規律ある積極財政への転換

 こんばんは。Sagishiです。

 今回も、経済などについてだらだら個人的な考えをまとめようと思います。


1 マクロ経済政策の失敗

 日本はこの30年ほどほとんど経済成長ができていません。その結果として給料が上がらず、しかも少子高齢化社会に伴って社会保障費の増大が著しくなり、多くのひとの可処分所得が減り、内需まで沈降傾向にあるという、大きな問題に直面しています。

 この日本経済の低成長の原因は、プラザ合意を端緒にしたバブル経済とその崩壊時に、マクロ経済政策(金融政策および財政政策)で失敗したところに負うところが大きいです。

 バブル崩壊により銀行は大量の不良債権処理に追われることになったのですが、この時の政府および日本銀行は適切なマクロ経済政策を行えませんでした。

 銀行への大量資本の注入をしておらず(当時は禁じ手扱いでしたが)、民間への消費喚起策も取っていません。これにより不況が長期化し、デフレ経済に投入することになりました。

 アメリカではリーマン・ショックの時に、銀行の不良債権処理に大量の国家資本を注入(財政出動)しています。金利をゼロにし、減税策を行い、企業への補助金注入もしました。その結果、早期に経済を回復させることに成功しています。欧州もこれに追随しています。

 対して、リーマン・ショックにおいても日本はこれまた適切な対応ができず、リーマン・ショックによる経済影響は、アメリカよりも日本のほうが打撃が大きいといわれるほどです。

 コロナ対応においても、アメリカや欧州は同様の大規模財政出動を行ったことで、経済は高成長を実現しています。ただ、複合的要因もありインフレが異次元の規模になり、金利の引き上げを余儀なくされています。

 日本は欧米に追随せず、財政出動の規模がそこそこのレベルだったため、高インフレにならずにマイルドに済んでいるのは良かったともいえますが、しかし経済成長は欧米と比較すると大きな差が開いています。

 日本の財政出動の小ささは、ある種のモンロー主義的な「経済への不干渉」姿勢を象徴しています。アベノミクスでかなり変わりましたが、いまだに大規模な財政出動をしようとすることには抵抗を感じるひとがいます。これもすべては日本の財政が恒常的に赤字であり、より多くの赤字国債を発行することに抑制的な考えがあるからでしょう。

 しかし重要なのは、適切なマクロ経済政策を実行して、経済を成長させることです。経済成長しないと給料も上がらないですし、当然税収も上がりません。

 抑制的な財政政策を「緊縮財政」と言いますが、日本の低成長の原因になっているのが、この「緊縮財政」ではないかと、近年は懐疑的な見方が強まっていますし、わたしも同様の立場を取っています。

 つまり、もっと経済に政府や日銀はコミット(関与)すべきであり、必要な領域には積極的に財政を出していくべきだ、というのがわたしの考えです。マクロ経済政策への理解を、我々はもっと高めていく必要があります。


2 緊縮財政の修正

 しかしなぜ日本は「緊縮財政」なのでしょうか。バブル崩壊後の不良債権処理による影響が大きいですが、『社会保障費の増大』も大きな理由です。

 ご存知の通り『社会保障費』は指数関数的な増大をしており、日本の財政は必然的に「緊縮財政」を取らざるを得ません。

 しかし「緊縮財政」の問題は、社会保障費以外に全く予算を配分しなくなったということです。必要な領域に財政を投入しなくなり、特に問題の大きさが顕著なのが日本のデジタル政策が非常に遅れたことです。これは本当に財政的な失政だと思います。

 大学の予算を削るなど、今日まで教育・科学技術予算を拡充できず、成長戦略のための投資も中途半端な規模ばかりで、次なる経済成長のための基盤を「緊縮財政」はボロボロにしたといえます。

 あまつさえ社会保障費の増大への対応に、これまで経済のことを考えないままに消費税を増税したり、可処分所得を減らすことばかりをしてきました。その結果、日本の内需は全く上を向いていません。

 これまでの予算を抑制して増税するばかりの「緊縮財政」に決別し、経済成長を優先し、かつ必要な領域には確実に財政を投入すべきというのがわたしの考えです。


3 規律ある積極財政

 とはいえ規律を喪失した積極財政は、イギリスのトラス首相の退陣からも分かるように経済にかえって混乱を与えます。必要なのは「規律ある積極財政」です。

 現在の日本は、防衛予算を現在の5兆円規模から8~10兆円規模への拡大を余儀なくされており、また教育予算(文教および科学振興予算)も伸ばしていかなければならない状況です。

 しかし、増税をすることは経済への悪影響も大きく、「所得税」を多少あげる余地はあるとわたしは考えていますが、抜本的には「歳出」改革をするべきと考えます。

 現在の日本の歳出は赤字です。しかも国債を国債で返すような愚かな状況であり、これを適切にコントロールする必要があります。


3-1 社会保障費の抑制

 痛みを伴いますが、持続可能とは言いがたい状況になっている日本の「社会保障費」を改善する必要があります。

 令和3年度の予算ですが、特例国債やその償還費や利払、またコロナ特例予算が含まれていると、実際日本の歳出における「社会保障費」がどれほどの規模にあるのか分かりにくいので、これを除外してみました。すると下記のような歳入・歳出になっています。

