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社会性の支援で大切な「居る」と「参加」

*この記事は2258文字あります。個人差はありますが、約3分~5分程で読めると思います

こんにちは。よこはま発達相談室の公認心理師の佐々木です。いつも記事をお読み頂きありがとうございます。今回は「社会性の支援」をテーマに書いていきたいと思います。

そもそも社会性って?

自閉症スペクトラム(ASD)の方々の特徴の一つに「社会性の質的特徴」があります。皆さんは「社会性」と聞いてどのようなことをイメージするでしょうか?

ASD概念を提唱したローナ・ウイング先生たちは、「対人交流の特徴」とも言っており、対人交流の中で困難や特徴が生じるとされています。

一口に社会性と言っても幅広く、非常に多くの情報量になります。関係機関であるよこはま発達クリニックのHPには次のようにまとめられています。

同年代の他者と相互的な交流を行うことが困難なことが基本的な特性です。幼児期には他者の存在への無関心、人より物への興味の強さで表現されることが多いです。学童期以降には親密で対等の関係を友人と構築することの困難さが特徴です。ただし、ASDの人たちの社会性は発達しないわけではなく、ゆっくりと発達し、変化していきます。知的に高い人たちは、これまでの経験をもとに自分で特性が目立たないようにカバーしている人も少なくありません。

よこはま発達クリニックのHPより

社会性の支援の方向性は?

人付き合いの仕方はそれぞれに多様であり、「こうでなければならない」ということはないのではないでしょうか?

人付き合いを望むとき、
・ご本人がそうしたいのか?
・それともそうしなければならないと思っているのか?
・周囲がそうしてほしいと思っているのか?
など理由はさまざまです。

「正解」はないかもしれません。でも、人付き合いの多さ=その人の価値でもありません。人付き合いの中で大切なことは、より多くの人に関心を持ち、より多くの人と交流することではなく、嫌な思いをしないで過ごせることではないでしょうか。その中で、結果として良い人付き合いができる場合もあります。大切なことは、「多くの交流を持つことは目的ではない」ということです。

「居る」と「参加」の違い

対人交流の場が嫌にならない、嫌な思いをしないで過ごせるためには何が必要でしょうか?

その時のポイントの一つに、「居る」と「参加」は違うということを認識しておくことのように考えています。両者は似ているようで、意味合いは全く別物ではないでしょうか。

「居る」

僕が考える「居る」というのは、集団や社会場面において「よく分からないまま居
させられる」状態です。例えば、朝の集会や職場での会議をイメージしてみてください。

・いつまで続くんだろう?
・自分は何をするんだろう?
・どうなったら終わりなんだろう?
・これは何の意味があるんだろう?
・しかもやりたくないことをさせられる

こんな状況はどうでしょうか?
次回からは任意の参加でいいですよと言われたら、皆さんだったらどうしますか?
多くの場合には、「また出よう!」よりも「でなくていいや」と思うのではないでしょうか。

「参加する」

対して、「参加する」はどんな意味合いでしょうか。僕は「その場がわかって活動できること」だと思います。先ほどの例で説明してみると、次のようなイメージです。

・朝の会や会議が、いつ終わるのかがわかっている
・自分の役割がわかっている(いつ、何を求められるのかがわかっている)
・3つの活動、あるいは議題が終わったら終わりであると予めわかっている
・その場でその日に何をするのかを伝えてもらえる、仕事の優先度や課題が明確になる
・やりたくないことは拒否する権利もある

こんな状況はどうでしょうか?
こうした内容であれば、「次も楽しみだ!」とはならないとしても、「出ることは悪くはない、嫌ではない」と思えるのではないでしょうか。それが次の「参加」につながるのだと思います。一律に決まったものではなく、「自分にとって意味がある」と思えることが大切かもしれません。

まとめ

今回は社会性の特徴と支援の方向性について書いてみました。簡単にまとめると、以下の通りです。

  • 社会性は社会的場面における人付き合いの中で生じる困難

  • 社会性も発達する

  • でも、人付き合いや社会参加を増やすことだけが目的にはならない

  • 「嫌じゃない」と思えるスタイルでOK

  • 「居る」と「参加」は分けて考える

  • 次につながるのは、「居る」ではなく「参加」

  • 「参加」のためには「今がわかること」が重要(必要な配慮や調整がある)

でも、誤解がないようにお伝えすると「参加の総量を増やす」ことは目的にはなりません。その辺りについては、以前別の記事にて解説していますので、宜しければ参考にされてください。

それでは本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

よこはま発達相談室
佐々木康栄

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