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労働者派遣における実労働時間管理と賃金と派遣料金の支払いの関係

労働者派遣における実労働時間の把握責任等は次のとおりです。

派遣先は、派遣元事業主の事業場で締結される労働基準法第36条第1項の時間外及び休日の労働に関する協定の内容等派遣労働者の労働時間の枠組みについて派遣元事業主に情報提供を求める等により、派遣元事業主との連絡調整を的確に行うこと。また、労働者派遣法第42条第1項及び第3項において、派遣先は派遣先管理台帳に派遣就業をした日ごとの始業及び終業時刻並びに休憩時間等を記載し、これを派遣元事業主に通知しなければならないとされており、派遣先は、適正に把握した実際の労働時間等について、派遣元事業主に正確に情報提供すること。

派遣先が講ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第138号)の11

派遣元事業主は、派遣先を定期的に巡回すること等により、派遣労働者の就業の状況が労働者派遣契約の定めに反していないことの確認等を行うとともに、派遣労働者の適正な派遣就業の確保のために、きめ細かな情報提供を行う等により、派遣先との連絡調整を的確に行うこと。特に、労働基準法第 36 条第1項の時間外及び休日の労働に関する協定の内容等派遣労働者の労働時間の枠組みについては、情報提供を行う等により、派遣先との連絡調整を的確に行うこと。なお、同項の協定の締結に当たり、労働者の過半数を代表する者の選出を行う場合には、労働基準法施行規則(昭和 22 年厚生省令第 23 号)第6条の2の規定に基づき、適正に行うこと。また、派遣元事業主は、割増賃金等の計算に当たり、その雇用する派遣労働者の実際の労働時間等について、派遣先に情報提供を求めること。

派遣元が講ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第137号)の5

これに基づけば、タイトルの問題は次のように整理されます。

イ)派遣労働者の実労働時間の把握は派遣先のみがその責任負っている。

ロ)つまり、派遣元は派遣先から提供された実労働時間情報に基づき計算を行い賃金を支払えばよい。

ハ)一方、派遣先から派遣元への派遣料金の支払いの根拠となる時間は、必ずしも分単位で支払わなければならない訳ではなく、労働者派遣契約(派遣元と派遣先との企業間契約)の取り決めによるので、法的な縛りはなく原則、自由。

二)派遣元が、派遣先から、分単位ではなく端数切捨ての実労働時間情報のみを受けているのであれば、端数を切捨てた上でそれを実労働時間であるとして情報提供を行ったのは派遣先であるから、派遣元は基本的に未払い賃金の問題(労基法第11条、24条違反)について事実上免責される。但し、派遣先のみにその原因が認められる場合に限る。
※後に派遣先から実労働時間情報の修正が為されれば、派遣元はこれに基づいて再計算して派遣労働者への賃金支払いを過不足調整すればよい。

ホ)一方、派遣料金請求のための端数切捨て後の時間情報(派遣料金請求情報)と、切捨て前の実労働時間情報の2種類が派遣先から派遣元に情報提供されている場合には、端数切捨てを行ったのは派遣元という事になる。

ヘ)即ち、派遣元の立場としては派遣料金の支払いルールを実労働時間に合わせるか、派遣先が端数切捨ての有効性について責任を負うとの事であれば、切捨て前の労働時間情報を貰わないという、いずれかの対応が考えられる。

ト)尚、派遣元が派遣労働者から労働時間の端数処理について苦情申し入れを受けた場合には、派遣元は派遣先と協議連携して、事実確認及び改善のための働きかけを派遣先に対して行う必要がある。(派遣元指針3.適切な苦情処理)


以上、イ)~ト)の説明を図示すると次のようになります。

派遣労働者等が労働時間の端数切捨てを不服として申入れを行う場合、この法的関係性を理解しておらず、派遣元事業主のみに責任があるとしてくる事がほとんどです。

ご参考ください。

        〔三浦 裕樹〕

Ⓒ Yodogawa Labor Management Society


社会保険労務士法人 淀川労務協会



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