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【自由研究】岡山 vs 仙台 : 第38節

ファジアーノ岡山は自動昇格をあきらめない。
第38節の振り返りです。

寸評

3-0。1万人越えの観客の前で、さらには地上波テレビ中継で見てくれたお茶の間のサポーターの前で、見事な勝利。ぼくたちが普段、スタジアムで見てきた、このチームのパワー・スピード・エネルギー・スピリッツ…そんなものを、いろんな人にお見せすることが出来たと思う。
たくさんご来場くださった高校生の皆さんにも、胸を打つ試合となったのではないかなと思っています。いかがだったでしょうか。

想いの詰まった、珠玉の3ゴール

もう、ぼくが改めて言葉にする必要はないかもしれませんが、この日決まった3つのゴールは、それぞれの想いの詰まったドラマチックなものであったろうと思っています。

40分、ステファン・ムーク。J2のベンチ入り外国人選手枠が4人であることから、5人の外国人選手がいるファジアーノではどうしても、ベンチ入りできない選手が1人発生してしまう。
そういう状況もあり、なかなかベンチ入りがかなわない中、めぐってきたスタメンのチャンス。そこで値千金すぎる先制ゴールを決めてくれる。ポテンシャルの高さもあるだろうし、試合に出られない中でもコツコツと、準備を重ねてきた賜物であろうと思う。いや~感動しました。

ステファン ムーク
――これまで外国籍選手枠の関係もあって、出番がない試合も続いた。悔しい気持ちもあったんだろうか?
選手として毎試合に出場したいのは普通のことだと思うから、そういうものは溜まっていた。特に外国籍選手の1人が必ず出られないという理由で試合に出られないのは難しい状況だと思う。だけど、こうやってチャンスが来たときに、今日はうまくチャンスをつかめたと思うし、残り4試合もチームにとって良いインパクトを与えられるようにしたい。

――チャンスが来たときに結果を出せることはすごいことだと思う。普段からどんなことを意識して準備をしているんだろうか?
試合に出ているときでも変わらず同じことをしっかりと続けること。練習では常に100%を出して、栄養のある物をしっかりと食べて、よく寝る。1番大事だと思うことは、自分のマインドのところ。ネガティブなところに目を向けるのではなくて、ポジティブなところに集中して目を向けるようにする。試合に出られない状況でも、日本という良い国にいるし、良いクラブに在籍できている。そういうポジティブなところに目を向けてやっていくことが大事だと思っているんだ。

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51分、佐野航大。世代別代表戦から帰ってきた岡山版令和の怪物津山の星。代表戦での疲労も少なからずあったであろうに、チーム復帰後初戦でいきなりスタメン、そしてゴールを決めちゃう。しかもこの日は彼の誕生日。あいつ半端ないって。そんなんできひんやん、普通。
彼のゴールに至るまでの、バイスからロングフィードと見せかけて雄大への縦パス⇒雄大から河野さんへの裏抜けパス⇒完全に河野さんが抜け出してクロス⇒永井さんが潰れ役になっての間接的なアシスト。この流れも実に秀逸。まさにチーム全体で心をつないだナイスゴール

佐野航大
――バースデーゴールおめでとう!
ありがとうございます!
――ゴールシーンを振り返って
GKとDFの間にスペースがあって、マッチアップした相手よりも少し前にいたと思ったので、ここでスピードを上げれば絶対にファーサイドでフリーになれると思っていました。諒祐さんからああいうボールが来るのは分かっていたんで、しっかりとスプリントして決められる位置に入れて良かったです。
――シュートを打つ前に永井君が目の前にいたけど
「スルー」って大きな声で言って、龍君が直前でパッとやめてくれたんで当てることだけを考えて打ちました。あんなゴロゴロのよく分からないゴールが入るっていうのは、持っているなって思いました(笑)

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93分、仙波大志。シュートは1回GKに止められるが、跳ね返りを押し込んでダメ押しの1点に。これがプロ初ゴールとのこと。かれの記念すべきゴールを岡山で決めてもらえて、光栄だしうれしい。
アウェー徳島のとき、期待に沿ったプレーができなかったと、彼は試合後コメントを残していた。彼が味わったであろう悔しさ、ふがいなさを思うと、どこかで必ず絶対やり返してほしいなと、個人的にはずーっと思っていた。それを見事にやり返してくれて、わたしゃもう溜飲が下がりまくりです。ほんとうにおめでとうございます!

