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ダムレイ

母親はわたしのストーカー。
わたしを体内で生成してから外に追い出し、背が自分を超えてからもわたしをそばに置いている。
ブロッコリーで床を掃きながら、わたしがテレビを見ているテーブルの横を通り過ぎていく。
父親はわたしに言う、ぼくたちはずっとあなたのそばにいる。
あなたを好きになった人があなたの顔が崩れてあなたを嫌いになっても、あなたのに愛想を尽かしても、あなたの身体に飽きても、あなたが何かを殺しても、ぼくたちだけはずっとあなたのそばにいる。
父親は生まれつきイビキで寝返りを打つ病気にかかっている。
テレビにはわずか数行の超短編2つで何千枚もの大長編をはさんだ「首無しセイウチ」を発表した作家がインタヴューを受けていた。
この本で伝えたかった事は何ですかと聞かれ、作家は「首無しセイウチ」を開いて一行目から丁寧に読み始めた。翌朝、わたしが起きてリビングでテレビをつけた数分後に作家の朗読は終わった。
それから無数のワイヤーが引っ張る材木が森林を破壊しながら進んでいくアクション映画のCMが流れ、最後に「超人気のアイドルグループがコンサート当日に会場前の工事現場で変装して作業していたら」でお馴染みの名物プロデューサーが映画を絶賛していた。
「これは台風並みの傑作ですよ」

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