見出し画像

向ヶ丘遊園駅前「白いハコ」駅前本棚でお店番/2024.2.18

白いハコとは?駅前本棚とは?

2月18日(日)10:00−15:00 晴れ
向ヶ丘遊園駅前の複合ビルGinza Forest内「白いハコ」の「駅前本棚」という一箱単位での棚貸しの本棚を月極めで借りています。
その「棚主」は月に一度本棚前のスペースで予約した時間で「お店番」ができます。お店番は、その時間何もせずに読書をしてもいいし、自分の作品を販売してもいいし、何か小さなイベントを開催してもいい。昨年4月に棚を借りてから今回初めてお店番を行いました。

本棚会員になって、「お店番」という仕組みができると聞いたときから、お店番をやる時には何か自分の読んできた本や、学んできたことに関連することをやってみたいと思っておりました。
ただ、具体的なアイデアはなく、また昨年は色々忙しくお店番をする機会もなかったのですが、お店番よりも先に、12月に多摩区100人カイギに登壇する機会をいただきました。そこで自分の「住民本屋」の活動を振り返り、どうしてあの活動がやりたかったかとか、やってみてどう感じているのかを整理したところ、政治にまつわるお話をもっと気楽にできたらいいなという思いがあったことに気づきました。

本棚メンバームラケンさんと実験の民主主義

ちょうどそれと前後して本棚メンバーのムラケンさんが、宇野重規さんの『実験の民主主義』という新書を棚に置いておられました。

私も宇野さんの本は何冊か読んでいたのにまだこれは読んでなかったなーと思い、手に取ったところ、自分が「住民本屋」でやっていること、感じていることがそこに書かれていて、すぐに自分でも購入して読みました。

プラグマティズムと我がまちのつながり

『実験の民主主義』は主に宇野先生のご専門であるフランスの思想家アレクシ・ド・トクヴィルの「アメリカのデモクラシー」という著作と「プラグマティズム」という考え方を現代に適用できないかということを編集者の若林恵さんと対話しながら論を進めていく本です。プラグマティズムは日本語に訳すと「実験主義」とか訳される哲学の考え方です。建国からしばらく経った時代のアメリカ哲学界で生まれた考え方です。理念とかも重要だけど、最初から決めつけすぎず、アイデアがあるならまずはやってみよう、実践してみよう、やってみた上で一緒に実践した人たちの中で共感したこと、考えたことが、今とりあえずの真理だねと決定するやり方、とでも言いましょうか。当時のアメリカは新しい国家を作るにあたって、南北戦争で皆が疲弊していたこともあり、普遍の真理とかを決めてから動き出すより、走りながら、やりながら、暫定的な真理を捉えていく方が合っていたのでしょう。日本でも福沢諭吉がこの考え方に共鳴していました。
その感じが最近の登戸・遊園での私たちの活動によく似ている気がしたのです。再開発で空き地だけはある頃から「さて、ここで何をするか」「何ができるか」「どうやって形にするか」を考えてきました。その未整備・未開拓な時に、このプラグマティズムという考え方がしっくりきたのです。ざっと考えてみて、アイデアをとりあえずの形にしてみる。走りながら考える。出来た形がひとまずの正解。あとで振り返って、改善の方法や、違うやり方も探す。次に活かす。その繰り返し。全ては実験です。
私自身が感じている「プラグマティズム」と今の登戸・遊園のつながり。せっかくならそれを本棚メンバーの皆さんにはお話ししてみたい。
いきなり大きな話ですが、日本の民主主義の実践も、現在これといったやり方の王道はなく、むしろ未開拓な状態だと思っています。戦後は経済優先で来てしまい、コミュニティは割と崩壊状態。血縁関係も近所にご親族がいる家は少ない。会社が共同体の代替物だった時代は終わった。このように共同体を作る受け皿が殆どなくなってしまった。金の切れ目が縁の切れ目。これでは政治的な議論どころではありません。
ただ、こういったお話をいきなりするのは、ちょっとテンションが高すぎるというか、意識高すぎるというか、意識高すぎて偏って話す人と一般的な高さで聞く人の意識の落差で伝わる話も伝わらなくなる。
なので、少し助走が必要だなと思っていました。

