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実践レポ1 「からだ体操」ワークショップ

皆さんこんにちは。ムーヴメントやダンスの教育・研究に携わっている橋本有子です。

世の中には沢山の「体操」がありますが、皆さんのお気に入りはありますか? 

今日は実践レポ第一弾として、ラバン/バーテニエフの一理論を元に考案した「からだ体操」ワークショップについてお話します。

場所はFujisawaSST内の学研ココファン多世代交流施設にて。慶應義塾大学の仲谷研究会SFC TOUCH LAB主催の「子どもの身体づくり」企画として行われました。

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「からだ体操」とは

ベースにした「からだ体操」は、生後一年の発育発達過程で見られる動きの観察・研究から導かれた「6つのつながり」に沿って考案したものです。

この「6つのつながり」は、理学療法士であり舞踊家でもあったアームガード・バーテニエフが提案しました。(これについて詳しくは後日。)

以下は、山崎かのこ氏作成のイラストです。ワークショップ中はこの画像をスクリーンに映し出しながら、合計10種類の動きを渥美幸裕氏作曲のギター音楽と共に、一つ一つ体験していきました。

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                1. 呼吸           6. 左右半分のつながり          7. 斜めのつながり

「体感」と「思考」を促す体操のデザイン

最初は「呼吸」です。からだが膨らんで縮む様子を、「わっふん」(写真)と共にイメージしました。わっふんの動きと私のからだが共鳴して動いているのを見た子どもたちは、共体感し、共に動くことで一緒に空気を動かしていく時間が流れました。子どもにより、最初の共体感はからだ全体の場合もありますし、顔(表情)だけという場合もあります。それが徐々に、からだ全体にシンクロしていきます。個人的に大好きな時間です。

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「わっふん」(左が「わっ」右が「ふん」)
*声に出してみて表情がどのように変わるか観察してみてください。

実際の体操では、胸に手を当てて、自分のからだが膨らんだり縮んだりするのを体感しながら動きます。生きている限り止まらないこの呼吸は、人が誕生してから最初に現れる「動き」と言われています。

また、人間の動きの中で最も複雑で作用する筋が最も多い「斜めのつながり」では、体幹を捻りながら、例えば右肘左膝を近づけて斜めのつながりを探求します。子どもたちは、発育発達の個人差により出来たり出来なかったりですが、「逆側の足と肘が近づく」ということを、からだと頭で体験・思考し、動きそのものを徐々に習得していきます。

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楽しくて難しい体操

この日は3歳〜9歳の子どもたちと親御さんが参加しました。「回るのが楽しかった」「飛行機のところが難しかった」など、子どもたちは感じたことを思い思いに口にしてくれました。

アシスタントの大学生たちも、自分のからだと対話する時間になったようです。学生は「あんなに短時間で動きが変わって行くのですね」と、子どもたちの変化に感動していました。

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「からだ体操」が目指していること

「からだ体操」は「考えながら」動くことを大切にしています。がむしゃらにただ真似て動くのではなく、自分のからだや動きの感覚の「気づき」が起こるように、敢えて言葉を大切に、からだの部位の名前や動きの名前を強調します。「体感」と「思考」を行き来する、あるいは両立するのです。

体操の背景にある、生後一年の発育発達過程で見られる「6つのつながり:呼吸、右半分-左半分、斜めのつながりなど」は、その後の様々な身体運動の基礎になります。大抵「人の動き」は複雑で、沢山のピースが合わさったパズルの様な状態です。そのため、不得意な運動を繰り返し練習しても変化がない場合には、パズルを分解していずれかのつながり(パズルの1ピース)を練習することで変化が現れることがあります。

今一度「意識しながら動く」経験を重ねることで、神経系への刺激や再構築を行うことができるのです。これを「動きの再教育」と言います。

「からだ体操」では、この動きの再教育を目指しているため、最初は子ども向けに考案したものですが、大人にも良い「からだ」と「あたま」の準備体操になります。

「からだで」思考する

''We are only able to think because we have a body to think through.''            by Rudolf von Laban                         「私たちが考えることができるのは、『からだ』という思考可能な媒体を持っているからである。」

これはルドルフ・フォン・ラバンの引用ですが、「からだ」の存在が全ての基本にあるということを示しています。そのため、そのからだや動きにハイライトを当て、そこへ直接アプローチをするということは、本質に迫っていくことなのだと私は考えています。

「『からだで』思考する」ここがポイントです。

おわりに

からだを一緒に動かすと、一気に親近感が増します。言葉を介すよりもずっと、本能的で原始的だからなのでしょうね。やっぱり、からだを動かす一体感や喜びをシェアする「空間づくり」が大好き!と感じた1日でした。 

                        ==「からだ体操」体験 @ 伊勢丹にて==                        からだ体操と背景コンセプトは、伊勢丹教育事業の「ここちの森」の『からだの森』プログラムのコンテンツになっており、私が監修を務めています。トライアルもありますので、ぜひ一度遊びに来てくださいね。優しいスタッフのお兄さんお姉さんがお待ちしています :-) (2020年3月終了)







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