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展示会への出展効果を高めるバリューチェーンの視点

サマリー

展示会への出展の話です。

展示会にブースを出展し売り込む相手は、来場者だけではありません。
同じ展示会に出展している企業や団体はコンペチターではなく、「協業「コラボ」等でビジネスパートナーとなり得る顧客です。

また、展示会が主催するセミナーに申し込みましょう。ほとんどの展示会では、ブースを出展すると、かなりお得に会場でのセミナーを開催するプログラムに参加することが可能になります。

展示会の出展費用は決して安くはありませんので、ブースで来場者を待つだけでなく、積極的に他社とのコミュニケーションを図り、自ら仕掛けていくことで、場を最大限に活用し、ビジネスの機会創出に繋げましょう。

はじめに

5,6年前になりますが、前職では、長く展示会でのプロモーションをプロデュースをしていました。

この頃に仕事で縁をいただいた方には、「展示会でブースを出している人」という印象が強いと思います。

展示会にブースを出すのは結構大変です。

「展示会調査→出展契約→ブース企画→コンテンツ制作→ブース運用→アフターフォロー」の一連の作業は言うまでもなく、企画・制作の社内調整や段階ごとの社内承認など、一旦プロジェクトが始まると、数ヶ月は掛かりきりになります。

また、展示会にブースを出すためには、相応の費用が必要です。決して安くはありませんので、展示会に、それだけの労力と予算を費やし、費用対効果を得られるのだろうか、不安になる方も多いのですが、出展の目的とそれに応じたやり方さえ間違えなければ、想定以上の成果を得ることも可能です。

展示会や見本市などにブースを出す意義は、訴求したい製品・サービス・ブランドに対し、何を求めるかによって異なりますので、来場者と出展他社の特性を理解した上で、目的と目標をしっかり定め、出品に満足しただけで終わらないようにしなければなりません。

ブース設営監査中の筆者

来場者を知る(縦の関係)

まずは、来場者の特性を把握しましょう。

展示会に来る来場者は、展示会のテーマに何らかの関係のある企業や業界に属しているだけでなく、宿泊費や交通費と時間を使って、わざわざ足を運んできますので、すでに強い興味を持っています。
(顧客の興味の度合いが高いことを業界では「ホット」と言います)

また、展示会には、ネット検索やWeb経由のでコンタクトと本質的に異なる点があります。

それは、偶発的な出会い(セレンディプティ)です。

顧客の興味が顕在化している場合は、すでに自らネットで情報を得るなどしているのが自然で、展示会には、実物を見たい等のより能動的な動機付けで来場してきます。

しかし、顧客自身もまだ気づいていない潜在的な部分については、情報に接触し、コミュニケーションを図る場がなければ、アイデアのひらめきが起きず、ビジネスの機会に気づかないままです。

身近な例では、本屋での体験です。

いくらAmazonが便利でも、知らない本は探せません。本屋には、面白そうな本に偶然出会うという、本屋ならでは良さと楽しみが依然としてあります。

つまり、展示会は、ホットな顧客だけでなく、まだ見ぬ潜在顧客との人脈関係(リレーション)を構築するまたとない機会なのです。

そして、これらの来場者に対し、ブースを用いて下記のプロモーションを効果的に図ることが可能となります。

・市場認知度の向上
・見込み客の獲得
・商談獲得

言わば、マーケティングのウォーターフォールの縦の関係を構築していくことになります。

さらに、Face to Faceのコミュニケーションにより、顧客である来場者から思わぬ「情報」を得ることもあります。

出展他社も重要な顧客(横の関係)

さらに注視すべきは、出展他社です。

自社の出展に準備に追われてしまいがちですが、出展企業一覧やフロアマップを必ず見てください。

そこに掲載されてあるのは、「業界のバリューチェーンを支えるサプライチェーンを構成している多様な企業」であることに気づきます。

例えば、あなたが商品の卸売の業者で、直接の顧客が小売の場合は、同じ会場に、関連商品の企業や自治体・流通商社・越境などのビジネスサポート関連・業界メディアなどの名があるはずです。

共通の顧客が小売であった場合に、どう売り込むかを一緒に共創するパートナーになり得ませんか?

言わば、横の関係です。

また、彼らは自社とは別の観点の情報を多く持っていますので、「情報交換」の関係だけでも、リレーションを構築する意義は大きいと言えます。

展示会に出展する際には、自社ブースの来客対応の人員とは別に、他社を回る「遊軍」を設け、積極的にコミュニケーションを図るようにしましょう。

展示会の出展に慣れている企業は、必ず、他社ブースも丹念に回っています。

セミナープログラムへの参加

ブースの出展と合わせ、セミナーのプログラムに申し込みましょう。

ほとんどの展示会では、ブースを出展すると、かなりお得に会場でのセミナーを開催するプログラムに参加することが可能になります。

より関心の高い顧客をまとめて集客可能で、顧客情報も得ることが可能です。(個人情報の取り扱いは展示会主催者によって異なります)

展示会主催者が、来場事前登録者と過去の来場者にDMで周知するなど、事前プロモーションも盛んに講じていただけますので、出展効果をより感じられます。

さらに、セミナーで用いるプレゼンテーション資料をWebsiteへ転用するなど、自社コンテンツの質と量と総合的に高めることができます。(逆もまた良しです)

ご参考:展示会の例

ご参考までに、雑貨の卸売の展示会として有名な「第94回東京インターナショナル・ギフト・ショー秋2022」の来場者数と出展者はこのようになります。

来場者数 約13万人
出展者数 約1300社
会期   3日

10万人のユニークユーザーにWebサイトで訴求しようとすると、大手企業で1ヶ月、中小企業で10ヶ月ほどかかる人数です。展示会は、それをたった3日でPRできるポテンシャルを秘めていることになります。

さらに、業界のバリューチェーンを構築している出展社の1000社を一気にリサーチし、リレーションを作る機会を得ることができます。

余談

マーケティングの勉強で「バリューチェーン」について学びますが、実際、何に役立つのかピンと来ないと思います。

実際、私もインターネットで閉じた範囲でのプロモーションに従事していた時は、知識として理解していれば良いと軽く扱ってきましたが、展示会に深く関わってから見方が変わりました。

バリューチェーンとそれを支えるサプライチェーンを理解することは、ビジネスをよりスケールさせる上で、欠かせない視点なのです。

以上、長文にお付き合いいただきありがとうございました。

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