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国民民主党の重点政策をチェックする

 こんばんは。Sagishiです。

 さて、衆議院が解散されました。10/31に投開票になるので、今回は政治についての記事を書いていこうと思います。

 「国民民主党」は9/15に、衆院選に向けた重点政策を公表しています。今回は公表された政策を読んで、個人的な意見を書いてきたいと思います。


1 まず前提から

 まず基本的な考えですが、わたしは現実的で、健全な力強い野党が必要だと思っています。そのほうが日本の政治にとって良いからです。なるべく、野党を支持しようとわたしは思っています。

 しかし野党を支持するからと言って、闇雲では意味がありません。野党の主張する政策が、「実現可能」なのかを知ること・考えることは重要です。実現可能性のない非現実的な政策を掲げる政党は、支持しても意味がないですし、支持するに足らないでしょう。

 今回、国民民主党を取り上げる理由は重点政策の要点がまとまっており、比較的主張している政策が分かりやすいからです。果たして国民民主党の「重点政策」は現実的なのでしょうか。見ていきましょう。

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 詳細については「重点政策の詳細」(pdf)を参照。


2 どのような方針なのか

 国民民主党のざっくりした政策方針は「財政バランスより経済優先」「格差是正」「教育・科学技術分野への投資」「国防・人権外交の重視」です。

 好ましく感じるのは重点政策②で「給料が上がる経済」を志向している点ですね。具体的にどうやって給料を上げていくのか、という政策の詳細設計は上図に書いていないですが、経済成長を謳っている点は評価できます。(というより経済成長を重視しない政党は支持できません)

 また、④で「安全保障」に触れている点ですが、外交・安全保障・危機管理の失敗で、支持率の暴落を招いた旧民主党政権から考えれば、現実路線を進もうという考えが見えるのは好ましいです。

 また、個人的に評価・期待したい政策は「児童手当の拡充」「18歳から国会議員資格の付与」「ネット投票」ですね。推進されることを期待します。


2-1 「積極財政への転換」について

 財政政策を、より詳細を見ていきましょう。

①現金給付
・一律 10 万円、低所得者には 10 万円上乗せして 20万円を給付
※一定以上の高所得者に対しては所得税に課税する方式

②減収補償
・事業規模及び売り上げの減少幅に応じて、家賃や光熱水費などの固定費を最大 9 割(最大月 2 億円)まで支援

③消費税減税と税・社会保険料減免
・経済が回復するまでの間、消費税減税(10%→5%)
・個人、事業者に対する税・社会保険料の猶予・減免措置を延長・拡充
・インボイス制度の導入中止

④財源の多様化
・「教育国債」の創設
・日銀保有国債の一部永久国債化
・富裕層への課税を強化(金融所得課税の累進課税化など)

 ①「現金給付」と②「減収補償」にはほぼ異論はありません。岸田内閣においても実行が検討されている内容です。ただ「現金給付」は実行・運用コストが膨大であることが分かっているので、マイナンバーカードの活用や、将来的には「デジタル円」を導入することで、使用期限をつけた現金給付を実現することが望ましいです。

 ③「消費税減税」は、積極的には支持しません。効果は一定のものがあるでしょうが、消費税を下げるよりも現金給付のほうが効果的だと考えます。「消費税減税」は高額な買い物をする層に最大のメリットがあるので、低所得層へのアプローチという意味では、現金給付のほうが適切に機能します。また、消費税減税をすると、すでに走っている様々な減免政策との整合性を取るための調整が多数必要になります。実行・運用までのコストが大きくなることが予想されるので、積極的に支持できません。

 ④は、かねてから国民民主党の主張する政策です。「教育国債」は、教育分野への予算を現在の5兆円から10兆円にするためのものです。「児童手当」の強化やリカレント教育への補償強化、科学技術予算の増強などが目的です。「教育国債」は財源問題を解決するには都合が良いですが、あえて「教育」の領域に限定する意義がどれぐらいあるのか、それを示すためにも何らかの目標の設定が必要です。

