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【移住雑記307日目】あつ森、ビー玉、ハスカップ

先日メールフォルダを整理しているとき、1件のメールが目に留まった。ちょうど1年前、地域おこし協力隊の仕事の求人にエントリーする内容のものだった。

昨年の今ごろは仕事を辞めて、ぼんやりと自分の生き方を考えていた。時々人に誘われてご飯に行く以外は家の中で本を読み、夜になれば友人と朝が来るまで電話をしていた。あの時の自分が今となっては、少しだけ別の人の時間だったように感じることもある。1年はあっという間、というのはそういう過去や未来の自分自身との距離感のことを言っているのかもしれない。

そんな1年前、行ったこともない厚真町について調べているとき、「ハスカップ」を初めて知った。

ハスカップの検索結果。ハスカップカレーって何?


画像だけ見ていると、その大きさはなかなか捉えきれない。葉っぱと実がアップになった写真を見ていると、なんとなく大きそうに見える。ラグビーボールみたいな曲線的なフォルムを見つめていると、不思議とゴムゴムの実くらいの大きさにも見えてくる。

そんな不思議な果実、ハスカップの栽培面積が日本一を誇る厚真町に、ようやく収穫のシーズンがやってきた。町のあちこちでハスカップ狩りの話題が上がる。

あつ森みたい。

限られた土地でしか採れない自然の産物に直接触れること、これまで関東で暮らしてきた自分にとってはとても新鮮だった。ハスカップは1年の中で収穫できるシーズンはとても短く、6月の終わりから7月の中旬ということだったので、晴れた日曜日の本日、大袈裟なほど日焼け止めを塗って帽子を被って農園へ採りに行く。

ハスカップの実がなる低木の並んだ農園のあちらこちらから、「これは甘い」「うわー酸っぱい」といろんな声が聞こえてくる。木になっている実を見るのは僕も初めてのことで、親指の爪くらいの大きさの果実が葉っぱに隠れながらたくさん実っている光景はとても素敵だった。

甘い果実を見つけると、風に乗ってふわっと甘い香りが立った。


指先でやさしく摘まんで軽くねじると、ぷつんと枝から離れる。指の隙間から零れ落ちてしまいそうな軽やかさで掌に転がると、その大きさや色味が神秘的に映る。別にそうする必要もないのはわかっていながら、誰かの秘密を食べてしまうみたいにこっそりと口の中に運ぶ。子どもの頃、綺麗な色のビー玉を口の中に入れたみたいに。

奥歯で噛むと少しの弾力のあと、酸味と甘みが弾ける。夏の日差しを存分に吸い込んだ果実の、ちょっとだけひんやりとした口当たりが癖になる。木々によってその甘みや酸味のバランスは様々で、味の気に入った木を見つけると、葉っぱや枝を軽く押さえながらその青紫の宝石を集めていく。味の違いを楽しみながら農園を回っているうち、すぐに時間が過ぎていった。

ハスカップはその栄養素の高さから、”不老長寿の実”と呼ばれることもあるらしい。いまさら不老を願うわけではないけれど、できるだけ長生きはしていたいと思うようになった今日この頃。あんなに寒くて雪も積もったこの土地に、日差しを浴びて実りの時がやってくる。季節は力強さをもって今日も巡る。

北海道の暮らしも、もうすぐ1年。



今日お邪魔した農園は 土居農園さんでした。収穫後、少しだけお話をさせてもらいました。ジュースまでいただいて嬉しかったです、ありがとうございました!

今月中旬ごろまで、厚真町でハスカップ狩りできます。

農園によって、いろんなハスカップが楽しめそうです。僕もこのシーズン中に他の農園にも行ってみようと思っています。


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