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医療・介護業界がサカナクションのライブに見習うべき3つの理由

 サカナクションのライブがエモ過ぎた。10以上のアーティストのライブに行った中で、間違いなくダントツで面白かった。ライブ当日に文字にしたためると、間違いなく、エモい!面白い!楽しい!熱い!の連呼になると思われるので、落ち着いた翌日の今、医療との共通点を考えつつ、言語したいと思う。

 10/1に幕張メッセで行われた「SAKANAQUARIUM2017 10th ANNIVERSARY Arena Session 6.1ch Sound Around」に参戦してきた。普段、僕は、Aimer、澤野弘之らを聞くことが多いので、サカナクション神!という熱狂的信者ではない。にも関わらず、参戦した理由は、①サカナクションは「ライブがすごいバンド」ぶっちぎりの1位だから、絶対行ったほうがいいという友人のいざない、②日本最大のロックフェスであるRock in japan2017でサカナクションのエモさの垣間見るも、終電の都合で、苦渋の撤退を強いられたから、③Vo.山口一郎、そしてサカナクションへの興味である。


新しい音楽のあり方を模索するサカナクション

 ここでサカナクションの基本情報。サカナクションは2005年に北海道で結成されたロックバンドである。「アルクアラウンド」の独創的なPVが注目され、一躍メジャーなロックバンドに。その後、「夜の踊り子」「ミュージック」「アイデンティティ」「新宝島」「多分、風」など様々な曲を世に送り出している。

 近年は、音楽のリリースにとどまらず、音楽の新しい可能性、タイアップソング以外での企業とのつながりに着目し、パリコレのサウンドディレクションを担当したり、au×HAKUTO moon challengeのアンバサダーを担当したり、「Origami Pay」の決済サウンドを手掛けたりしている。音楽の新しい可能性については、山口一郎さんがスプツニ子さん、初音ミクを生み出した伊藤博之さんとともにG1サミットに登壇された際の動画をぜひご覧いただきたい。小池百合子氏風に言うと、サカナクションは、音楽をアウフヘーベンしているのだ。


さて、本題である。サカナクションのライブのエモさを言語化しよう。

①飽きさせる時間がない

 サカナクションのライブは総合演出力が素晴らしい。スタートからアンコールまで途切れることのない音楽、踊れる空間演出、511本のLEDを使った多彩な照明、光る衣装、常に飽きさせない映像、242個のスピーカーによる6.1chサラウンドによる立体的な音響など五感すべてに訴える演出。まさに体験型のライブと言える。

 最も驚きだったは、映像スクリーンでアーティストが見えないことである。近年は、アーティストのアイドル化が著しい。「音楽を聴きに行く」のではなく、そのアーティストに会いに行くのがライブである。だからこそアーティストのプライベートが気になる、興味が人に行くわけだ。ただ、サカナクションは非常に職人気質で、アイドル化するタイプのミュージシャンではない。そのため、いかにして音楽を、アートを見せるかが重要とVo.山口さんは語る。サカナクションのライブでは、アーティスト本人を見せずに影だけを投影させたり、アーティストが隠れるようにスクリーンを置いてイメージ画像を流したりする。アーティスト本人を見せるだけでなく、1秒たりとも観客が飽きないように五感すべてに訴えかけ、アーティストを使ったアート作品を作っているのだ。


 SNS全盛期の情報社会において、現代人は一瞬の隙でも耐えられない。暇があればすぐTwitterやInstagramを見ないと落ち着かない。見せる時間すべてで満足感を得られるような音楽、映像を繰り出さなければならないのだ。その点では、昨年ヒットした「君の名は。」は1分たりとも退屈しなかった。そして、サカナクションのライブはまさに観客が飽きることが1秒もない作品である。

