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絆と感情こそがもたらすもの

2020アメリカ大統領選挙、民主党候補者達の運命を決めるスーパーチューズデー。事前の予測では、国民健康保険導入や富裕税導入、公立大学の学費無償化を公約し、とにかく若者に人気のあるバーニー・サンダースが有利と見られていましたが、結果はオバマ政権時の副大統領ジョー・バイデンが圧勝しました。これは、アメリカのメディアも予想外の出来事だったようで、いつも冷静なABCニュースのキャスター達も大興奮しながら生中継していました。

「ジョー・バイデンは終わった…」そんな空気が漂っていたスーパーチューズデーの4日前のサウスカロナイナ予備選。ここでバイデンは奇跡的な大逆転を収めました。そこから僅か48時間で、民主党中道派の候補者ピート・ブーティジェッジとエイミー・クロブシャーが選挙レースをドロップアウトしバイデンの支持に回りました。更には、昨年に早々と選挙レースをドロップアウトしていた大激戦区テキサス州にとにかく強いベト・オークルがバイデンの支持を表明。つまり、民主党中道派が団結しバイデンに票を集めた結果、バイデンは見事に息を吹き返しました。

特に激戦地だったテキサス州は、サンダースだけでなくエリザベス・ウォレンも熱心に耕してした州だっただけに、バイデンに勝ち目はないと思われていましたが、テキサス州で18年間も強い支持を得ているベト・オークルのバイデン支持表明で風向きは一気に変わり、バイデンが逆転。スーパーチューズデーの対象だった14州で、バインに一気に追い風が吹きました。

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スーパーチューズデーの結果は現在も開票中や集計のやり直し中の州があり、約600デレゲーツが配分待ち、となっています。

事前の予測通り、厳しい結果となったのがエリザベス・ウォレンです。私は、ウォレンの富裕税導入や、大企業にだけ増税し、それを財源にした国民皆健康保険導入には賛成は出来なかったのですが、それでも、もし自分がスーパーチューズデーで投票するならウォレンでした。

実現できない「夢や希望」といった言葉で民衆をあおるのではなく、いつもウォレンなりに実現可能な政策を打ち出していました。「I have a plan 」「私にはプランがあります」がウォレンの口癖なのですが、そのプランに質問してくる小学生にも、投票権がないから…と無視するのではなく、いつも必ずきちんと説明していました。そして、子供達との別れ際には「あなたとの約束は守りますよ」といいたそうに、いつも「指切り」をしていました。

子供だから…と無視せずに同じ「人」として扱う、ウォレンのこの人間味あるところが、私は大好きです。ウォレンは現在、選挙レースを撤退するか継続するか考え中だと、キャンペーン陣営から正式に発表しています。


(追記:エリザベス・ウォレンは撤退を表明しました。誰の支援に回るのかは未定です)

その一方で、民主党支持者からサンダースに不安の声が上がり始めています。一部のサンダース支持者はスーパーチューズデー当日からウォレンに対して「お前は勝てないから、サンダースの支持に回れ」とプレッシャーをかけていました。そして、サンダースがスーパーチューズデーで負けると、ウォレンのせいだ、不正選挙だ、とsnsで発信し始め、遂にはウォレンのツイッターに攻撃し始めています。

2016年の大統領選挙の時も、一部の過激化したサンダース支持者達が陰謀説を唱え始めて、ヒラリー・クリントンに攻撃し、その結果、サンダースが民主党自体の分断を進めた過去があり、2016年と同じことにならないか…と不安の声が上がり始めています。

私は、バーニー・サンダースが打ち出している、公立大学の学費無償化など一部の政策は良いと思うのですが、サンダースは30年間の議員生活において、政策を実現したことがありません。実現できない夢を語って、民衆をあおるのは革命家の仕事で、どうしても大統領(政治家)の仕事とは思えない。大統領の仕事は、政策を実現し社会をより良くし、国家を分断させずに率いることだと思うので、サンダースが大統領になるとアメリカの分断は進むのではないか…と不安に思う人がいることは、とても理解できます。

そして、共和党トランプ大統領を支持する人達がいることも事実です。

「ある決定が自分にとっては良くても、他の人はどうだろう?と自然に気になる状態であることが、民主制が健全であるための条件だ」とフランスの政治哲学者ジャン・ジャック・ルソーが民主制を定義しているのですが「団結や連帯が民主主義には大切だ」ということだと思います。団結や連帯がなければ、やったもの勝ちになってしまう。ズルしてでも自分に有利な決定をし、他がどうなるかなんて関係ない。トランプ政権が率いるアメリカは、ルソーに言わせると民主主義でもなんでもない、ということになります。

ですが、私はサンダースにもトランプ大統領と同じ危機感を抱かずにはいられません。一部の過激化したサンダース支持者は、他の候補者のことをよく調べる努力をせずに「レボリューションを止めるな!」といって攻撃しているようにしか思えません。人々が感情を共有し、連帯していく絆こそが民主主義だと思うので、「レボリューション」という耳触りのいい言葉で民衆をあおるのは、民主主義ではなく社会主義のような気がしてなりません。

スーパーチューズデーの翌日サンダースは、サンダース支持者がウォレンに対する酷い個人攻撃を行なっていることを、正式に非難しました。

スーパーチューズデーでバイデンに追い風が吹いたのは、民主党候補者達の「絆」を有権者は感じたからだと思います。アメリカは右とか左みたいな、極端な国であって欲しくない…という感情的な結び付きがきっとアメリカを前に進ませていく、と願わずにはいられません。


Bibliography :民主党員、2016年の繰り返しを不安視する2020年

Bibliography :スーパーチューズデー:予備選結果ライブ


















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