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秘密の旬、沈丁花の聲、整合性を欠いた文字列

毒舌のエッセイストとは食事にいかない
八つ裂きにされた山崎を見たから

水分が足りない日の速度ははやい
(なぜか)
焼酎は血栓を溶かすそうです
(なのでもういっぱいだけいいですか?)

壊れたイヤフォンの保証書
探さなければと言って 既に三日がすぎた
ボタンを押すのを忘れたエレベーターのように
扉が開かない永遠

夜は寒い夜はまだ寒い
いやもうあたたかい いやまださむい
春の二の足

季節と流行りは巡るからと
ミニマリストからは縁遠いわたしなのに
ローファーだけは捨ててしまったんだな
これが

進行方向と月の加減を見て
下弦の月の信仰の咆哮を聞く
川にかかる橋を渡っていると
列車ごと飛んでいるみたいねと
言われた気がして振り向いたけれど

最終電車の中には 居眠りする人と
うっくし うっくし うっくしのあと
くしゃみしてない素振りで画面を触る
眼鏡のひとが沈黙してるだけ

夜中に気兼ねなく行ける友人の家が
あったらいいのに
川沿いだったら なおさら良くて
できれば 男よりも美人だとより良い
と山崎は言っていた

夜中まで開いているスーパーにいくんだ
シャワーと寝巻きを貸してもらって
何を食べたいか相談して
結果的にぜんぜん違うものを食べるのさ

レコード会社のディレクターの意見みたいに
布団の中で二転三転して
眠れないからって近所のビデオ屋に出向いて
みたこともきいたこともない
仏映画を借りて 酔っ払って見るんだ
と目を輝かせて言った

会ったこともない彼女が
毒舌なエッセイストじゃないことを願うよ
なんて言って 気の早い山崎

「そんなのって趣味の悪い政党に傾倒してる女と
間違って性交してしまうみたいに最悪じゃん
趣味のいい政党があるとしての話な
まあこの時代にそんなものを探すより
夜空を見上げてUFOを収納できる
流暢なユーモアを探す方が
見つかる確率は高いけどさ」

結局山崎は八つ裂きにされてしまった
割り勘と言えずに
千円だけちょうだいと言ってしまったばかりに

わたしはといえば
明日こそイヤフォンの保証書を見つけたい

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