 関わる時間すべてで満足感を得るようにすることは医療においても重要ではないだろうか。医療・介護業界ほど、時間に対する価値を考えない業界はない。医師は夜中の勤務時間以外でも平気で呼び出されるし、患者・利用者は外来、入院の待ち時間は恐ろしいほど暇である。時間を奪うということに対価を支払うという概念がないのだ。
 医療・介護に関わっている時間、すべてに価値を与え、エンターテイメント化する。まるでサカナクションのライブのように。例えば、外来時間にRPGを進めていくうちに大腸がん検診ができている「うんコレ」をしてもらう、入院時間にiPadを配り、健康教育用のゲームをすればインセンティブを与えられる。入院時に星空を観れる星空プロジェクトや病院内の図書館を解放しストーリーを共有するまちライブラリーを行う、おしゃれな銭湯を介護施設に実装する、介護施設祭・病院祭を行うなど、より企業や地域に病院を解放し、患者に隙間時間を作らせないほど、飽きさせないコンテンツによるエンターテイメント化を行っていくべきではないだろうか。これは日常生活でも同じであり、飽きさせないコンテンツであれば、日常の隙間時間に医療や介護が入っていくはずである。


②常に観客の楽しさを最優先

 Vo.山口一郎さんは、常に観客に問いかける。

「楽しく踊ってる?」

 スタートからアンコールまで途切れることのない音楽、踊れる空間演出、511本のLEDを使った多彩な照明、光る衣装、常に飽きさせない映像、242個のスピーカーによる6.1chサラウンドによる立体的な音響など五感すべてに訴える演出。そして、観客が参加することで完成するアートでもある。これらはすべて観客が楽しめることを最優先に考えた結果だ。

 先日、VRで認知症患者の追体験をする「VR認知症」手がける下河原さんにコンテンツの作り方のコツを伺ったところ、「楽しい」「美味しい」「おしゃれ」は確実に抑えるべしとのお言葉をいただいた。医療・介護にこの要素はほぼない。入院生活は暇な時間が多く、「楽しい」からはかけ離れた「退屈さ」であるし、「美味しいですね」という言葉をほとんどいただいたことがない病院食・介護食。そして、おしゃれな要素はない入院着、白衣。もちろん、適切な医療を提供することが最も優先されるべきであるが、楽しい、美味しい、おしゃれな要素がなければ、人は集まらない。地域包括ケアの推進が叫ばれる中、住民を巻き込んだ勉強会やフォーラムを企画される方も多いのではないだろうか。どこを見ても、意識の高い住民しか来れないような硬めの会が多い。ここは、サカナクションのライブを見習って、「楽しい」「おしゃれ」なイベントを心がけてはいかがだろうか。

写真は下河原さんの介護施設「銀木犀の様子」まさに楽しい、美味しい、おしゃれな施設です。


③感謝を言語化して伝える大切さ

 3つ目は、感謝の言葉を具現化する大切さである。

 一般的なライブの場合、アンコール曲が終わった後、アーティストが観客に礼をして、観客が最大限の拍手をアーティストに送る中、終了する。サカナクションのライブの場合、映画のクレジットのように、サカナクションメンバー以外のスタッフ(彼らはチームサカナクションと表現する)の名前が流れる。スタッフを労うかのように、観客の温かい拍手の中、サカナクションのライブは終了した。


 日の目を浴びないことが前提の裏方スタッフ。彼らはそれを分かった上で仕事をしているはず。ただやはり感謝されることは嬉しいだろう。医療においても、人を救うのが当たり前な職業ではあるが、兵庫県立柏原病院の小児科を守る会のように、医師への感謝を表現することで、医療側のモチベーションも好転し、地域の医療が良い方向へ変わっていくこともある。医療・介護側、患者・利用者側、双方がお互いに感謝を言葉にする場を設けることで、より良い地域医療になっていくではないだろうか。

 医療・介護とは、一見、関係ないように見えるサカナクションのライブ。でも少し離れた分野だからこそ参考にする部分も多いのではないだろうか。あなたも少し違った角度から、自分の業界を見つめてみませんか?

とりあえず、僕はもう一度サカナクションのライブに行きます(笑)

 

 

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