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生徒あるある③「先生の横に座っていいの?」

私は高校で授業をする際に生徒との関係作りにとても気を遣ってきました。生徒は正直です。嫌いな先生、信頼できない大人だと判断すると心のシャッターを下ろしてしまします。そうならないように、授業で約束したことは守る、生徒の話はちゃんと聞くということを心がけています。また、生徒のご機嫌取りをしないことが生徒との信頼関係を築くコツでもあります。

さて、今日は前任校での話。現任校とは違い、生徒の学力はさほど高くなく、中学校時代は英語で苦しんだ経験のある生徒がほとんどでした。

ある日、1年生のクラスでのこと。一部の生徒たちが全く私の話を聞かず、指示にも従わないので、「教卓の横に座ってもらいます。私の横で勉強して下さい」と言いました。私の厳しい表情と声色に少し状況を察してくれた生徒たちは静かにしてくれました。よかった、と思った次の瞬間、別の生徒から「えっ、先生の横に座って勉強していいの?」と聞かれたので、思わず私も「えっ?」と返答しそうになりました。そう聞いてきたのは、真面目で私の話をよく聞いて、授業以外でも私に話しかけてくれる生徒たちでした。

そもそも、教卓の横に生徒がいると授業はやりづらいものです。それでもそこに座りなさいと言ったのは、うるさい生徒たちを黙らせ、授業に集中させるための苦肉の策です。真面目な生徒たちが座る席ではないはず。

さて、皆さんならそんな生徒たちになんと返事をしますか?「あなたたちの座る席ではない」か「いいよ、座っても」か、はたまた「なんで座りたいの?」と聞き返すか?

私は理由を尋ねました。そして「いいよ」と即答しました。

嬉しそうに、移動して私の横に座りました。

彼女たちが私のそばに座りたかった理由は、質問がしやすいからということです。そして、私の横は、なんとなく安心できるのだそうです。構って欲しいという気持ちが見え隠れしますね。

「特等席」に座った彼女らは今まで以上に集中して取り組んでいましたし、黒板の前で真面目に授業を受けている姿がどうしても他の生徒の目に入るわけで、それなりに刺激になったようです。クラスの学習雰囲気も幾分よくなった気がしました。結局、冬休みに入るまで「特等席」で授業を受けていました。

彼女たちのことを思い出すと、少し胸がキュンとします。このクラス、誰一人英語が得意ではありませんでした。中学校時代は英語で苦しんだ思い出しかないそうです。

それでも半数の生徒は真面目に私の授業に参加し、数名は楽しいと言ってくれました。英語が好きではないけど、ただ私と話をするのが楽しかった、授業も嫌じゃなかったそうです。

私は常々、安心して授業を受けてもらう、楽しくやる気になってもらえる授業を心がけています。対面ではもちろん、オンラインの講座についても同じです。オンラインでの生徒さんも増えてきましたが、英語とは関係のない、何気ない日常の出来事に話が弾みます。

リラックスして安心できる、心地よい環境で学ぶということは、何においても大事だと思います。昨年のこの出来事をふと思い出し、“この先生となら大丈夫”と思われる講師になりたいとあらためて思った次第です。


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