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新卒入社で初期配属されるとキャリアが詰む部署ランキング

始まりはXのポスト

掲題テーマ「新卒入社で初期配属されるとキャリアが詰む部署ランキング」のポストがX(元Twitter)でバズり、物議を醸している。投稿主は、安斎 響市@転職デビルさんである。

問題のポストで発表されていた部署は、下記5つ。

【第5位】地方の販売子会社・営業事務
【第4位】工場の生産技術/生産管理
【第3位】情報システム部・問合せ窓口
【第2位】広報部・SNS運用担当
【第1位】人事部・新卒採用担当

実際に配属されている人は、心中穏やかでいられないところだろう。以下、考察編に続く。



【考察編】上記部署はほんとに詰むのか?

ポスト主自身は、なぜ上記5つの部署に配属されるとキャリアが詰むのかを、あえて説明していない。あくまで読者の判断と想像に委ねた恰好だ。

いや、そもそもまず、なにをもってキャリアが詰むとするのか。この点をはっきりさせないと、考察のしようもあるまい。


転職デビルを名乗っているように、安斎氏は転職をくり返してキャリアを強化していくスタンスを固持している。つまり、上記5つの職種は、転職市場で評価されにくい/転職できないといいたいのだ、と推測できる。

非常にコメントしがたいが……、ひとつひとつ、なぜ転職市場での評価が低いのか、検証する必要があるだろう。


第5位:地方の販売子会社・営業事務

営業事務というのは、要はフィールドセールスの補助とか秘書のようなもの。見積・契約・発注・納品・請求などの書類発行、数値/在庫管理、入金状況確認、経費の精算、資料作成など、事務系の雑務を担う。誤解を恐れずいえば、どこの営業所にもこういうポジションの女性がお局化しており、実際の仕事以上の権力を有しているのが常である。

さて、営業事務はキャリアが詰むのだろうか?

売上成績は通常、フィールドセールスのものになる。そのため、営業事務は数値で評価されにくい。給与の上がり方も緩やかだ。また、得られるスキルもExcelに数字を入力する程度。決算書までを手掛ける経理事務と異なり、スキルアップの上限が低い職種でもある。

この手の職種の問題は、担当者がお局化しやすいことだ。営業事務に限った話ではないが、だれがやっても結果が同じになる/仕事で差がつかない職種の場合、なにで差がつくかというと、パワハラで地位を保てるかどうかだからである。経営学のゲーム理論ふうにいうと、スキルや成績を高めるより他人の足を引いたほうが相対的に有利になる局面では、人間の精神は容易に腐敗する

また、人員が積極的に増やされる部署でないことも、転職市場での需要を低くしている。書類/資料作成についていえば、Microsoft365 Copilotが実装される2023年11月以降、人間の出る幕はなくなるだろうし、ERP/基幹業務システムが導入されている規模の企業であれば、数値や在庫管理は省人化すべき業務の筆頭だ。もちろん、大手企業でもインサイドセールスの部署はあるが、定時退社する既婚女性を配置するための部署という位置づけで、積極的に経験者を採用する土壌ではない。

結果として、営業事務が同職種狙いで転職するにしても、しょうもないベンチャーか中小、派遣社員ぐらいしか選択肢がない。転職市場での価値が低いといわれても、否定する材料はないだろう。


第4位:工場の生産技術/生産管理

第4位に挙げられた部署は、工場の生産技術/生産管理。簡単にいえば、製造部と販売部間の社内調整、生産の監督という位置づけか。

管理、というと大仰な響きになるが、じつはこれが大きな罠。どこの業界でも、管理と名につく職種は、得られる経験と専門スキルが乏しくなる。

クリエイティブを例にとっても、ディレクターとかプロデューサーみたいな制作進行管理側の人間は、概ねスキルの低い人が任される。実際に現場で制作できるスキルもなく、他人の成果物に横でガチャガチャ言うだけの職種なので、肩書の立派さに反してキャリアの面でかなり厳しい。

当然、転職も難しくなる。転職の際にものをいうのは、制作実績と数値実績だからである。そもそも、スキルが必要でない職種であるため、経験者を採用するより社内異動で済ませたほうがコストが安い。転職市場での価値も、相対的に低くなる。


第3位:情報システム部・問合せ窓口

単純な話、情報システム部でコードを書けない人間、中途でだれが雇いたいのか? という話になる。仮に採用があったとしても、都合よく使われるだけの丁稚奉公のような扱いになることは想像に難くない。


第2位:広報部・SNS運用担当

若手にSNSを任せたい意向の企業は多いだろうが、スキルの積み上げに関していうと最も厳しい。転職の面接の際、前職での職歴を訊かれて「私のXでのリポスト/イイネの数値実績は~~」と答えて受かる企業は、まずないだろう。


第1位:人事部・新卒採用担当

学生と年齢が近い人材を置きたいという企業心理から、人事部への新卒配属も考えられないケースではない。ぎゃくにいうと、年齢を重ねるほど減価償却的に需要がガタ落ちするのが泣き所。

人事経験者を中途採用するケースはほぼないので、転職市場での価値も高くない。人事担当は企業の事業内容に精通している必要があるため、大企業では社内異動で補充することがほとんどだ。中小企業に至っては、そもそも人事部などという部署/職種はない……。



まとめ

以上、安斎氏の意図をまとめると、キャリアが詰む職種は以下の3つに分類できる。

  1. 転職市場で募集が乏しい職種(社内異動で補充できる職種)

  2. 年齢がマイナスに働く職種

  3. 制作実績と数値実績が残らない職種

要するに、専門性が低い職種、仲介/管理系の職種であることがわかる。

年齢が若い時期ほど、新卒採用やSNS担当は華やかな職種と勘違いしがちだ。しょうもないベンチャーがSNSで踊ったりしているせいだろう……。

参考……。

また、実際に手を動かすより進行管理のほうが上等な立場であるという思い違いにも陥りがちである。実際には、いずれの職種もスキルが身につかず、転職/独立はしづらいため、注意が必要。

なお、筆者も広告屋で制作進行管理のような仕事をしていたことがある。当然、このままではまずいな、という気づきは早期にあったので、可能なかぎり上長の意向をフル無視して自身の制作実績を積み上げるよう努めていた。課題を自身で見いだし、克服のために読み漁った技術書は数知れない。相撲の世界では三年後の稽古、というが、一般人なら三年後の転職を見据えたスキル開発が必要なのである

広告関連クリエイティブの原価率は40%以下が目安だったが、自身で納品まで進めた結果、10%を切ったりした。なんでも自分でやったほうが早いし安いしスキルも身につきやすいのだが、日本企業における仕事の大部分は外注にブン投げるだけの仲介屋であるため、生産性を下げる一因となっている。よくないことですね……。閑話休題。

もちろん、大手企業に入社して、職種や部署を問わず一生そこで働ければいい、というスタンスであれば、キャリアだのスキルなんて考えなくてもいいだろう。ただ、世の中の大多数は、よりよい待遇を求めて努力したい人間であるはずだ。向上心を失ったとき、人はそこいらのお局のように、まわりに害悪を撒き散らすだけの人間になってしまう。

上長の意向はなるべく聞き流して、自分の判断を最優先したほうがいい。他人の意志に阿って束の間の立場を守るより、目に見えて手に触れられる、たしかな実績作りとスキルアップに励むことが肝要なのだ。上司というのは基本的に部下を安く飼い殺すことしか考えていないので、素直にやろうとすると、あっという間にスキルとキャリアが詰んでしまう。

以上、意に沿わない職種/部署に配属されたときの処世術になるかもしれないので、ぜひ、覚えておかれたし。

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