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クスノキは姿を変えて時を刻む

2020年から2年半をかけ整備工事が行われた伊丹市
新市庁舎は、2022年11月に開庁した。旧伊丹市庁舎の
北側で50年近くも市民に親しまれた26本のクスノキ。
それらの一部は二人の彫刻家により姿を変えた。日本
を代表する現代彫刻家の三沢厚彦氏と棚田康司氏は
ともに、クスノキを素材に木彫を手掛けられている。

でもそれは、温暖な地域の山奥で育つ年輪が均一な
樹木であり、今回のように都会に育つクスノキは過酷
な環境により、年輪や木の質は不均一になるという。
二人は、この場所で育ったクスノキから3体の作品を
作り、50年に及ぶ木の記憶を作品の中に落とし込む。

残された一本のクスノキはこれからも市民を見守って
そしてクスノキは彫刻へと姿を変え
スピリットベアーとよばれる白いくまに
50年に及ぶ記憶を受け継ぎ、これからの伊丹を
そして市民を見守っている
ホールに設置された二体の彫刻。もう一体の名はヴィオレ 
棚田康司氏による婦人の彫刻。過酷な環境で育ったクスノキは
美しい女性像へ。凛とした眼差しは伊丹市の未来へと
エントランスすぐ横の三沢氏による日本犬は
物事のはじまりを表すという白を基調に
すぐ側のベンチもクスノキから彫られたもの
その荒々しい質感に過ごしてきた歴史を感じる
2階には棚田氏による暦のトルソ 桜の少女
首元のボタンは、棚田氏がワークショップで集めたもの
その力強い眼差しで、伊丹市の未来を見据える
一本の木から生み出された複雑な形
棚田氏の3つ目の作品の薔薇と乙女。体にはクスノキの年輪が
その隣の三沢氏の作品の青い鳥は
空の青さを吸い込みつつ、緑の大地に降り立つというイメージ

建築と彫刻が交差して。旅では様々なものに出会う

ANIMALSへの想いや制作過程についても知る

しろくまといえば、富山県美術館にも

以前に熊本現代美術館で見たサイも思い出す

昨年の千葉市美術館での展示の様子も


もう一人の彫刻家の棚田康司氏。作品は一本の木から

彫刻家の生い立ちや、制作風景にもふれて


木の彫刻といえば、九州の旅でも出会った

気持ちのよい海と空の風景の糸島への自転車旅

由布院のアルテジオの有元利夫氏の作品は

素朴な表現で、静かな時間を内に秘める

北九州の旅でふれた船越保武氏と船越桂氏。惜しくも

今年に亡くなられた船越桂氏。いつか残された作品へ


彫刻作品へ姿を変えたクスノキ。都会にて育つ樹木は、
車の排ガス、ビル風、また台風の衝撃や地震による水脈
の変化の影響を受けるという。クスノキの小口に濃く
変色した年輪層があったといい、それは約30年ほど前
と思われる部分。棚田氏は樹木を見た際に、1995年の
1月に阪神淡路でおきた大震災の影響を感じたという。

都会に育つことで、粉塵や砂が食い込み、年輪の変化
も激しく、水分の含み方も不均一で割れの入り方が
強くなるというクスノキ。制作過程において棚田氏が
感じたというのは、クスノキが伊丹で過ごした時間。

そして時を経たクスノキは彫刻に生まれ変わり、また
かつてのように市役所を訪れる人を見守り、時を刻む。
そこに流れていた歴史を知り、そこから始まる新たな
物語にふれ、アートを間近で体感する。新たな時間を
刻み始めた伊丹市役所にて建物とアートを満喫した。

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