見出し画像

家族のかたちⅥ[齢と共に丸くなる]

小学生にとって4年の歳が違えば体力の差は歴然とある。それでも弟は僕の遊びについてきては、よく泣かされていたという。

ある日、そろばん塾からの帰りに、弟が友達と畑で遊んでいた。そこは数日前、僕らが遊んで、

「畑を子供らに荒らされた」

と学校にクレームが入り、先生から注意を受けていた場所であった。

僕はそろばんのカバンを振りかぶり、迷うことなく弟の頭をバシンと叩いて、

「ここで遊ぶな」

とそれだけを言い残し、友達の家へ遊びに行った。

しばらくして、家に帰ると弟の頭が、なんと包帯でぐるぐる巻になっており、さらに親父の機嫌が悪かった。

「な、なんかあったん?」

とこっそりオカンに聞く。すると僕がカバンで叩いた後、弟は頭から血を流し、救急車で運ばれたらしい。

僕は慌ててカバンの中を見た。ソロバンと教科書の他に、細長い文鎮が入っていた、、、恐らくその文鎮の角が、頭に当たったのであろう。

そして弟は、ケガした部分をバリカンで刈られ、頭を何針か縫ったという。親父から

「人を叩くな、言って聞かせろ」

と僕はゲンコツをくらって怒られた。

今思えば、親が子供に体罰でしつけをしており、その子供が自分の弟に、暴力をもって教育するというのは、ごく自然な形だと思う。

膨大なエネルギーと時間を持て余し、常に一緒に居れば、喧嘩は絶えないだろう。

しかし僕が中学生になると、兄弟喧嘩はぴたりと無くなった。

陸上競技と駅伝を本格的にはじめて、自分の持つエネルギーがそれらに注がれ、喧嘩などする暇がなくなったのだ。

またその頃になると、幾分か親父の癇癪の頻度も少なくなった。それは年齢のせいであろうが、

「加齢と共に性格は丸くなる」

と世間で言われるように、親父は、オカンや子供たちへの態度も少しずつだが、穏やかになっていった様に思う。


この記事が参加している募集

ふるさとを語ろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?