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佐野洋子『おじさんのかさ』(書評ラジオ「竹村りゑの木曜日のブックマーカー」6月23日放送分)

※MRO北陸放送(石川県在局)では、毎週木曜日の夕方6:30〜6:45の15分間、書評ラジオ「竹村りゑの木曜日のブックマーカー」を放送しています。このシリーズでは、月毎に紹介する本の一覧と、放送されたレビューの一部を無料で聞くことが出来るPodcastのリンクを記載しています。

※スマホの方は、右上のSpotifyのマークをタッチすると最後まで聴くことができます。


<収録を終えて>
『100万回生きたねこ』など、数々のベストセラー絵本で知られる佐野洋子さん。
今回ご紹介した『おじさんのかさ』も、今から30年前の1992年5月に発刊されたにも関わらず長く愛され、既に55刷の重版がかけられています。

良い絵本は子どもが読んでも大人が読んでも面白いとは良く言うものの、先日絵本編集者の方にインタビューさせていただいた時に感じたのは、むしろ絵本から得るものの大きさはある意味で大人の方が大きいのではないかということです。
(このときお話を伺った筒井大介さんのインタビューは、7月7日・14日の前後編に分けて放送するのでお楽しみにお待ち下さいね)

というのも、子どもの頃に出会った絵本を大人になってもう一度読み返す時に得られる感動が、あまりに大きいと思うからです。
久しぶりに手にとった時には、ああ懐かしいなあという程度のふんわりした印象だったものが、ページを捲るごとにどんどんくっきりと像を結んでいく。記憶が呼び起こされていく。
それは誰にも邪魔されない、隅々まで自分のためだけの時間であり、人生の中でも非常に純度が高い瞬間になるのではないかと思うのです。

そして、かつて絵本を手にとった子どもの頃の自分自身を思い出すこともあります。
ページを捲る度に、この絵が好きだった、この言葉がお気に入りだったと思い出すとき、私はまるで子どもの頃の自分が隣で一緒に絵本を覗き込んでいるような不思議な気持ちになることがあります。
ここに描いてあるケーキが美味しそうだったんだよ、この言葉が面白かったんだよと、幼い頃の自分が一生懸命教えてくれるような気がするのです。

その逆に、大人になったから今だからこそ絵本の中に隠れていたメタファーや主人公の背景など、明確には語られていない様々なものに気がつくこともあるかもしれません。

語られざるけれどもそこにあるものに気がついたとき、大人になった私は、おや、と思います。
そして、そこで見つけた発見を、隣で不思議そうな顔をしている子どもの自分に教えてあげます。

これって、こんな意味があったのかもしれないね。だって、ここにこんな風に描いてあるんだよ、気が付かなかったでしょ?

それは時間を越えた自分との交流です。
かつて読んでいた絵本を再び読み返す時、私達は自分を読んでいるのかもしれません。
自分が送ってきた人生が見えない文字でそこに書かれているのかもしれません。

『おじさんのかさ』が誕生して今年で30年。
そこには、きっと沢山の方の人生が、今日も書き込まれ続けているのではないでしょうか。

みなさんにとってそんな絵本があれば、是非教えて下さいね。

書評ラジオ「木曜日のブックマーカー」では随時リスナーさんからのメッセージも募集しているので、よければ是非感想などお寄せください。
「この本レビューして欲しい!」なども大歓迎です。
 
宛先はこちらです。
mail)book@mro.co.jp
Twitter)@yorupara
#木曜日のブックマーカー

※コメント紹介をお聞きいただくには、Podcast版ではなく、radiko版を選んでいただく必要があります。こちらは過去1週間分のみの公開で、石川県外の方は月額制のradikoプレミアムに加入いただくというハードルはあるのですが、季節の言葉や金沢ビーンズ明文堂書店さんのランキング、プランナーさんのお勧めなどもご紹介しているので、是非お聞き頂きたいです…!


それでは、今回はこのあたりで。
またお会いしましょう。

<了>



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