UNESCOと世界の記録遺産

◆International Council on Archives Congress 2016◆

2016年9月7日
パートナーシップPart1

ICA総会2日目午前に聞いた発表を三連投。
ICA総会については以前のnote参照)

※基本的にはAbstractと発表スライドを参考にし、適宜リンクや補足情報を付与している。


[その1] ICAとユネスコ:文書遺産のためのグローバルなパートナーシップ

発表者は、オーストラリア国立公文書館のDavid FRICKER氏と、
UNESCOのBoyan RADOYKOV氏。

《ユネスコとアーカイブズの関わり》
Universal Declaration on Archives
 (日本語訳→世界アーカイブ宣言)

デジタル遺産を含む記録遺産の保護及びアクセスに関する勧告

IFAP(Information for All Programme)
[その2]で詳しく

世界の記憶
ICAとIFLA(International Federation of Library Associations:国際図書館連盟)が関わっている。

UNESCO PERSIST
古い形式やアクセスしづらい形式のデジタル文化遺産を相互に扱うための場を、アーカイブズや、図書館、その他の記録機関に提供することを目的とした、ICAとIFLAの『世界の記憶』プロジェクト協働事業。
(#unescopersist)

一つ一つ説明を書くときっと長くなるので今回はリンク付けに留める。

[その2] IFAP(みんなのための情報計画)―磁気テープの危機―『世界の記憶』との協働によるIFAP「情報の保護」部会のプロジェクト

発表者は、『世界の記憶』のための国際アドバイザリー委員会のDietrich SCHÜLLER氏。

《IFAPの6つの優先事項

[1] 発展のための情報
[2] 情報リテラシー
[3] 情報の保護
主に『世界の記憶』プログラムの基盤にある原則を強化することにより実現されることで、『世界の記憶』の対象を越えて、意思決定をくだす者や一般の大衆に警告する促進剤としての役割を果たす

[4] 情報における倫理
[5] 情報へのアクセシビリティ
[6] 多言語主義

《視聴覚データの保護》
◆視聴覚資料の危機
・安定性のない資料
・専用の再生機器の旧式化と入手困難性によって脅かされる機械可読文書(写真除く)
・再生=アクセスは、退廃を暗に示す
(フィルムはその可能性が高く、機械的な問題に左右され、磁気の寿命は短い)

問題は、歴史的な形式に対する修復、さらに新しいより良い再生機器の製作をするための初期の形式に関する十分な知識の低下

◆古典的な保存のパラダイム
アーカイブズ、ミュージアムは保管場所にある物体を保存してきた
・オリジナルの貯蔵庫
・複製品は有効な作業ツールであり、操作を最小限にすることでオリジナルの保護を間接的に手助けしている

視聴覚アーカイブはこの古典的保存のパラダイムに下記の二点に従う
・理想的な環境下で(二つの)手を加えないアーカイブのリーダーを保持する
・作業用の複製品によってのみ記録にアクセスする

◆パラダイムの変化
1989年5月のウィーンのユネスコ会議以降。
早かれ遅かれ、すべての装置は回復不可能なほど腐敗する→装置保存の最適化は最終的に無意味なものとなる
早かれ遅かれ、すべての装置の形式が古くなる。
形式が古くなると、予備の部品の生産や、操作できる状態の再生機器の使用可能性は消えてしまう。
作りの複雑さのゆえに、いったん製造が中止されると、新たに機器を創り出すことは不可能。
良好な状態の装置でさえ、使い物にならなくなる。

・・・・・・・・・

収集した材料不足でなんだかまとめられないので、要点が伝わるように、ユネスコのサイトに掲載された報告から発表者の言葉を引用する

「過去60年以上にわたって、多くの視聴覚ビデオ資料が生み出されてきて、今日、文化的、言語的多様性をもつ非常に重要なドキュメントを形作っている。操作可能な状況にある再生機器の現在における著しい消滅は必然的に、早い段階でデジタルリポジトリで保管されてこなかったあらゆるオリジナルドキュメントの消失をまねくことになる。」

視聴覚資料の保存の危機について、警笛を鳴らす!ということ。
世界のどこでも抱えている問題は共通している。

[その3]「国家の記憶」:その潜在的可能性を活かす

発表者は、アラブ首長国連邦の国立公文書館より、Majid AL MEHAIRI 氏。

主に次の二点を重きに置いた活動紹介
1. UAEの国家の記録を残していく
2. アーカイブズの積極的な利用を促す

Oral History Project
コミュニティの高齢者の個人的な経験や意見に基づいて集めた社会的、歴史的情報の記録と保存を行う。
目的は、インタビューを現在と未来の世代にアクセスできるようにすることで、UAE社会の慣習や、伝統、遺産、文化を保存することである。本プロジェクトは、国のアーカイブズを豊かにするために、歴史上の出来事と、古い暮らしに焦点をあてるように努めている。

The Watheq program
アブダビのメディアとUAEの郵便サービスも関わる、国立公文書館によって主導されるクリエイティブな協力体制。
すべての家庭に自身の個人的な文書を入れるアーカイブズ文書箱が提供され、市民には家族の生活や日々の経験を記録することと、生涯学習において記録の利用を取りまとめることが期待されている。

スマートフォンアプリ
最新のモバイル技術を利用することで、国立公文書館(国家の記録)がまさに国家の記憶であることを保証し、スマート機器を用いて全ての人が体系的かつ便利に使用できるようにしている。

・NA Apps Description
・Sheikh Zayed Audio Library App
・Diary of His Highness Sh. Khalifa bin Zayed Al Nahyan
・Diary of His Highness Sheikh Mohammed Bin Rashid
・Diary of General Sheikh Mohammed bin Zayed Al Nahyan
・Diary of His Highness Sheikh Hamdan Bin Mohammed

アーカイブズ教育
アーカイブズのアクセスを推進するために、国立公文書館は、教育カリキュラムの中でドキュメントを使用することを通して、国の歴史を肌で感じてもらえるように、教育関係省庁と幅広い協力関係をもっている。

・・・・・・・・・


特にアプリは今風だし面白い試みだなと。

ちなみに2020年のICA総会は、UAEのAbu Dhabiで開催される!


AY

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