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判断基準をもつこと ~当期の目標づくりの場面で~

私の勤務先では、半期に一度、先期を振り返り評価し、当期の目標設定をおこないます。その目標設定をすることで、当期にやることが明確になり、日々の仕事にしっかりと目的意識を持って取り組むことができます。私は管理者として部下の目標設定をサポートする立場にありますし、もちろん自分の目標も定めます。

 多くの一般企業において、このような目標設定と評価の制度を何らかの形で施行していると思われます。この目標設定を苦手とする方は意外と多いのでは・・・とこれまでの経験から感じています。そうなる原因は様々なことが考えられます。制度そのものの建て付け、実際の運用フロー、評価者の資質、本人の動機付け、目標設定の解像度、判断基準の有無・・・等々

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 私が思うに、目標設定に躓くことに大きく影響するのは、「判断基準」が明確かどうか、です。「判断基準」には、会社の理念、経営方針、部門のミッション、各階層への期待役割、個人の哲学・美学まで、絡んでいるのですが、それらがどのくらい一致しているかの度合いが目標設定をするメンバーに見えることが肝要です。

 それらがきれいに一致し矛盾しないことなど稀でしょう。むしろぶつかり合い、コンフリクトを生むことの方が自然です。だからこそ、管理者(評価者)によるサポートが必要になります。管理者は、何を弁えていなければならないでしょうか?

 もし管理者が部課室クラスの長であれば、自部門のミッションを明らかにすることが最初の仕事です。それは、自部門のミッションの上位方針である会社の理念や経営方針を、自分たちが求められる仕事が何であるかが分かるように翻訳してゆくことに他なりません。管理者はこれができなければ部下のサポートもできないというわけです。

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自部門のミッションを美しい言葉で飾る必要はありません。要は、「私たちは、〇〇〇をする。」が基本の形です。いくつかの箇条書きになることも、一つの文章にまとめることも、どちらも考えられます。この基本の形に「△△△を活かして」とか「◇◇◇の実現のために」などの若干の説明を付けたりすることはあるでしょう。こうして言葉にした自部門のミッションは、そこで働くメンバーの「判断基準」になります。

 勇気が要ることですが、管理者はこの自部門ミッションについて、メンバーに一方的に伝達や説明をするのではなく、このような言葉にした経緯や理由を話し、「どう感じるか」「どう思うか」「何を考えたか」を聴き、対話を促すプロセスをつくることが必要だと思います。

簡潔な表現である自部門ミッションは抽象的にならざるを得ないでしょうから、どのような具体的な事柄の検討から抽象化されたのか、管理者はメンバーに話す必要があります。そうすることによって、管理者とメンバー、あるいはメンバー同士の対話が始まります。対話が始まれば、やがて意味が形成され、自部門ミッションの言葉に命が吹き込まれるでしょう。

このように、「判断基準」を共有してゆくプロセスをみんなでくぐることで、メンバー一人ひとりの主体的な目標設定につながってゆくことを期待します。そんなこと、どうやってやればいいの?と思うかもしれませんが、そんなに難しいことではないです。「集まる→輪になって座る→管理者の話を聴いてもらう→メンバーの話を聴き合う→みんなで受け止めてもらえたか確かめる」をやることです。5人~8人程度の部署なら1時間以内でできるでしょう。

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 ここまででもうお分かりいただけたのではないかと思いますが、「判断基準」は管理者から一方的に投げつける「お達し」ではなく、管理者がメンバー一人ひとりの価値観と触れ合い、仕事の目標をすり合わせてゆく道具として「機能させるもの」です。「判断基準」は迷い道に入った時の拠り所になりますので、例えば、目標設定で道を見失っている部下がいるとしたら、『うちの部のミッションを見てみた時に、あなた自身が仕事で役に立つことは何だと感じた?』といったサポートが機能するのです。

 もうひとつ大事なことは、「判断基準」をつくるということは、「管理者としてリスクを取る」ということです。365度どこから見ても完璧で突っ込みどころが見つからない判断基準など作れるわけがありません。管理者はいつだってグレーな世界を進んでゆくのです。だから、あまり思い悩まずに、何か新しいものや見栄えのいいものを無理くりに作ろうとしないで、今ある上位方針を拠り所に自部門の「判断基準」をまとめ、沈黙を恐れることなくメンバーに問えばいいと思います。

 不確実性の時代と言われるようになって久しいですが、そんな時代だからこそ管理者に期待される、メンバーを支援しつつまとめてゆく力を磨く必要があります。ぜひ「判断基準」を明確にして、メンバーに問いかけ、サポートしてゆくことを実践していけたらと思います。

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 今回は、判断基準をもつこと、についてお話しました。私は会社勤めとの複業でライフキャリアデザインカウンセラーとして個人や世帯の職業生活設計や資産設計のお手伝いを志しております。保持資格としては国家資格キャリアコンサルタントとAFP(日本FP協会会員)をコアスキルとして、これまでの会社生活や人生経験で学んできたことを活かして会社内や地域社会に向けた価値創造につなげてまいります。ご関心を持っていただいた方、ご相談事がある方は、どうぞお声がけください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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