かぞくのかたち ⑦ 〜 ファミコンとアメリカ留学 〜

我が家で唯一、ファミコンを買って貰った、弟の話を書こうと思う。弟は何故か高校に入ってから、ファミコンを手に入れた。

正確に言うなら、弟の貯めたお金で買ったので、ファミコンを買っても良いという、許可を得た。

僕が小学生の頃、誕生日やクリスマス、正月やお盆など何度も親父に

「ファミコン買っていい?」

と頼んだが

「そんな物は絶対に駄目だ」

と言われ続けた。姉貴もゲームが欲しいと何度も頼んだが親父に断られていた。

「我が家にそんな物は必要ない!」

と親父は断固として許さなかった。
そんな子供たちが、お小遣いを必死に貯めて、TVゲームを買いたいとお願いしても、頑固な親父は、それを受けつけなかった。

僕が高校を卒業し、川崎市で働き始めて、久々に帰省すると、弟がテレビに向かってゲームをしていた。

「ファミコン、買ったんや」

と弟の背中に向かって声をかけると、後ろを振り返る事なく

「親父と一緒に買ってきた」

と彼はテレビの画面から、目を逸らすことなく答えた。僕は心の中で、

「もう高校生なんやから必要ないやろ」

と思ったが、長年の蓄積されたファミコン熱に、無我夢中の姿態を見ると掛ける言葉はなかった。

その頃、姉貴は徳島県のN市にあるリゾートホテルに就職してその社員寮に住んでいた。

もともと町営住宅に5人で暮らしていたのだが、新しい家に引っ越してすぐ、彼女は高校を卒業することになる。

「早く一人暮らしがしたい」

と、卒業と同時に就職してホテルの独身寮に入った。
僕の記憶が定かではないが、弟が高校生の頃、彼女は1年間、沖縄の系列ホテルで働いていたようだ。

それからまた、徳島に戻ってからの姉貴の行動力は、なかなか凄いものがあり、身近にいたオカンが一番よく知っているのではと思う。

「外国に住みたい」

とアメリカのユタ州にある、英語学校に留学する段取りを1人で考え、それに向けて行動に移していく。
今でこそスマホがあれば、何でも調べる事は簡単だが、彼女のバイタリティを想像だが、敬意を込めて書こうと思う。

まず、働いているリゾートホテルを、親父の承諾を得て辞めなければならない。
そこに登場するのが、沖縄で知り合ったハーフの同僚である。

わざわざ沖縄からその同僚を実家に連れてきて、親父に

「ホテルでは馬車馬のように使われてる」

と勤務状況がどれだけブラックであるか、酒を交えて説いた。

そして彼女が辞めるのに、引き留めにくるマネージャーに対して、親父を味方につけて、強引に退職届を出すという荒技をやってのけた。

安かったであろうホテルの給料を、少しずつでも貯蓄して、留学の費用に当てた。

姉貴の周りにアメリカへ移住した人間などいたのか分からないが、とにかく一人でビザを取り、入学と住む場所を決めて彼女は旅立った。

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