 実に「社会保障費」は歳出の46%を占めています。単純な比較は難しいですが、これはイギリスの社会保障費の割合規模に匹敵します。(参考URL

 また、コロナ予算を除外しているグラフですでに8兆円の赤字です。ここからさらに日本は防衛予算を5兆円程度は増額することを計画しているので、このままでは日本の財政は恒常的に赤字であり、国債を常に必要とする状況といえます。

 もちろん「建設国債」のように将来に渡って国家の利益になるようなものや、コロナなどの特別事態、また教育や科学技術などのために国債を発行することは基本的には問題ではないとわたしは考えますが、現在の日本は事実上「社会保障費」に国債を発行している状況であり、これが問題です。

 社会保障費の内訳をみても分かりますが、保険料で補えないところに52兆円も税金を投入しています。これは過剰すぎます。ただでさえ、保険料で39兆円分も国民の可処分所得を奪っているのに、さらに公費で52兆も突っ込んでいるのは異常を通り越していると考えます。

 そもそも日本の社会保障制度は持続可能ではありません。現在でさえ現役世代の可処分所得を圧迫しているのに、この構造は100年経っても解決されることはなく、むしろ悪化していきます。

 現役世代が高齢層を支える負担は増すばかりで、世代間格差の主要因になっており、「静かなる幼児虐待」「財政的幼児虐待」と言っても過言ではない状況です。

 今後将来100年にわたって日本は社会保障費に多額の税金を突っ込むのでしょうか? この状況のままというのはあり得ません。であれば歳出改革の最大の領域はやはり「社会保障費」です。


3-2 医療費の抑制

 穏当なところからやることとしては「医療費」の抑制です。40兆円の規模はさすがに過剰すぎます。

 色々なやり方はあるでしょうが、70歳以上の高齢者の医療負担を2割で統一させる必要があると感じます。それだけでは単なる負担増でしかないので、同時になるべく医療機関に掛からなくてもよくなるようにデータを活用した健康マネジメントを高齢層にアプローチしていく、推奨していく取り組みをするべきでしょう。

 国民の健康にもっと国家がコミットしないといけない時代が来たと思います。あらかじめ病気にならないように、医療費を悪戯に使わないように、国家が個人の健康をマネジメントしていく取り組みをすべきです。

 また抜本的に、現役世代の医療費負担を現在の30%から32%に上げるなど段階的に上げていく必要もあるのではないか、とわたしは思っています。現在は医療費の抑制のために、薬価をあまりにも下げているのも問題です。適切な薬価に修正していくためにも、医療費の改革は必要だと考えます。

 どのような政策やプロセスが現実的かどうか、現在のわたしにはまだ知識が欠けていますが、医療費抑制のために必要な政策を検討すべきです。


3-3 年金の抑制

 ここも知識に欠けている領域ではありますが、年金の支払い上限額を設定することはできないでしょうか。

 例えば、年収1000万あるようなひとは、年金を月15万以上もらいます。しかし、はっきり言ってこれは過剰な配分です。年金とはそもそも長生きした場合の生活保障の保険としての役割を持つものであり、「最低生活保障」という観点からは月15万は過剰といえます。

 例えば、月10万以上の給付があるひとには、5%減額あたりから年金給付を抑制をしていくなど、穏当な減額措置がやれないかを検討すべきでしょう。

 なかなかに厳しいテーマですが、はっきり言ってわたしが70代になった時に、このままではもっと現役世代に負担を要求する可能性があるわけで、わたしはそれを絶対に良しとしません。

 「最低生活保障」という設定はなかなかに難しいですが、現実的で持続可能な政策に寄せていく検討をいますべきです。


3-4 永久国債の設定

 ここもまだ知識不足なところもありますが、国債の利払が8兆円もある日本の歳出ははっきり言って問題です。

 これを抑制するために、「永久国債」を設けるというのが考えられます。これは国民民主党の政策主張ですが、「日銀保有国債の一部永久国債化」をすることで、支払を抑制することができます。

 要するに政府から日銀に直接国債を買ってもらい(現在は財政法で禁じられている)、現在のような国債で国債を返す不毛な構造を緩和する、という理論です。

 このような「永久国債」の手法は、政府と中央銀行を一体のものとして考える「統合政府論」に立脚しており、昔はあり得ない考えでしたが、徐々に世界的にメジャーな考えになってきています。

 「永久国債」じたいは世界的にはまだ例がない政策ですが、「統合政府論」から考えれば理論的に整合であり可能です。

 まだまだ議論の必要はあるでしょうが、「永久国債」を徐々に増やしていって10年から15年で100兆円ほどの規模にするのならそこまで大きなリスクにもならないのではないか、と予想しています。


4 給料を上げる経済を実現する

 デフレ経済で物価も給料も上がらず、ただただ社会保障費に圧迫されるまま可処分所得だけ減り続ける、その結果として内需も沈降してさらに経済が悪化する。すると税収も減る。こうなっては絶対にいけません。

 必要なのは、可処分所得を増やして、消費を喚起し、投資を活性化させ、経済を成長させていく試みです。そのためにも、教育などの分野をはじめに投資を強化し、弾力的に財政を動かせるようにすべきです。

 現在の日本は社会保障費に圧迫されて、余裕のある財政出動をすることが難しい環境にあります。ここを改善して「規律ある積極財政」を取ることで、経済が活性化する環境を整備すべき、というのがわたしの考えです。

詩を書くひと。押韻の研究とかをしてる。(@sagishi0) https://yasumi-sha.booth.pm/