見出し画像

論文斜め読み:コホートベースラーニング(01)

今ではオンライン学習も普通に受け入れられていますが、インターネットの発達とともに、MOOCs(Massive Open Online Courses)が流行ったり、その後、SPOC(Small Private Online Courses)といくつかの流れがあって、コロナ禍で認知されたじめたのが、コホートベースラーニング(Cohort Based Learning)です。
比較的最新ネタなので良い論文がなく、こちらのサイをとざっとさ眺めてみようと思います。

Close the Gap Foundationのページです。Close the Gap Foundationは低所得者に対する学習支援の団体のようです。

コーホート・ベース学習とは

コーホート・ベースド・ラーニングとは、コースやプログラム、プロジェクトの期間中、学生や個人が一緒に学習を進めていく共同学習アプローチです。インストラクターまたはメンターが学生グループを指導し、与えられたマイルストーンを完了させます。

受講生は、対面式であれオンラインであれ、一緒に学び、社会的支援を提供し、協力することによって、グループ内のコミュニティを育む。コースのデザインによっては、グループ全体の包括的な目標が設定されることもあれば、講師によって学生一人ひとりの目標が設定されることもあります。

特徴としては(比較的短期)の期間があり、その中での共同学習であるということと、インストラクターやメンターがいて、学習者がマイルストーン(ある程度小さな目標)を完了させていくということのようです。また共同学習によるコミュニティの育成があることも特徴だと思います。
MoocやSpocなどはオンライン動画などをで学習し、グループでの反転授業などが特徴ですが、コホートベース学習はみんなと学んでいるという面を前面に押し出しているというのが特徴かと思います。

例)K-12(義務教育)

クラスの人数に関係なく、K-12の指導者は、特定のプロジェクトのためにクラスの人数を少人数のグループに分けることで、教室でコホート型学習を実施することができます。このやり方は、少人数のクラスメートの中で貢献したり、発言力を高めたり、リーダーとして行動したりすることに抵抗を感じない生徒にとって有利です。1日、1週間、または1学期にわたる課題であっても、クラスメートは同時にプロジェクトに参加し、包括的、能動的、体験的な学習を通して、同じグループ内で共に進歩します。

この辺は文科省の言っている「個別最適な学び」と「協働的な学び」の充実に近いものを感じます。

まず学習目標を達成するためのプロジェクトをいくつか設定し、ここのレベルに応じて少人数のグループを作成し、その中での協同的な学びを実践していくということだと思います。

例)College(大学)

大学の学部や大学院のコースでは通常、オンラインコースと対面式コースが混在している場合があり、学生間のつながりを深めるために、コホートベースの学習形態を導入しています。特定のコースに多くの学生が在籍することもありますが、コホートを通じて大学での経験を充実させることで、学生同士の関係が長期にわたって続くことになります。少人数のグループで密接に取り組むことで、学生は学習コミュニティを形成し、互いにフィードバックを提供し合い、コース全体を通してクラスメートが節目を迎えて成長するのを目の当たりにすることができる。

よくよく考えれば、オンライン・オフライン問わず、大学での学びはそのままコホートベースラーニング、つまり集団をベースにした学びではなかろうかと思います。一般教養的な授業から始まり、ゼミやサークルなどさまざまなコホートが大学内には存在していて、その多様性の中でコミュティを形成し人は成長していくのだと思います。その中で、個々人は自発的に、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を行っていくのではないでしょうか。

例)Workplace(働く場)

専門機関は、リーダーシップ・チームの育成、チームの絆の強化、あるいは年に一度のセールス・サミットなどの手段として、コホート・ベース学習を導入することができる。専門家やコースのファシリテーターが、グループ学習用に設計されたコンテンツを作成することで、学習したトピックの深さと定着度を高めることができる。セールス・サミットにおけるコホート・ベース学習の成果として、チームの集合的な目的とビジネスの成功への影響力についての理解が深まり、グループ内の仲間意識が高まることが考えられる。

職場での勉強会もコホートベース学習と言えると思いますが、IT系の場合は一般にさまざまな勉強会が開催されています。これらもゆるやかなコホートやコミュニティを形成していることからコホートベース学習といってよいかと思います。

コホート・ベース学習が重要な理由

長続きする関係を築く

コホートでは、仲間同士のつながりが強化され、歓迎される空間でハイとローを分かち合うことができます。グループのメンバーは、自分たちの学習コミュニティが共に成長する場であることを知り、自信を深めます。

これは大事な指摘だと思います。コホート(集団)からグループやコミュニティが生まれそれが長く続く関係へ成長していく。すべての人とではないかもしれないけれど、一部の人との関係かもしれないけれど、それが続いていくことは大事なことなのだと思います。大学時代の友人や「竹馬の友」や「同じ釜の飯を食った仲」などの長続きしていく友人関係と同じものかもしれません。

ソフト・スキルの育成を重視

感謝の気持ちを伝えたり、サポートを表明したり、仲間に建設的なフィードバックをしたりするのは、少人数のグループの方が簡単な学生もいるでしょう。対面、Zoomでのブレーンストーミング、Discordチャンネルでのチャット、Googleスライドの相互編集など、複数の形式でグループメンバーから学ぶことで、コミュニケーションの適性が養われます。

