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かぞくのかたち ② 〜 穴があったら入りたい 〜

清重そろばん塾という、姉貴をはじめ兄弟3人が通った塾がある。

確か週4回、月火木金曜の放課後に立ち寄って、そろばんを習っていた。

ここは主に女の先生が数多くの子供たちを1人で見ている。この塾では各自で問題集を解き、終わった者同士が、

「答え合わせしまーす」

と、互いに○×をつけて、答え合わせをしていた。
先生は、解らない問題や悩んでいる子には、優しく教えてくれたが、ズルをする子供には厳しかった。


井本という、やんちゃな同級生がいる。
当時は周りの友達が、ドラゴンクエストのゲームに夢中で、

「誰が1番最初にクリアするか」

と競いあっていた。家にファミコンのない僕は、学校が終わると、ソロバンではなく、井本の家に直行した。

そして2人で、せっせとドラクエのレベル上げに没頭していた。しかしソロバンを休む訳にはいかず、突発的に編み出した技がある。

そもそも、清重ソロバン塾は性善説で、互いの答え合わせを信用していた。僕と井本は、答えの桁数だけ合わせて、適当な数字をサッと書き、

「終わったので答え合わせしまーす」

と、しれっとした顔で、お互いの解答用紙に○をつけた。

「正解したので帰りまーす」

と通常は、1時間ほどかかる所をたったの5分で終わらせていた。

そして、ダッシュでまた井本の家に戻り、ドラクエのゲームをする。これを繰り返した。
二週間くらい、この方法を続けていた。そして、ある日、

「正解したので帰りまーす」

と2人が言うと、先生が

「ちょっと、拓ちゃんとのぶ君(井本)の解答を持って来なさい」

穴があったら入りたい。この時ほど、そう思ったことはない。みんなの前でめちゃくちゃ怒られた。

「何これ!!全然違うじゃない」 

と、当然だが、僕らの解答は一問も正解では無かった。

そして、怒るとヒステリックな先生は、白目をむいて、甲高い声で僕らを叱ってくれた。

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