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言葉の宝箱 0146【欲しいからではなく必要だからだ】

『サクリファイス』近藤史恵(新潮社2007/8/30)

陸上選手から自転車競技に転じた
白石誓はプロのロードレースチームに所属。
各地を転戦していたヨーロッパ遠征中、悲劇に遭遇する。
アシストとしてのプライド、ライバルたちとの駆け引き。
かつての恋人との再会、胸に刻印された死。
青春小説とサスペンスが融合を遂げた大藪春彦賞受賞作。

・教えてほしい。
どこからやりなおせば、この結果を避けられるのだろう。
後悔せずに済むのだろう P7

・嫌いだよ(略)
嫌いだからやるんだよ P32

・欲しいからではなく、必要だからだ P34

・ぼくは、口に出して言ってみた。
口に出してみると、そのことばは急に嘘の気配を帯びた。
それが嘘なら、どんなによかっただろう。
ぼくの心の一部は、あの日から動くことを止めている P48

・負けたって失うものはない。
ならば、やってみるしかない P159

・今、ぼくの心を埋め尽しているのが、悲しみかどうかすらもわからない。たった一滴の涙すら流さなかった。悲しみではないのかもしれない。
だが、この暗く深い喪失感をどうすればいいのだろう。
悲しみなら、まだ泣き叫ぶことで表現できる。
悲しみですらない感情を、人はどうやって処理できるのだろう P197

・「やっぱり止めとけよ。憎む相手なんかいない方がいいんだよ」
そうかもしれない。
たとえば、憎しみが喪失感を少し軽くするのだとしても、
憎しみなどない方がいいのだ。
どちらにせよ、彼はもう戻らないのだから P226

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