仙波大志
――ナイスゴールだった
いや~ 良かったです、決められて。やっとです。
――得点シーンを振り返って
僕の頭に当たってGKが出てくるかなと思ったんですけど、出てこなくて。1発目で決めたかったんですけど、良いところにこぼれてきて押し込めてラッキーでした。
――泥臭い得点だった
1発目で決められればかっこよかったんですけど、ゴールはゴールなんで。結果を残すことができて良かったです。
――結果を残すまで苦しい時間もあったと思う。振り返ってどうだろうか?
やっぱり岡山のためにっていう気持ちと試合に出たい気持ちがゴールにつながったかなって思います。
――スタジアムもすごく盛り上がっていた
いや~ すごかったですね、1万千人。さすがですね。

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フォーメーションに関すること

この試合のスタメンは下記の通りでした。チアゴアウベス、河井さんがいないという、プチ非常事態だった。さあ、どんなフォーメーションになるのか。

試合前、予想フォーメーション

「ふふふ…DF4人登録で4バックのように見えるがこれはフェイクだ。実際には河野が右WB、徳元がCBに入る3-5-2だろう。もうお見通しやで!!」

正解

「ぶー!正解は永井がワントップの3-4-2-1でした!!!」

3-4-2-1と私(どうでもいい話)

むちゃくちゃ話題が逸れるが、3-4-2-1は私にとって心のよりどころともいうべき、愛着のあるフォーメーションだ。

いくつか理由はある。一つ目は、ファジアーノの試合観戦を始めた時のフォーメーションが3-4-2-1であったこと(バージョン:Fagiano 2012 Kageyama)。それもあって、3-4-2-1を基本形としてサッカーの何たるかを覚えてきた。

二つ目は、3-4-2-1戦術における各フィールドプレーヤーの役割や、仕掛けや、ギミックがそれぞれハッキリと分かりやすく感じること(個人の見解)。

・1トップ:ボールを納める。裏へ抜ける。
・2シャドー:1トップの収めたボールを拾う。ゴールに向かって走る。
・2ボランチ:フォーメーションのバランスをつかさどる。心臓部。
・2WB:走る。攻撃にも守備にも、ひたすら走る。
・3CB:屈強で頑丈な壁を作る。

3-4-2-1での役割(個人の見解)

これをやろうと思うと相当なハードワークが求められる(=ファジが代々受け継いできたフィロソフィーでもありますな)ので、とにかくみんながむしゃらに走っていた。がむしゃらに走るところは、見てる我々にわかりやすく感動を与えてくれた。そんなところも好き。

3つ目は、ほとんど戦術論的観点以外の理由。
3-4-2-1をマーカーを使って表すと、なんか戦闘機のシルエットにも見えるし、鳥が羽を拡げたような感じにも見える。フォーメーションの見た目が単純に、なんだかかっこよく見えたりしないか。

で、これが、ファジアーノの旧エンブレムに描かれている雉のシルエットにそっくりではないか?と昔から思っていた(個人の見解)。

う~ん、いうほど似てないかな・・・?

ファジアーノの試合を見始めたころで、まだサッカーの何たるかもな~んもわからんかったころ、「エンブレムの雉を象ってこのフォーメーションにしているのだ!」と、割と真面目に考えて(妄想して)いた。

※なお、3バックが最初に採用されたのは、2011年に加入・在籍したイリヤン・ストヤノフ選手の強みを生かすためであると聞いております。

上記のような理由から、3-4-2-1は私の中で、サッカーを勉強する上での基本形だと思っております。このベースを持ちつつ、有馬監督・木山監督の4バック戦術が私の脳内に持ち込まれました。私は興味津々で3バックとの違いを自己分析したりしていたものです。

ちなみに、難しい戦術うんぬんは置いといて、上記のようなフォーメーションの見た目がかっこいいのを見つけるとか、各地にある箱もの(スタジアム)が持っているそれぞれの個性の違いを分析するとか、ユニフォームデザインの歴史を振り返ってみるとか、スタグル大研究とか、マスコット大研究とか・・・。そういう、一見するとサッカー関係なさげな分野からサッカーに入っていくの、ぼくはぜんぜんアリだと思っています。そういう人の研究はもうめちゃめちゃ応援したい。やればできる

(以上、余談)

【可視化】岡山の「進軍」と「攻撃」(第38節)

この試合に関しては「進軍」と「攻撃」を可視化してみました。岡山の攻撃志向として「ゴールに向かってダイレクト」という思想があるような気がしており、どんな感じでゴールに向かっているのだろう?というのを集計してみたものになります。
なお、この稿での「進軍」「攻撃」は以下のような定義と考えています。
「進軍」: 自陣⇒相手陣内に進入した時のアクション。
・「攻撃」: 相手陣内で相手ゴール向きの矢印となるアクション。

※3-4-2-1への愛着を先ほど述べました。これと絡めて、過去の3-4-2-1戦術時との傾向の違いであったり、これまでの3-5-2との傾向の違いであったり・・・分析しちゃろーか!という考えもあったのですが、かなしいことに時間と体力が足りませんでした(仕事が忙しすぎるんじゃ~)。なのでとりあえず仙台戦のデータだけ掲載します。
むしろ、これをベンチマークにして今後の試合との比較とか、やるかもしれません。

