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政策考論:エネルギー安全保障

 こんばんは。Sagishiです。

 今回は政策関連の記事で、テーマは「エネルギー安全保障」です。あまり一般的に馴染みはない話かもしれませんが、やっていきます。まぁ、平たく言うと「車や電気を毎日使えるのはなぜか」という話です。


1 エネルギーの輸入先

 車などで使う「ガソリン」や、火力発電で使う「天然ガス」「石炭」、こういったものはエネルギー資源と呼ばれています。

 電力において「火力発電」の比率は7割に達しており、非常に高いです。それだけ日本は「天然ガス」「石炭」に依存した国ということで、これは以前『政策の質的議論:エネルギー政策』でも書きました。資源エネルギー庁の記事(2019年)で書かれています。

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 そして、「石油」「天然ガス」「石炭」の輸入先は次の図の通りです。同じく、資源エネルギー庁の記事から引用します。

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 「石油」については中東の比率が高いですが、天然ガスと石炭は「オーストラリア」「インドネシア」「マレーシア」など、東南アジア・オセアニアの比率が高いことが分かります。

 現在、ガソリンの料金が高騰していますが、原因は世界経済がコロナ禍を脱しつつあり、ガソリンの需要が高まり始めているのに、産油国が生産に消極的であるためです。

 このように、日本で使われるエネルギー資源は、生産国の事情によって利用料金が大きく左右されてしまう、場合によっては輸入されなくなってしまうという問題があります。

 これでもし冬季に日本の雪国でガソリンが枯渇したら、凍死するひとが出てしまいます。エネルギーというのは、生活や人命にも大きく関わるため、「エネルギー資源が滞りなく供給されること」は、非常に重要です。これを適切に管理するのが「エネルギー安全保障」です。


2 備蓄について

 石油や天然ガスなどのエネルギー資源は、その重要性のために最低でも3ヶ月程度は常に「備蓄」があるように管理されています。

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 もし有事が起きた際に、備蓄がないとすぐに急迫した状態に陥ってしまうため、「エネルギー安全保障」の観点からエネルギー資源は備蓄されています。

 最近、「備蓄放出」に関する報道がよくなされていますが、「備蓄放出」をしているタイミングで万が一有事が起きると、危険な状態に陥る可能性が出てきてしまいます。そのため「備蓄放出」というのは、本当に差し迫った状況のときにしかやるべきではないと言えます。


3 シーレーンについて

 「エネルギー安全保障」をさらに突き詰めていくと、エネルギー資源がどのような海路を通って、日本に来るのか、という議論になります。いわゆる「シーレーン」に関する議論です。

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 上図を見ると、中東からの石油はホルムズ海峡、マレーシアとインドネシア間のマラッカ海峡、そして台湾とフィリピン間のバシー海峡を通ってくることが分かります。

 一部、ロンボク海峡経由もあるようですが、ほぼすべての石油が上記のシーレーンを経由します。そして、どこかの海峡で問題が起きると、日本には石油が届かないことになります。エネルギー安全保障上、このような海路の安全を維持することは極めて重要だと言えます。


4 台湾有事問題

4-1 台湾有事が起きると

 特に最近、中国と台湾の対立が激化することで、台湾有事が起きるのではないかと言われています。

 そうならないような努力、安全保障体制を堅持することが最重要ですが、しかし万が一台湾有事が起きてしまうと、台湾海峡やバシー海峡の安全が維持されなくなる可能性が高いです。台湾海峡に問題が起きたら半導体の輸入が停止し、バシー海峡に問題が起きたら石油の輸入が停止します。

 エネルギー安全保障の観点からみると、台湾への攻撃は、実質的に日本への攻撃とほとんど変わらないようなインパクトがあります。

 よってもし台湾有事が起きてしまうと、日本は主体的に行動する必要がどうしてもあり、憲法や安全保障政策に照らしても、アメリカの後方支援で出ていかざるを得ないことになります。

 起きないようにすることが大事ですが、最悪の事態を想定した議論はしておく必要があるでしょう。


4-2 代替ルートについて

 台湾有事に関連した話で、台湾有事問題を起きたらシーレーンの代替ルートがあるのか、という話をしておこうと思います。

 衆院選挙期間中に、地元の立憲民主党の衆院候補者にシーレーン問題について質問をしてみました。すると、「シーレーンに問題が起きたら代替ルートを使えばいい」という内容の回答をいただきました。

 どのような代替ルートなのか、という話にはその場ではなりませんでしたが、シーレーンの代替ルートという議論をわたしは聞いたことがなかったので調べてみますが、なかなか見当たりません。

 国民民主党の参議院議員・浜口誠議員が、毎週Twitterのスペースでミーティングを開いているので、そこで代替ルートがあるかについて伺ってみました。すると、大変ありがたいことに「国土交通省に確認してみます」と返答いただきました。

 もし代替ルートがあれば、台湾有事が起きても即時に国家緊急事態の状態に陥ることがないかもしれないので、知っておくのは重要でしょう。

・浜口誠議員から11/30に回答がありました。代替ルートは「ロンボク海峡」だと言うことでした。



5 火力発電への依存度を減らす

 これまで書いてきたことを前提にすると、日本のエネルギー安全保障は、脆弱な状態にあるといえます。また原子力発電を積極利用することが難しい国内世論を鑑みると、早急に自然エネルギーの比率を高めていくことが必要です。

 鍵になるのが、太陽光パネルや蓄電池の一般家庭へのさらなる普及だと、わたしは考えています。また、EVを普及させられれば、EVそのものを蓄電池としても使うことができるので、これも推進していくことが重要でしょう。より安定的に「車や電気を毎日使える」よう、エネルギー安全保障を考えていければと思います。

 「政策の質的議論」の記事では、今後も政策的テーマについて情報を集めて、記事にしていこうと思っています。

詩を書くひと。押韻の研究とかをしてる。(@sagishi0) https://yasumi-sha.booth.pm/