これは説明文がちょっと表現がわかりにくいところですが、学習内容以上のスキルを重視していると言えるでしょう。例えば、コホート学習ではマイルストーンとしてある一定の成果物を求めますが、これを作るスキルはテクニカルスキルになります。例えばWebサイトを作ってみようという課題があったときに、Webサイトを作るテクニカルスキルは重視していなくて、テクニカルスキルよりも内容や構成を考えるソフトスキルを重視するということなのかもしれません。更に、課題を実行する際のメンバー間の関係(コラボレーションやコミュニケーション)、コミュニティの醸成を重視するということだと思います。そういった意味ではコホート学習ではテクニカルなスキルよりも、メタスキル(メタ認知)やコンセプチュアルスキルが重要なのかもしれません。

長期的な学習に役立つ

学び方は人それぞれですが、アクティブで協力的なグループ学習では、ライブのディスカッションの中で一緒にコンセプトを探求し、応用することができます。コホート・ベース・アプローチは、孤立した自己学習法に比べ、学習と情報の定着を促進します。

長期的な学習という見出しですが、これは昨今のリスキリングの話や学び続ける姿勢の話に通じるものがあると思います。コホート学習にてうまくコミュニティを醸成していくとアクティブで協力的な学習グループが出来上がります。その中での学習は自分や他の仲間の成長を感じることができ、MOOCsなどの孤独な学習に比べると高い学習効果を発揮するということだと思います。

コホートベースの学習統計

記憶保持率が41%向上

日後、学習したトピックの28%を覚えているのが普通だ。しかし、ラーノポリによれば、その情報を使い、それに関する質問に答え、他の人と議論すると、69%の確率で記憶することができるという。

コホート学習では学習者同士のコラボレーションやコミュニケーションが発生するために、コホート内での教え合いが発生し、その結果やそれらの体験により学習効率が上がるという話で、記憶保持率が通常の学習より高くなるということのようです。コホートベース学習もアクティブラーニングの一種ですから、ラーニングピラミッドのようなところに当てはめると納得できる結果です(ラーニングピラミッドは諸説あるようです)。

コホート学習では、ラーニングピラミッドにおけるアクティブラーニングの部分である次の3点を実施していきます。

  1. グループ討論

  2. 自ら体験する

  3. 他の人に教える

これらをまとめて体験できるのがコホート学習であると言えます。

コース修了率が87%向上

自習型コースの修了率は3%と低い。一方、Learnopolyの記事によると、コホートベースのコースでは、修了率が90%を超えることが多いという。

私が手伝っていたBBT大学のデジタルファーストキャンプでは終了率は95%前後でした。オンライン学習や通信教育といったカテゴリから見ると驚くべき終了率というところだと思いますが、コホート学習ではこの終了率は自然と発生するようです。
コホート学習を意識し、講座を設計実施することで終了率を高めることができると言えそうです。これはMoocsなどの講座と比べるとこの点は際立った違いであると言えます。

コホート型学習リソース

コホート型オンラインコースのプラットフォーム構築

J.ケリー・ホーイによるBuild Your Dream Networkのポッドキャスト・エピソードで、彼女はネットワーク・ギャップと、参加とコミュニティをより身近なものにすることで、より包括的なネットワーキングの未来をどのように計画できるかについて説明している。

見出しだけ見るとコホートベース学習のプラットフォームの話のように見えます。最近ではいくつかコホートベース学習に特化したプラットフォームが出現していて成功を収めているようです。国内でも開発している会社があります。

受講生に愛されるコーホート・ベース・コースの作り方

Thinkificは、コホート・ベース・コースを成功させるための要素を分解し、多くのツール、課題、学生・講師双方にとってのメリットについて説明している。

参照先を見ないと細かなところはわかりませんが、受講生に愛されるというところが大事だと思います。受講生が成長を実感できて、居心地のいいコミュニティを作ってともに成長していくことができるような講座が良いのだと思います。
極端な例でいうとオンラインサロンなどがこの例に近いのかもしれません。ただしオンラインサロンは閉鎖的で教祖ビジネスになりがちなので、学習や教育という観点からは注意が必要な気がしますが、一般的な私大や私塾というものもこのような流れで発展してきたのかもしれないと思うとなんとも評価が難しいところです。

大規模コホート・プログラムを通して学習者を惹きつける5つの方法

マリサ・プラウマンがハーバード・ビジネス・パブリッシングのブログに書いた6つのデザイン原則は、コーホートコースのコンテンツに学生が効果的に参加するための詳細な洞察である。

これは是非、次回出典元を当たってみたいと思います。

コホート型学習を導入するには

構造や枠組みを作る

コーホートを基盤としたプロジェクト、サミット、プログラムには構成が必要です。コースの内容を構成するために、プログラムの具体的な原則や柱を決め、それを土台としてコース全体のデザインを導きましょう

コホートベース学習のコースを作るには、いくつかのテクニカル要素や講座設計時の原則などがありますが、まず大事なことはこれがコホートベース学習だと認識することが重要かと思います。その上でプラットフォームの選定やコホートやコミュニティを形成するための原則を入れてく形になりそうです。

グループのニーズを特定する

学生が交流し、発見したことを発表し、互いにフィードバックし合うコミュニケーショ ン方法は、学生を成功へと導きます。学生がグループ学習コミュニティを形成し、コーホートの旅を通してつながりを感じられるよう、適切なシステムが整っていることを確認する。

見出しと文があっていないように思いますが、コホートは同じ目標に向かって進んでいくため、ニーズの把握は重要だと思います。その後、フィードバックするコミュニティや学習コミュニティの形成が有用なことは言うまでもありません。これらをサポートする形でシステムがサポートしていくような状況で、コホートの旅と表現できるようなつながりが生まれることが重要なのだと思います。

以上、Deeplなどを使い斜め読みしてみました。お読みいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?