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御社の"社会的価値"は何ですか?

前回前々回と「企業の戦略を構築する」上で、私が大切だと思っていることについて記させていただきました。
 ①日本人の美意識、日本文化を考えること
 ②時間と空間のリズムを切り口に考えること

の2点です。
今回は次の視点、3番めに注力していることについて記載したいと思います。「社会的価値を徹底的に考える」です。

自社利益で満足ですか。

多くの企業様とご一緒しながら、昨今痛切に感じているのですが、これまで長く続いてきた従来の「一社で利益を上げ、自社や株主の利益を上げる」というアプローチでは、市場や顧客・生活者のニーズから乖離してしまっているのかもしれません。これは産業革命モデル(オペレーションと改善)によってマーケットシェアを奪い合う、つまりはPDCAによる効率化を目指す直線的モデルでは、計画してから結論がでるまでに、ニーズが変わってしまうくらい時間がかかってしまうからでしょう。

今や、リーンスタートアップ(構築・計測・学習を繰り返しコストをかけず顧客に価値ある商品やサービスを提供する起業の手法)など、アジャイルなアプローチや試行錯誤的なプロセスが重要になっています。結果として従来的なPDCAに基づく領域は、今後ロボットとAIによる代替とっていくに違いありません。

そんな中、この課題解決に必要な要素として「自分の会社はどうありたいか。さらに自分ゴトで考える。会社と社会との関係を考える」ことがKeyになるのではなるのではないでしょうか。弊社がクライアントにご提供させていただいている「ビジョン思考(センスメイキング理論)」、つまり"自分ゴトで考えながら社会的価値を内包させていく(自社だけでなく社会的目的を追求する)"という手法は、実はここにこだわっています。そこで、こういった課題に対してご自身(もしくは会社内において)で解決策を見出せるヒントとなるのではと思い、今回のnoteでは少しだけご説明したいかな、と思った次第です。

さて、まずは一社ではなく目的を同一に共感する事例についてです。その時に必要になる"エコシステム"について考えてみましょう。

日本最大のイノベーション・エコシステム

3月16日の日経新聞朝刊に、
「イノベーションの新拠点 仙台に - 世界最古水準の「次世代放射光拠点」2023年度稼働 -」というPR記事が掲載されました。

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この構想は、単に市場に商品をどう導入するとか、売上を増やすためのアイデアや洞察とは異なります。

このプロジェクトへの参加は"量子科学技術研究開発機構"、地域パートナーとして"一般財団法人  光科学イノベーションセンター"、"宮城県仙台市"、東北大学、東北経済連合会、中外製薬、旭化成、大同特殊鋼など100社等、多様な分野(感染症対策、グリーンイノベーション、マテリアル革新力)で社会課題に解決し貢献することを目的にしています。

光科学イノベーションセンターの理事長である高田昌樹氏は、インタビューで以下のように語っていました。

「例えば放射光の研究者と企業がコアリションを組み、企業が出すニーズに研究所がシーズで応え、それに対して企業がまた新しいニーズを発想し、研究者が次のシーズを生むという好循環を生み出す・・・」

今までの"オープンイノベーション1.0"では「一企業の利益の為のイノベーション」であったが、今回の"オープンイノベーション2.0"では「市民や顧客も主体の一つとして、社会や地域にインパクトを生み出す社会的イノベーション」に広げています。これは究極的には社会を変えて、新しいエコシステム(生態系)を形成する力です。

モノを作って売るという単純な構造や市場の見方をではないのです。この発想はモノ視点とは異なり、価値は物理的空間ではなく、社会システムとして提供するという発想になっていると私は思います。

Amazonが考えるプラットフォーム

次にAmazonが提示した「プラットフォーム」は、一種のエコシステムです。

彼らが従来の小売り業であるイトーヨーカ堂やイオングループと全く異なるのは、構想力の差(未来を見据える力の差、オープンかクローズ)発想力や戦略視点の差ではないでしょうか。

参考:
日本の小売り業が自社の売上と利益のモデルでDXを活用する会社と
Amazonのように、エコシステムで社会全体を考えるのは構想力の差になります。API経済圏(Application Programming Interface)をつくる。IT、物流、コンテンツ、広告などのあらゆるビジネスモデルを再構築する。

①一般消費者ユーザー > Amazon・プライム・アレクサ・エコシステム
②出版エコシステム > AWS(Amazon・webサービス)クラウド・ビジネス・エコシステム
③エコシステム同士が繋がる > プログラマー同士が繋がるAPIエコノミー

 私は、Amazonのビジネスモデルを以下のように捉えています。

「目先の利益よりも品揃えとサービス向上と低価格」
「テクノロジーを駆使したイノベーション重視」
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①マーケットプレイスの出品者を増やす。
②消費者は膨大な商品数からセレクトできる。
③Amazon物流網で出品者が増えるほど物流コストは、低減する。
④インフラシステムが成長する。
⑤AWS 関連企業の情報システムコストが低減
⑥起業が簡単になる
⑦マーケットプレイスを通して企業拡大

Amazonのエコシステム(プラットフォーム)は、一社だけ一業界だけでなく、社会全体のエコシステムを構築しながら、新しい産業を引き起こす循環させるモデル構築でした。
しかし日本の小売り業の対応は、Amazonに競争戦略で対応しようとしたわけで、未来を創造する構想力との違いは、大きいと感じます。

本日のまとめ

社会的価値を考慮した企業活動が、Z世代を中心に企業は問われています。
しかしこれはZ世代だけてはなく「フロネシス(*)=実践知(賢慮)に基づく経営」があったと、野中郁次郎先生は、論じています。

2025年に世界の労働人口の半数を超えるミレニアル世代やZ世代は、働く楽しさや社会に役立つ視点を重視していることを、まず私たちは捉えなければならないでしょう。エコシステム社会的価値を重視する背景は、皆さんも納得いくところではないでしょうか。

 経営:株主利益の最大化 → SDGs・ESG投資
 組織:トップダウン → フラットで自律分散
 商材:アナログ → デジタル
 思考:ロジカル → クリエイティブ

指摘させていただいたように経営の考え方は、大きく変化しています。これらを私なりに4つの視点でまとめてみました。

①社会課題解決 >> 共創になっているか否か
・同じ世界観を持つ企業と組み、自社だけで出来ない価値を生み出したい。
②ユーザー視点 >> エシカル、応援消費 etc,...
・社会貢献する商品やサービスであれば、多少プレミアムを払ってもよい。
③株主視点 >> 
・長期的に利益出せるかどうか、シナリオ描いているか確認したい。
④社員の視点 >>
・利益だけではなく、社会に役立っていることを実感する仕事がしたい。

日本企業は、今後ますます本質を追求する力、将来生み出す力、変化するモノやコトに対するビジョンが重視されてくるでしょう。

弊社プロジェクトにおいて注力している3点(①日本人の美意識、日本人論、②時間と空間のリズム  、③社会的価値)は、このような背景があってからのことなのです。

(完)