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親ガチャが訴えるもの

そもそも子供も親もどちらも相手を選ぶことはできないので、お互いありのままを受け入れるしかないのですが、そう言いたくなる子供の気持ちもよく分かります。

うちもそうでしたが、最近は親自身が問題を抱えていたり、一人で育児をしなければいけなかったりして、子供の気持ちが置き去りにされることが多いからかもしれません。

うちの場合は、モトオの発達障害排除の考えが大きな壁となり、家から笑顔が消えていったのが一番の問題だったように思います。発達障害に辿り着くまでは、ムスメが傍若無人なモトオそっくりになっていくのが恐ろしく、私はムスメを正そうと怒ってばかりいました。まあ、その地獄を見ていなかったら今はなかったと思うので、人生は分かりません。

二人が発達障害で子供の為に夫と向き合う必要があると分かったのは、ムスメの問題行動のお陰でした。子供の問題行動には、実はその家に潜む潜在的な問題が関わっているとよく言われますが、まさにその通りでした。

家が安心できる場所であれば、それだけで子供の精神状態は安定するそうですから、育児をうまく行かせたければ、まず夫婦が協力しなければいけないのです。

親は育児を通してしか親になれないのに、モトオはお金を稼ぐことが育児だと本気で思っていたし、私に言われてやる簡単な世話だけで育児をしている気になっていました。そこを妻に指摘されると怒り出すのですから、ハズレと言わざるを得ないでしょう。

離れて暮らしても変わらぬモトオ

人は落ち着いたり、環境が変わったりすると大切なことに気づいたりするものですが、彼は何も変わらなかったというエピソードをご紹介します。
ちょっと前に、モトオがムスメを食事に誘った時のことでした。

朝が弱いムスメは、その日寝坊しました。どう頑張っても約束より30分〜40分遅れることが分かると、パニックになったので「大丈夫だから落ち着いて」と声をかけ、時間を逆算させ乗れそうな電車を調べさせ、誤って着く時間をLINEで知らせれば大丈夫だからと慰めながら、早く出れるよう手伝っていました。

すると、モトオからとんでもないメッセージが返ってきました。

「予約してるから無理」

ムスメはこれを見て、「ほらー!」と言って、更にパニクりました。

その後もこんな要らないメッセージを次々に送ってきました。

「遅れないでって言ったよね。 すぐ来る。 あなたが行きたいと言ったレストランに予約を入れたんだから、遅らせるなんて無理。 当日キャンセルしたら、キャンセル料取られる。 こっちは(約束の30分前)もうすぐ着くんですけど」

解決に辿り着く言葉が一つもなく、ひたすら責めるわけです。一体何をしたいのかと思いますが、彼はずっとこういう人でした。もっと恐ろしかったのは、メッセージを読むとモトオの鬼の形相まで目に浮かんできたことでした。彼と離れてもう3年になるというのに、再現ビデオでも見せられている気分になりました。

これなら乗れるという電車を提示しているのに、返ってくるのは意地悪な返事ばかり。ムスメは当然「もう行きたくない」と泣き出し、私は腹が立ちました。

もともとムスメの大学合格を祝う食事会と誘ってきたのに、なぜこうなるのか。
最初にモトオが提案した店(勝手に決めて予約していた)をムスメが嫌がり変更させられたことを根に持っていたのかもしれません。思い通りにならなかったことに不満を持ち、突然予定も変更されて対応できなかったのでしょう。責めるべきは自分ではなく家族だったモトオが再び姿を現したのでした。

けれども、それが嫌で決別したのですから今は違います。これほど責められる理由もないので、ムスメには対処法を教える必要がありました。

「落ち着いて! あなたは寝坊して悪かったけど、もう謝まったし、次に乗れる電車も調べてパパに伝えたでしょ? この間〇〇さんと待ち合わせした時と一緒だよ。(寝坊して人を待たせるのは問題ですが)謝ったら許してくれたでしょ? 
じゃあ、こうしようって変更して待ち合わせたじゃない? 普通はそうするの。 
怒っているのはパパの問題で、あなたの問題じゃない。 あなたは悪くないので、泣く必要はありません。 パパは自分の問題をあなたのせいにしてるだけ。 
だから、あなたは泣かなくていい。 謝っているのに無理だって言うなら、今日は行きたくないって、はっきり言っていいんです」

泣きじゃくるムスメにそう言うと「そんなこと言ったら、パパはもっと怒るって知ってるもん。もう最低だあ、会う約束なんかしなきゃよかったあ。うわあ」と、また泣くので、確かにと思いましたが、だとしたらもう関わらなくていいとも思いました。

「そんなどうでもいいことで怒る人とは、もう二度と会わなくていいから。 会いたくなければ、例え父親でも会わなくていいんだよ」と言うと「じゃあ、なんて言えばいいの?」と言うので、「自分が思った通りに書けばいいのよ」と言うと、「それが分かんない」と言うのでガクッとなり、動揺する私がいました。ムスメは自分の気持ちを言葉にするのが苦手なのです。普通に話せて、普通にやりとりできているので出来ているように思っていると、実はできなかったりすることがあるのでまだまだ手探りなのでした。

「後からママがそう言ったって言って、ママのせいにされると困るから、気持ちを確認しながらね」と言って、ムスメの気持ちを確認しながら言葉にするのを助けました。

モトオには怒らないことを約束させ、ムスメもそれなら行ってもいいとなり、やっと一件落着したのでした。大騒ぎでしたが、それでもムスメがご機嫌で帰ってきたので、これも良い経験になったのだと思います。それにしても、モトオは昔からよく子供を泣かせる人だったと思い出し、変わらない人は変わらないと思ったのでした。

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ハズレと言わざるを得ない親というのは、子供どころかパートナーも時には学校の先生も今のところ児相でさえもあらがえなかったりするわけで、親ガチャは実は深刻な社会問題を訴えているのではないかと思ったりします。

子供の頃、駄菓子屋の店先に彗星の如く現れたガチャガチャに夢中になった私がその時思ったのは「ガチャガチャはハズレるもの」ということでした。私が回すといつも要らないものばかり引き当てるので、くじ運の強い妹をわざわざ連れて行って引かせ、欲しいおもちゃを手にしたこともありました。
そして、発達障害を知った私が今思うのは、ガチャガチャのように一目でアタリ、ハズレが分かれば、人生苦労しないのになあということです。

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