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アンナチュラる+

 『アメリカン・パイ』探訪のお預け中に、amazon  prime で見つけた『アンナチュラル』。久々に一気観しました。途中で寝むれなくなったのは『少女終末旅行』以来です。

 『アンナチュラル』は、2018年にTBSで放送された全10話のドラマ。架空の「不自然死究明研究所(Unnatural Death Investigation Laboratory: 通称UDIラボ)」を舞台として、石原さとみと井浦新が演じる法医解剖医と臨床検査技師の市川実日子、記録係バイトの窪田正孝、所長の松重豊らを核として彼らを取り囲む刑事や葬儀屋、マスコミにより繰り広げられる物語です。

 なんと言っても「チーム」がよく描けてる。それぞれの悩み(それも回が進むごとに回収されていきますが)を抱えながらも、解剖を通じて真の死因を追求する三澄ミコト(石原さとみ)の「仕事への姿勢」とそれに感化されていく「チーム」の共鳴がカッコいい。組織の都合や、遺族の感情、世間からの避難など、様々な障壁が立ちはだかるのだけど、「最大の敵は不条理な死である」という信念が、揺るぎないモノとして立ち上がってきます。

 銀行の組織抗争を描いた『半沢直樹』や、『踊る大捜査線』(なつかしぃ〜)での警察内の組織抗争って、まあそれはそれで面白かったんだけど、せっかくの社会問題への提議が薄まっちゃう。その点、『アンナチュラル』は、組織問題はサクッと補助金問題程度に背景におしやってこじらせず、がっつり社会問題と被害者の遺族に焦点を当てています。

 「不自然死への対応」の問題に始まって、「ネット殺人」や「過重労働」など、中でも第7話の「いじめ」での、真の死因を追求する姿勢がすごい。
最終話では、社会問題としての「マスコミ」も絡んできて、それらをかいくぐって希望に結びつけていく展開には唸らされます。犯人よりも遺族に焦点が当たっているのは、役柄、被害者のご遺体に向き合うからというのもありますが、その構造自体が「東日本大震災で残された人々」へのオマージュになっているんじゃないかな。

 犯罪や事故も災害と同じように被害者にとっては、変えようのない「過去」だけど、それを「不自然死」や「災害死」として放置することなく、原因を究明することにより残された人々の未来への希望に変えていく。そんな前向きなメッセージが全10話に渡って構築されています。

 でもまあ、なんと言っても、やはり、「チーム・ワーク」の描写ですね。続編あるかな。ネタが尽きると組織内抗争に持って行かれがちなんでちょっと心配ですが。まだまだ社会問題は山積みですよ。

2020年2月20日

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