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マロン内藤のルーザー伝説(その13 納得の理由)

諸般の事情により当初の目的であった全面的リフレッシュから、車両運行における安全の確保に方針の大転換がはかられた1976年製ポルシェ930ターボ(通称ター坊)の厳選リフレッシュ作業であったが、結果的にター坊は控えめに見積もっても通算半年間以上私の元を離れ、ポルシェセンターのガレージで時を過ごしたのではないだろうか。おもわずサービス部門の若きリーダーSさんに焼き餅を焼くマロンであった。

当初の想定を遙かに超えた時間を要する状況に、「同センターで新車を購入した人生の成功者達を厚遇しているのではないか?場違いの一見さん扱いである私の可愛いター坊は後回しにされているに違いない」そんなダークサイドからの囁きに疑心暗鬼になりかけていたマロンは、思い切ってSさんにその理由を聞いてみた。

Sさんからの答えは実に明快かつ納得のいくものであった。「うちのメカニックはみんな若くてター坊のような古いポルシェを触ったことのない奴らばかりなんっすよ。貴重な歴史教材としていつもありがたく勉強させてもらってます!」と爽やかにおっしゃるのである。なるほどどうりで時間がかかるわけだと腹落ちした。

考えてみれば、ポルシェジャパンが立ち上げた新車販売ディーラーであるポルシェセンターが扱うのは原則新車であり、そもそもがビンテージポルシェ専門店ではないのである。正規ディーラーなら間違いない、そんな自分の安直な判断が間違っていたのではないか?ますます落ち込む私にSさんからかけられた短い一言を今も忘れることは出来ない。「マロンさん、これもポルシェライフですよ」それは高位の聖職者が迷える衆生を済度せんと発する解脱の境地を示す言葉であった。

私は自らの心得違いを深く懺悔した。「ポールだってLET IT BEと歌っているではないか・・こうなったらどこまでもSさんについて行こう」もう後戻りできないマロンであった。

続く・・

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