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「同一責任、同一賃金」が正解です

  いづつです。こんばんは。流行っているワードに違和感があると、つい何かを書きたくなります。

  私は「同一労働、同一賃金」というワードが嫌いです。この考え方は、働き方改革から逆行するからです。このワードを掲げる人ほど生涯同一賃金に落ち着きますよと言いたい回です。

■働き方改革とは何かをおさらい

  過労問題に端を発したこの働き方改革のムーブメントは、残念ながら失策と断言していいと思います。国内の会社に課した残業時間削減だとか勤務時間の正確な把握だとかは、所詮すでに存在していた法律をよりしっかりと遵守するだけの動きであって、従業員たちの働き方は何も変えないからです。正しい改革ができる会社は、このムーブメントとは無関係にすでに勝手にやっています。そもそも政府の号令で何か変わったとしてそれは改革というワードでは不適切。改革っていうのは民が能動的にやってこそ

  もっと従業員に裁量と権限を与えて、自由に動いてもらう。その代わり成果物(アウトカム)を評価します、ということを仕組みに落とし込んで実現していくことで、結果的に労働生産性が上がっていくというのが正しい働き方改革なのですが、「勤務時間を正確に管理する」だけでは効率は何も変わらないし、むしろ労務管理する部門の負荷だけが増えてかえって会社全体では生産性は下がる方向に作用します。

  働き方改革のあり方について、詳しくは下記の過去記事をどうぞ。

■賃金はどうやって決まるべきか

  「同一労働、同一賃金」というのは、後者の勤務時間を管理するマネジメントスタイル、すなわち働き方改革前の古い統治ルールを前提にしています。「同じ仕事を同じ時間やれば同じ賃金にする」という労働者の入力量(インプット)を参照する賃金決定システムだからです。AさんとBさんが同じインプットをしていれば、AさんのほうがBさんよりもアウトカムが優秀だとしても、同じ賃金を払うべきだという思考。

  働き方改革の中でフェアな従業員評価を実現するならば、「同一責任、同一賃金」であるべきです。日本語では「責任」と書きましたが本当は「その責任を全うできる能力」という意味も併せ持つ英語の”responsibility”がより適切。アウトカムやその見込みを参照する賃金決定システムのほうが納得感が強いのです。さきほどのAさんとBさんの例で言えば、Aさんのほうがアウトカムが優秀なのでAさんのほうが高い賃金をもらえて当たり前だということ。

  例えば、スーパーのレジ打ち。手際の悪い新入りの高校生と、神業のごとく商品と現金を捌くオバちゃんがいて、処理速度が1.5倍違うのに時給が50円しか違わなかったりするのはおかしな話です。他の例では、メーカーの試作室で普段は同じ製品を同じペースで作る、経験1年の派遣社員とその道20年のベテラン社員がいても、非常時にはベテランがその経験値をいかして指揮をとって解決に当たったりする期待がもてるので、賃金は2倍くらい違って妥当だったりします。

  賃金を考えるとき、第3者目線で見たときの納得感というのはとても大事です。そして、インプットを参照するよりもアウトカムを参照したほうが納得感は強い。「大変な仕事」「つらい仕事」のような苦労の量はインプットなので、賃金に反映されるべきではありません。大変だったりつらかったりして、応募者が少なくなって初めて労働力の需給バランスが崩れて賃金が上がるのです。大変だったりつらかったりしても、働く人が減らないならば賃金は変わりません。保育士はとても大変ですが、誰がやってもほとんどアウトカムが変わらないし、やる人が減らないから賃金は上がりません。でも、それでいいのです。「かわいそう」という感情は大して労働市場を動かしません。

■Responsibilityを上げていこう

  働き方改革が「アウトカムを評価する」という成果主義への転換である以上、「同一労働(インプット)、同一賃金」を訴えていては停滞で、「同一責任(アウトカム)、同一賃金」でこそ前進でしょう。言い換えるなら、responsibilityを避け続ける人は永遠に同一賃金に甘んじるしかありません。賃金を上げたければresponsibilityを上げにいきましょう


Yoshiyuki IZUTSU

https://linkedin.com/in/yizutsu/



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