西洋政治思想史

そんな時に、もう一冊の本と出会います。同じく宇野重規さんの『西洋政治思想史』(有斐閣)です。有斐閣という出版社は、法律の教科書や判例評釈、政治学・経済学の教科書をたくさん出しているその筋では有名な老舗出版社です。これはその有斐閣アルマという大学教養過程レベルの教科書シリーズの一冊です。「アルマなら大丈夫そうだな」という期待を込めて買ったのですが、200ページくらいの中に、紀元前8世紀から現代までがコンパクトにまとめておられて、とてもいい本だなと思いました。
要するに最近自分には宇野重規先生ブームが来ているのです。これはこれで「知らんがな」にもなりかねないのですが、でもこちらをベースに話して昔を振り返るという「助走」をしてからの方がいいかもしれないとも思いました。

本棚メンバーneneさんからお話会を頼まれる

このタイミングで同じく本棚メンバーのneneさんから声がけいただきます。100人カイギには欠席して話を聞けなかったし、何かカクヤマのお話会をやってほしいと。

ネネさんからはテレビの「しくじり先生」的な感じでやったらどうか、というアイデアをもらったのですが、そこで人間の歴史の一部をざっと2時間くらいで話すという大まかなイメージが湧きました。
テーマは「西洋政治思想史2500年分を2時間で語る」です。ネネさんに聞き手になってもらい、当日来てくれた方にも話が見えやすくなるように、スライドは用意したい。なんなら年表を作って、そこに書き込みしてもらって、各自のメモ帳がわりにすればいいのでは?とか。
あとは、コツコツ参考書を読みながら、年表を作り、その中で話したいことを古いところから順番にピックしてスライドを作っていき、出てくる人物の肖像画をネットで探して貼り付けていき、、、ということを当日まで行っていました。

さて、お店番当日。

10時にオープンしたお店番ですが、早速お一人本棚メンバー石川さんのご友人という方がフラッと立ち寄ってくださいました。その方は以前登戸駅前「住民本屋」でもきてくださった狛江の方でした。ご本人は学生時代NHKの教育テレビのドラマ班でアルバイトをしていたご経験をお持ちで、それが高じてテレビドラマの脚本のコレクターをされています。色々と当時のNHKの局内の話とか、NHKのドラマ話、人形劇の話を聞かせてもらいました。

約束の13時が近くなってきて、事前に声がけしたメンバーが集まってきます。今回は初回なので、自分も上手くできるか分からず、比較的気心の知れた方々に集まっていただきました。
自分の荒削りな議論も、それを補うようにネネさんが適切な質問をしてくださいました。ムラケンさん曰く二人のやっているのは「対話」ではなく「共話」だということです。
共話というのは、日本のとある研究者の方が仰っている概念なのですが、一方の人が「○○とは・・・」と言った時に相手の人が「・・・だよね」と、相手が次に言うこと、言いそうなことを言って話の接穂(つぎほ)を繋げていくやり方だそうです。やっている最中は自分の話すことに少し集中していたため、どういう会話だったかよく覚えていないのですが、そういう話の仕方をしていたようです。
そのようなやり取りになったからか、参加してくれた方から、わかりやすかったとかのフィードバックをいただきました。プロジェクター代をみなさんで負担していただきました。ありがとうございます。参加者のスミさんからはお疲れ様のメロンパンもいただいたり。
今回は、結局2時間では全体が終わらず、大体半分くらいが消化できた形です。そのため、次回3月23日(土)に今回の続きをやりたいと思います。

ぼんやりと頭の中でやってみたいことがあった時、それを出す機会を誰かからもらうのは有難いことです。そして、出すことになると、頭の中だけで考えたものとは違ったものになることもあるのですが、それは具体的な相手やシチュエーションに合わせて、修正が入るからだと思います。そうやって出してみることで「あ、自分はこういうふうにやりたかったのだな」と後追いで理解したり、その意味をあとから理解したりすることがあります。これぞまさしくプラグマティズム的な発想かもしれません。

何かの発表をした時に、適切な質問をしてくれると池上彰さんのように「いい質問ですね」という言葉がスルッと自然に出てくるのは我ながら新鮮でした。誰でも同じシチュエーションになったら自然に出ると思います。
発表はその後の聞き手の反応も含めて発表者にとっての学びが多いなと感じました。少しずつでも続けていければと考えています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?