはり魅力的な世界だ。
しかし、次の日、次の週になると目に見えて表情が変わる。
すこし寂しくなる。
厳しい冬が急にやってくる。
その厳しさ故にあっという間に秋を忘れてしまいそうになり、底知れぬ罪悪感に苛まれるが、それさえも忘れてしまう。
気づけば冬。
長い冬。
どこか無機質な冬。
無色な印象ばかりだけれど、そればかりではない。
無機質であるからこそ見える模様がある。
その景色は秋が施してくれた残像のような手がかりである。
それを元に冬の無機質な世界に色彩を持たせてゆく。
それ次第では春を感じ夏も感じ、秋を再構築できる。
白いキャンパスはこの無機質な冬にしかない特権である。
また今度の秋。
その季節に気付かされた事を忘れずに迫り来る冬を私は彩る。

2018/12/15 深夜2時の寝言

#日記 #エッセイ #冬 #季節 #散文

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