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スナフキンのサンダルを贈る ④ 〜 アユタヤ エスケープ 〜

初めての海外でパスポートを旅行代理店に預け手元に無い状況で、酒を飲み、体調は絶不調どころか意識が朦朧としていた。

どのくらい寝ていたであろうか、ズボンの上から誰かに触られている感覚で目が覚めた。横にあのバリ人が背を向けて寝ていた。

「何だ?気のせいか?」

僕はまだ頭がボーッとしていて、直ぐにまた眠りについた。

今度はジーパンのチャックを開けられ、明らかに俺の息子を触られている感覚で目が覚める。

僕は恐る恐るゆっくりと目を開いた。なんとあのバリの男が俺の息子を触っており、狙われていたのだ。

僕は飛び起きてトイレに駆け込んだ。

「やばい、犯される!!」

さっきまで二日酔いのボーッとした頭は、いっきに酔いが覚めた。僕は急いでトイレの鍵を閉めた。

そして篭ること1時間。夜が明けるのを待てずに部屋を飛び出した。

人生初の海外2日目の夜はバンコクの街を彷徨っていた。

タクシーやトゥクトゥクなど乗る気になれなかった。人が信用出来ず、とにかく歩いて、迷いながら、バンコク中央駅までたどり着いた。

夜が明けたばかりの、人がまばらな駅のベンチに座り「地球の歩き方」を開く。アユタヤという町が、ここから2時間くらいで行けることが分かった。

その本には列車の値段が200円と書いてあったが、実際は80円程でキップを買えた。そうして列車に揺られタイの古都アユタヤに着いた。

しかし、ここで心配だったのが、ビザの申請の為に僕はパスポートを持っていないことであった。

駅前のホテルやゲストハウスを尋ねて、

「ノー パスポート、ステイOK?」

と小学生以下の英語で話しかける。

相手に伝わっているのか、すごく怪しかったが、何軒か尋ねていくと運良く泊めてくれるホテルが見つかった。

アユタヤの町は、とかく田舎でゆったりとした雰囲気が、僕の心を落ちつかせてくれた。

また、自転車を借りて名所を見て回ったりした。

このアユタヤには寺院や仏像など遺跡が沢山あるらしいが、当時の僕は残念ながら、それらに興味がなかった。
しかし、水上マーケットや、リヤカーで物を売っている光景を観ているのが楽しかった。

アユタヤのホテルで2泊して3日目の朝、僕は意を決してバンコクに戻ることにした。


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