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小説 開運三浪生活 #2 モノクロ時代

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プライド高く理系に憧れ続ける元・優等生にて現・劣等生のタサキフミオ(20)。東北南端の農村に生まれた彼は、いかにして優等生としてのプライドを育み、その後劣等生に落ちぶれていったの… もっと読む
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記事一覧

小説 開運三浪生活 28/88「滑り止め滑り込み」

半年後、文生は予定どおり熊本大を受験し、そして大方の予想どおり余裕で落ちた。 例年より難…

鈴木偏一
6日前
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小説 開運三浪生活 27/88「適性無視」

文生は三年生になった。高校生活後半からの巻き返しを期したまま、実態は相も変わらず劣等生の…

鈴木偏一
7日前

小説 開運三浪生活 26/88「破戒」

高校生になってもテレビを観ない生活を継続していた文生だが、二年に進級してしばらく経つと、…

鈴木偏一
8日前
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小説 開運三浪生活 25/88「遥かなり、大学スポーツ」

夏休みが明けると文化祭の準備が始まった。文生が通うH高は三年に一度しか文化祭が行われない…

鈴木偏一
9日前

小説 開運三浪生活 24/88「宅浪志望」

『竜馬がゆく』で歴史小説の面白さに目覚めた文生が、司馬遼太郎の次に手を着けたのが井上靖だ…

鈴木偏一
10日前
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小説 開運三浪生活 23/88「赤点集合!」

一学期もあと数日で終わる土曜日の午後、追試を受けることになった生徒とその保護者が会議室に…

鈴木偏一
11日前
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小説 開運三浪生活 22/88「LAST BANKARA」

成績こそ悪かった文生だったが、クラスの居心地はよかった。中学の時のように優等生扱いされることもなかったし、男子ばかりだったので異性の目を気にせず、ふざけあえた。教師も男子校出身者が多く、授業中に下ネタが飛び出すのはいつものことだった。 理数科で、文生には特に仲のいい友人が二人できた。 別の村の中学から来た木戸とは、中学時代に卓球の大会でよく顔を合わせていた。親しく会話を交わす仲ではなかったが、クラスメイトとして接してみると、下ネタも真面目な会話もそれなりに合わすことが

小説 開運三浪生活 21/88「燃え尽き小休止」

期待を裏切らずH高理数科に進学した文生に対し、村の人間たちは相変わらず好奇の目を向けてい…

鈴木偏一
13日前
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小説 開運三浪生活 20/88「高校デビュー」

結果として、文生は念願のH高理数科に受かった。合格発表で自分の受験番号を見つけた文生に、…

鈴木偏一
2週間前

小説 開運三浪生活 19/88「竜馬幻想」

その頃、文生の心を突き動かしたのが坂本龍馬の伝記だった。もともと小学生の頃から伝記物が好…

鈴木偏一
2週間前
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小説 開運三浪生活 18/88「理数科ブランド」

勉強では三年になってもなんとか学年上位をキープしていた文生だったが、学年が上がるにつれ試…

鈴木偏一
2週間前

小説 開運三浪生活 17/88「部活生活」

中学で文生は卓球部に入った。男子の花形部活と言えばバスケットボールか野球で、「卓球部に入…

鈴木偏一
2週間前
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小説 開運三浪生活 16/88「白日中学」

文生は中学生になった。村には小学校も中学校もひとつずつしかないので、生徒の顔ぶれはまった…

鈴木偏一
2週間前
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小説 開運三浪生活 15/88「喜ぶ人、悲しむ人」

苦手な体育の授業になった途端、文生はいつも劣等生になった。タツヒコの子分たちも非難に加勢した。なかでもサッカーの時間が拷問だった。 「どこ蹴ってんだ下手くそ!」 「フミオのせいで負けた!」 「勉強ばっかしてっからそんなよわっちいキックしかでぎねえんだ!」 喧嘩したところで勝てもしなかった。文生はその都度黙り、無表情をつくってやり過ごした。 ――こんなの、どうせ過去になるんだ。今だけだ。 努めて取り繕った鉄面皮が、かえって周囲からの反感を煽っていた。 依然として特等席