 「永久国債」は、検討しても良いと考えます。現在の日本は、財政均衡を重視するあまり、経済の好循環の醸成や適切な予算配分ができず手足を縛られた状態です。先進国で「永久国債」を導入している国家はありませんが、国内資本に支えられている日本には、「永久国債」を導入する余地は十分にあるはずです。もちろんリスクはあります、正直禁じ手的な手法だとも言えますが、経済成長のために必要性を議論しても良いと感じます。

 「金融所得課税」の強化は、税制の問題なので慎重な議論が必要ですが、「総所得に占める金融所得の割合」や「金融所得額」をトリガーに、最大55%程度までの累進課税を導入しても良いと思います。逆に、対象にならない層への課税は20%から10%に引き下げても良いでしょう。与野党で議論の土壌が形成されつつあり、今後実現される可能性がある政策です。

 国民民主党の主張する「積極財政への転換」には、各政策のリスクをよく理解しておく必要はありますが、経済成長に繋がる政策が書かれていると言えます。


2-2 「給料が上がる経済」について

 こちらは「成長戦略」に関する政策です。

①生産性向上につながる大胆な産業政策
・「大規模、長期、計画的」な産業政策を行い、生産性向上を目指す

②デジタル化、カーボン・ニュートラル対策の加速
・ DCN基金を創設
・再生可能エネルギー技術の開発、分散型エネルギー社会の構築を目指す
・取得額以上の減価償却を認める「ハイパー償却税制」を導入

③中小企業支援の強化
・正社員を雇用した場合、事業主の社会保険料負担を半減
・賃金を上げた場合、法人税減税や賃金補てん制度で支援
・下請け保護制度や事業承継制度など、中小企業支援策を強化

④「日本型ベーシック・インカム(仮称)」創設
・「給付付き税額控除」を導入
・マイナンバーと銀行口座をひも付けて「プッシュ型支援」を実現

⑤最低賃金の引き上げ
・「時給1,000以上」を実現

 「大規模、長期、計画的」な産業政策とありますが、抽象的な表現です。「ハイパー償却税制」はどれほどの投資を生むのかは未知数です。「時給1,000以上」や「給付付き税額控除」は、経済政策・成長戦略と直接に関わるものではなく、どちらかと言えば格差是正に関係する政策ですね。

 全体として「成長戦略」の詳細設計としては弱いと感じます。「積極財政への転換」が相当なレバレッジを効かせて幅を取っているのに対し、財源が投入される中身は具体性に欠け、薄味です。「積極財政」は国内消費の活性化には寄与しますが、新たな価値を創出するかは不確定です。

 「成長戦略」を真の意味で組み立てるのであれば、日本の産業製品や情報資産を、より高価値にしていく統合的な取り組みが必要だと考えます。例えば自動車産業への「水素自動車への全面的な支援、インフラ整備」、自然エネルギー産業への「太陽光パネル・蓄電池の全家庭普及のための支援」など、国家インフラに関わる大改革・大規模投資のビジョンを示して、そのロードマップを描くべきです。

 また、スタートアップ向けには、都市情報や医療情報のオープン化などが進んでいないため、それらを推進することが重要です。まだ国内で活用がされていないビッグデータを活用できるようにして、起業機会を増やせるような政策を練るべきと考えます。


2-3 「人づくりこそ国づくり」

 教育・科学技術方面の政策です。

①教育無償化の実現
・3歳からの義務教育化
・高校教育までの無償化
・塾代助成/給付型奨学金の設置

②児童手当の拡充
・18歳まで月額15,000円の支給

③雇用セーフティネット強化と職業教育の充実
・求職者への生活支援の強化

④教育国債の創設
・「文教・科学技術」に10年で50兆円の予算を付与

⑤その他
・男女格差の解消、選択的夫婦別姓の導入

 注目すべき政策は「児童手当の拡充」です。1人あたり324万円の給付になり、現行から100万以上の増です。年間予算3.2兆円です。

 非常に優れている政策で、与野党を超えて実現していくべきです。というのも、子どもの教育費用は中学生以降に本格化していくのが一般的で、家計を圧迫します。住宅購入シミュレーションをすると、子どもを生むとほとんどのケースで住宅予算を300~500万程度抑える必要があると判定されます。この事実は、子ども生むことが社会的なディスインセンティブになっていることを物語っています。児童手当は、最低限このディスインセンティブをカバーする役目を負わなければならないです。世代間格差の是正の意味でも、非常に重要な政策になってきています。