可視化方法に関して

★ゲーム中に起こった、流れの中で「ボールを自分たち(岡山)で相手ゴール向きに動かしたプレー」をカウントします(自陣向きに戻したものはカウントしない)(ゴールキック、コーナーキック、スローインなどのセットプレーを除く)。

★カウント対象プレーについて、「ハーフウェイラインを超えて相手陣内にボールを入れたプレー(進軍)」と、「相手陣内で相手ゴールに向かってボールを進めたプレー(攻撃)」に分けてカウントします。

★カウント対象プレーについて、下記のどのカテゴリーに分類されるか私が判断し、当てはまると思ったカテゴリーに私の独断と偏見でカウントアップします。
・ロングフィード
・アーリークロス
・クロス
・くさび
・ワンタッチパス
・パスアンドゴー
・裏へのパス
・ドリブル
・インターセプト
・ボール奪取
・クリア
・サイド展開
・逆のサイドへ
・ふつうのパス(←上記のカテゴリーのどれとも解釈できないものはここへ)
なお、1つのプレーで2つ以上のカテゴリーに該当する場合(ロングフィードからワンタッチパス、ドリブルから裏へのパス、など)は、該当のカテゴリーそれぞれに1件ずつカウントしていきます。各プレーがどんなもんかは、下図をご覧ください。

集計対象として用意したカテゴリー別のプレー

カテゴリー別の発動回数

まずはカテゴリー別の各プレー発動回数。

自陣⇒相手陣(進軍)

▲「進軍」のプレーについては、ロングフィード(バイス殿に代表される)や、裏へのパスは多い。「ゴールに向かってダイレクト」の志向はこの辺に表れているような気がする。
しかし、ロングボールだけではなく、ドリブルで駆け上がったり、CBからサイドへ展開してサイド攻撃を起動しているケースもある。ロングボールだけが攻め筋というのは迂闊かもしれない。この試合でゴールにつながったシーンはどれもロングボールではなかった。

相手陣内(攻撃)

▲「攻撃」のプレーについては多彩だった。河野・徳元がクロスを打ち込むだけではなく、右サイドでの河野⇒雄大のコンビネーションプレーであったり、ムークがワンタッチで受けて徳元・佐野が裏に走りこんだり、輪笠が斜めにズドンとくさびを入れたり、本山や佐野がボールを奪ってドリブル移行したり。それらのプレーを間接的にアシストする永井さんのプレス・ポストプレーがあったり。。。ゴールに向かうトライは、実に多様な手段を用いているなあと思う。
後半のカウント数が少なめに見えるのは、2-0になって守りに入ったことも影響していそうです。

時間帯別の発動回数

時間帯別の進軍回数・攻撃回数をグラフ化してみました(青:進軍、オレンジ:攻撃)。グラフが密になっている時間帯は、相手陣内にボールを押し込めている時間帯であると考えてもよさそう。
なお、進軍がないのに攻撃していたりする箇所があるかもしれませんが、セットプレーなどで相手陣内にボールが入ったためである可能性が高いです(今回の集計ではセットプレーを除いているので)。

前半

▲前半。ゲームを動かすために積極的に進軍・攻撃を行っている印象です。実際の試合もこんな感じだったような気がします。○がついている時間はゴールが生まれた時間です(40分:ステファンムーク)。

後半

▲後半。グラフはおとなしめ(?)ですが、佐野のゴールが比較的早い時間帯に決まったこと・点差を縮めるために仙台の攻撃の圧が増したことなどが要因とみられます。93分に仙波がダメ押し。

考察

時間帯別のグラフなどからもうかがえるように、この試合では前半でワーッと敵陣にボールを押し込むことができました。後半立ち上がりに効果的な追加点をとったあとは、守勢に回る時間帯が増えたものの、隙をみて攻撃は繰り返している。
結構、思い描いた通りのゲーム展開になっていると思います。

目を引くのは、相手陣内での攻撃パターンの多彩さ。ファジアーノ史上でも群を抜く多彩さではないでしょうか。得点数の多さもこれに裏打ちされたものであるように思います。
一昔前はカウンターの下手さがあらゆるところで言及されていたのですが、今やそんな声は聞きませんし、そんなこと言われてたのも忘れていました。隔世の感があります。

そして、上記の数値がデューク、チアゴ、河井さん抜きでのものであるということも忘れてはなりません。彼ら3人は次節には戻ってくると想定されますが、彼らが入った時どんな違いが生まれるのか、それとも違いはないのか。また手の空いた時に分析してみようと思います。

さいごに

仕事忙しくて今週は書くのは断念しようかと思いましたが、頑張って書いてみました。つたない分析記事ですが、最後までお読みいただき、ありがとうございます。

いよいよ残り4試合。可能性ある限り、自動昇格を追い求めたい。岡山県内の熱も上がってきていると思います。われわれはひたすら謙虚に、でも自信は持って(過信はダメ)、1試合1試合ともに戦っていこうではありませんか。

できっこないを、やらなくちゃ。

(了)

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