見出し画像

【LOOP8】バルドゥルのために北欧神話について学び直した【#私の学び直し】

 北欧神話をご存知だろうか。

 オーディン、トール、ロキ、ヘイムダル……などという神々の名を上げれば、聞いたことがある方も多いのではないか。

 主神オーディンは、アングロ・サクソン人の間で「ウォデン」と呼ばれ、そこから「ウォデンの日」ということで「ウェンズデイ」、水曜日の由来であり、オーディンの妃であるフリッグの日ということで、「フライデイ」、金曜日の由来となっている。同じように、サーズデイは雷神トールから、テューズデイは軍神テュールから来ている。

 また、たまにペットが亡くなった時などに、「虹の橋を渡った」という表現を聞くのだが、北欧神話において神界につながる虹の橋、「ビフレスト」から来ている表現だろうか(関係ないか?)。

 北欧神話は、ゲルマン神話とも言われ、紀元前一千年からキリストの誕生までの間にゲルマン族のヨーロッパで形を持った神話だ。
 その物語は他の多くの神話と同じく天地の創造から始まり、最終戦争『ラグナロク』による世界の滅びまでを一連の流れとする。

 そもそも、ギリシャ神話、エジプト神話、日本神話、北欧神話あたりはゲームや小説など創作物としてモチーフになることも多く、私にはふんわりとした知識がある。

 北欧神話だけとっても、ゲームなら「God of War」、「ヴァルキリープロファイル」、小説なら安井健太郎さんの「ラグナロク」、漫画なら木下さくらさんの「魔探偵ロキ」なんかがパッと思い浮かぶ。

 私はそんな訳で北欧神話に10代の頃ハマっていて、何冊か本を読んで勉強していた。その後あまり思いだすこともなく忘れかけていたのだが、最近プレイしているLOOP8というゲームに、バルドゥル・マックスを名乗る人物が登場した。

バルドゥル・マックス先生

 バルドゥル……バルドルは北欧神話における超イケメンの光の神である。

 そこで、改めて本などを読み直し、北欧神話におけるバルドルについて大まかに書いてみることにした。

 北欧神話には挿話集のような側面があって、資料によって微妙に細部が異なるのだが、まあ大まかな流れと思って欲しい。

北欧神話におけるバルドル

 北欧神話のバルドゥル……一般にバルドルは、主神オーディンとその妃である豊穣神フリッグとの間に生まれた日光の神である。

 「麗しのバルドル」と呼ばれ、神々の中でも最も優雅、清純で美しい男神だった。雪のように白く、輝くような肌の持ち主で、髪は純金のごとくきらめき、目は青い光を放つ。さらに舌に刻まれたルーンのおかげで弁舌もさわやか。きらびやかに輝く馬を乗り回し、人々が「波の鷹」と呼ぶ日光の船も持っていた。

 奥様は月の侍女でもある美貌の女神ナンナだ。彼女は美しいだけでなく、夫と光の闘い(何?)をも交えるほど勇気があり、輝かしい馬にも乗る人だが、一方で優しさも持ち合わせている。

 まさに神様! 彼はすべてを持ち、誰からもこよなく愛されていた。悪神・ロキを除いては。

(ロキについては多く語らないが、彼はこんな完璧で欠点の無い神様は当然気に食わないだろう)

 ある時から、バルドルは毎晩不吉な夢を見るようになった。死の夢だ。

 それを憂えた母フリッグは、ただちに火、水、鉄を始めとしたあらゆる金属、石、大地、樹々、病気、動物、蛇、とにかく思いつく限りのすべてに「バルドルに危害を加えない」という誓約をさせた。ただし、あまりにも若く、小さくて、何の危害も及ぼせないヤドリギだけは例外とした。

 これにより、バルドルは何者によっても傷つけられない者になった。

 神界(アースガルズ)では、バルドルに何を投げても、彼が傷一つ負わないということを試してその不死身さを称えるという遊びが流行した。みんなで槍を投げたり、ある者は石を投げたり、剣で強打したりしたが、それでも何一つ傷つかないと安心してバルドルを褒めたたえた。

 まあ、それが気に食わないのは悪神・ロキである。

 そりゃあ、気に食わない。一点の穢れもなく美しく、知恵があって、喋るのも得意で、美人で勇気があって優しい奥さんがいて、さらにその上何者にも傷つけられない? いけすかない。そんなやついていいはずがない。

 ロキはフリッグをだまして、「ヤドリギだけはバルドルを傷つけないと誓約しなかった」と聞き出すと、ヤドリギを引っこ抜き、腕のいい細工師のところに行って、「これで魔法の矢を作ってくれ」と言って作らせた。それは当たれば必ず死に至る悲痛の矢だ。