 民主党政権時代に児童手当を月額26,000円にしようとして失敗した過去があるためか、給付額は月額15,000円と、かなり「穏当」に設定されているように感じます。個人的にはせっかく「教育国債」を発行するのであればもっと攻めても良いと感じますが、国民民主党の慎重な姿勢が伺えます。

 他にも「文教・科学技術」への投資や選択的夫婦別姓の導入など、支持できる政策が並んでいると言えます。


2-4 国民と国土を危機から守る

 安全保障・インフラ方面の政策です。

①食料安全保障
・食料自給率向上を目指す
・戸別所得補償の再構築
・特定の条件を満たすと「環境加算」を付加

②防災インフラの計画的整備
・社会資本再生法を整備し、老朽インフラの計画的更新を進める

③地方権限強化
・地方自治体に権限と財源移譲を推進
・一括交付金を復活

④主権を守る態勢の強化
・自立的な安全保障体制を目指す
・日米同盟を基軸に、日米地位協定を見直し、沖縄基地問題の解決を目指す
・海上保安庁の業務に領土保全を追加する法律改正
・自衛隊の活動に「情報収集」「警戒監視活動」を追加する法律改正

⑤経済安全保障・エネルギー安全保障
・軍事転用可能な技術の流出防止
・外国資本による技術保有企業の買収を規制

⑥人権外交の推進
・普遍的価値を共有する国家と連携、人権外交を重視

 安全保障に関してはかなり厳しく、現実的な方向性を打ち出しています。や維新の選挙政策と比べても内容に遜色はなさそうです。ただ、辺野古移転を一時保留するようなことが書いてあるのは承服できません。もしそうするのであれば、自衛隊だけで東アジアの平和を防衛する覚悟を謳うべきです。「人権外交」を推進している点は評価できます。

 個人的には、エネルギー安全保障には「シーレーンの安定化」、人権外交には「マグニツキー法」についての書き込みが欲しいと感じますが、全体的には妥当な政策が並んでいると言えます。


2-5 正直な政治をつらぬく

 最後は、諸政策に関する政策です。

①公文書改ざん厳罰化
・公文書改ざんの厳罰化
・公文書管理にブロックチェーン技術を使い、改ざん防止を強化
・情報公開の徹底

②選挙制度改革
・政治資金の透明化
・比例復活の制度見直し
・参議院の合区の解消
・衆参両院の役割と選挙制度の見直し

③被選挙権年齢の引き下げ・女性の政治参加推進
・衆院18歳、参院25歳への引き下げ
・オンライン投票の実現
・女性候補者比率35%の実現
・議員へのメンター制度

④年金制度改革と経済財政推計の独立機関の設置
・基礎年金制度の世代間格差の解消
・年金/財政のチェック機関を設置

 ここは妥当な内容がほとんどですが、「衆院18歳、参院25歳」という設定には不可解さを覚えます。参院25歳というのはどのような根拠なのでしょうか。維新の公約では「衆参18歳」に揃えられていますが、参院を25歳にする必然性はあるのでしょうか。

 また、「年金/財政のチェック機関」というのも意味があるのか分かりません。権限がないような機関に財政をチェックさせて、機能するイメージがわきません。これは必要ないように思います。


まとめ

 全体的に、国民民主党の政策は「丸く」「現実的」な印象です。ただし、財源に関しては過去に例のないことをしようとしており、「リスク」があります。そこをどう捉えるかで、この政党の評価は変わってくるでしょう。

 今回は国民民主党を取り上げましたが、この政党の政策は、野党でありながらも穏当な内容に収まっている印象があります。維新や立憲民主党の政策には、わたしはかなり問題だと感じる強烈なものがあります。

 政策を知ることで、どの政党に比例票を投じるのか、その指針にできればと思います。





詩を書くひと。押韻の研究とかをしてる。(@sagishi0) https://yasumi-sha.booth.pm/