スナフキンのサンダル ② 〜 微笑みのタイ王国 〜
時を同じくして、会社を辞めた2人は、暫くして、パスポートを取りに出かけた。
「西畑君どうしてます?」
と聞けば、あの日以来、彼との連絡が取れないらしい。しかも会社を無断で休んでおり、会社の人間が西畑君を探し回っているという。
もしかして事件に巻き込まれたのでは、と心配になり、僕もすぐに電話をしたが、
「電源が入っていないか、故障しているためつながりません」
とアナウンスが流れるだけであった。ほんの数日前、
「一緒に海外へ行こう」
と目を輝かせていた彼はどこに行ってしまったのか。
それから先輩と向かった先は川崎駅前にある「HIS」の格安航空券を売っているお店で、僕らは、
「来週から10日間、どこでもいいからお得なチケットを下さい」
と東南アジアのタイ往復チケットを3万円で手に入れた。して、2001年冬、ついに日本から飛びたつ日がやってきた。
先輩の佐藤さんはスナフキンという、ムーミンのキャラクターが大好きらしい。
そのスナフキンになりたい願望が強すぎて、ドンゴロスの形をした大きな袋を肩に担いで現れた。
その袋にはポケットがなく、パスポートや財布が着替えや洗面道具と一緒に入っている。買い物の時など、袋の中身を何度も探しまわる、不便極まりないものであった。
僕は、初めての海外旅行で、何を準備していいのか分からず、川崎市の図書館で「地球の歩き方」という黄色い本を借りた。また、先輩からの助言で
「とにかく新しい服やカバンは、貧しい国では狙われるから、やめた方がいい」
と言われたが、この黄色の本にはそんなことは書いていなかった。しかし、僕もボロボロのリュックに、古いジャケットを着て旅に出ることにした。
続
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