 ところで、バルドルの弟に、目の不自由な「ホズ」という者がいた。
 ロキはホズのところに矢を持っていき、「あなたも兄さんを称えるために何か投げつけたらどうです」というようなことを話した。
 ホズは、「私は目が見えませんし、投げるものも持っていません」と答える。
 ロキは、「それならあなたの弓に使えるこの矢をあげましょう。そして、あなたがお兄さんを狙えるように腕を支えてあげますよ」と言う。

 そういうわけでホズはヤドリギの矢でバルドルを射て、殺してしまった。神々は衝撃に打たれ、天も地も嘆き、悲しんだ。

 ところでロキよ、なんで自分でやらず弟にやらせるんだ。どうせ悪事はバレるのに……。

 この話にはまだ続きがある。

 バルドルは死後、冥界であるニヴル・ヘイムに落ちた。これに嘆き悲しんだ母親の女神フリッグは、いかなる身代金を支払ってでも、息子バルドルを取り戻したいと望んだ。

 そこで使者を送り、冥府の女王ヘルに頼んだ。
「アースガルズ(神界)でも地上でも、ありとあらゆるもの、命のあるものもないものもその死を嘆き悲しんでいます。どうかバルドルを帰してください」
 ヘルは冷ややかに答えた。
「あらゆるものがバルドルのために泣き、帰ることを望むなら戻さなければならないだろうが、涙を流さない目が一つでもあるのなら、いつまでも冥府に留まるだろう」
 その言葉を聞いたフリッグは、あらためて全世界に使者を送り、すべての存在、命があるものもないものも、バルドルのために泣いてくれるよう、頼んだ。
 その結果あらゆる存在が涙を流した。岩ですら水滴を浮かべた

 でも、まあ、当然ロキは泣かない

 ロキが姿を変えた(らしき)女巨人がたった一人泣こうとしなかったので、バルドルが冥府から帰ることは無かった。

 というのがバルドルに関する一連の顛末である。
 この悪事をはたらいたロキは後で罰を受けて大変なことになるのだが、ここでは割愛する。

LOOP8におけるバルドゥル・マックス

 ゲーム中のバルドゥル・マックス先生については、ネタバレを踏みたくないので今ゲームで判明している情報しか分からないが、祖国であるドイツ、父母、妹をも失ってたった一人生き残り日本に逃れ、妹を模した戦闘用の人造人間? を作って、仇である「ケガイ」という化け物を殺し、失ったすべてを取り戻すことに執心しているらしい。一人で復讐系SFしてる

笑顔がかわいい

 北欧神話のバルドルはちょっと神経が細いところはあるけれども美貌のハッピー野郎であり、ゲームのバルドゥル・マックス先生とは人格が違うと思う。死者に拘泥するのも上に書いた通り、バルドルの役割ではない。

 また、左耳に目の形をしたピアスをしている。

左耳に特徴的なピアスをしている

 これは「ウジャトの目」に似ている。ウジャトの目はエジプト神話のシンボルだが、左目は月を示すこともあって、バルドゥルが月の神の加護を持っているということを示唆している……かもしれない。もしくは、ウジャトの目が持つ「癒し・修復・再生」のような象徴に物語上の意味があるかもしれない。

 気になるのは、LOOP8というゲームは日本神話を基本に置いていて、光の神として我らが天照大神がすでに存在するのにも関わらず、バルドルという他の神話から来た太陽神を持ってきている点だ。エジプト神話由来のウジャトの目(ホルスの目、ホルスも天空神で太陽や月を内包する)を装備していることもあり、もしかすると日本以外の外国の神話世界すべてを象徴するキャラクターになっているのかも知れない。だとすると、日本神話的な世界観とは敵対する立場にあるかもしれない。

 なかなか謎の多いキャラクターである。

 バルドルについて調べ直す切っ掛けにもなったので、このようなキャラクターが存在するゲームをプレイできて良かった。

 気になる方は実況も見て頂けると嬉しい。

 最後に、今回のバルドルについての解説は、以下の本を参考に書いた。

 北欧神話は物語が個性的、かつ神々のキャラが立っていて面白いので興味を持った方は読んでみると楽しいと思う。どちらかというと、「ゲルマン神話 北欧のロマン」の方が物語としては読みやすい。


 #私の学び直し に寄せて。

 最後までお読みいただきありがとうございます! 良かったら、スキ/フォロー/コメントお待ちしてます。あなたにいいことがありますように。

サポートありがとうございます! 金額にかかわらず、サポートが執筆の大きな助けです。 いつも感謝しています。