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#ミステリー小説が好き

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人気の記事一覧

【この家・・・何かおかしい。】雨穴作  変な家【小説紹介 感想】

いつもご覧いただきありがとうございます。 きゅうりです。 皆さんは、「変な家」をご存じですか? 2024年現在、映画化されて話題になっている作品です。 私はまだ、映画を視聴していませんが(笑)。 概要 「変な家」は、ウェブライターの「雨穴」さんがウェブメディア「オモコロ」に投稿された作品です。その後、YouTube、書籍、漫画、映画など様々なメディアで展開されています。 これから述べるのは、小説版です。 本作は、第一章~第四章で構成されています。 物語は、「とある一軒家

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文学の森殺人事件 第一話

 私が西園寺一と出会ったのは、数年前に「西園寺探偵事務所」の求人広告を手に取り、能力を認められ、採用されたからだ。しばらくして彼の右腕として一緒に行動を共にして、その度に彼に尊敬の念を抱いた。とはいえ、アメリカ人の私に一から(来日した当時はほとんど日本語を喋れなかった)日本語をレクチャーし、日本の魅力に改めて気付かせてくれた彼には感謝の言葉しかない。  私が事件に遭遇する前に趣味である読書が思わぬ形で、殺人に発展していくとは想像だにしなかった。  はじまりは何気ない談話からだ

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介護は孤独だと感じているあなたに【#ミステリー小説が好き】

「昔と雰囲気、変わったね~」 久々に再会したかつての同僚に、こう言われた。 彼女と知り合った頃、私は母がもう治らない病気だと知った。彼女が県外に嫁ぐことになって職場を去った時には、私は介護や病院通いに明け暮れていた。 その後、メールや年賀状のやりとりが細々続き、母が亡くなったことを知ると、「遅れてごめんね」と丁寧に書き添えた香典を送ってくれた。 ありがたい友である。 コロナ禍がようやくおさまり、数年ぶりに会った友は、 「昔は、ちょっとピリピリというか、張りつめたカンジが

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文学の森殺人事件 エピローグ

 私たちが『西園寺探偵事務所』に帰宅したのは夜の十一時過ぎだった。西園寺は約六時間で事件を解決した訳だが、その割にはどこか顔色が悪かった。とはいえ、尊敬していた二階堂ゆみが殺害された事実を受け止められないのは誰だって同じだろう。気掛かりなのは大島徹と名和田茜のことだ。彼らは赤羽雄一と三木剛という例えようのないクズのせいで、事件にかかわってしまっていたのではないのか? 特に大島は二階堂ゆみを尊敬していて、彼女のような作家になるために上京してきた苦労人だ。そんな彼が嘘の供述をして

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文学の森殺人事件 第三話

「ご静粛にお願いします」二階堂ゆみの担当編集者の三木剛は言った。「先生は国内だけに留まらず世界各国で人気があります。先生は常々ひとり、ひとりが国際的に通用する力を持って、日本のミステリー、いや、日本の作家の底上げをしなければならないと仰っています」そして彼は続けた。「まさか文学の森に気分を害する人間がいると思わなかったので、信じられません」  三木はそう言うと、身に付けていた黒のスーツからハンカチを出し、汗を拭っていた。 彼は汗をかきやすい体質だった。記者からのインタビューに

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明神しじま『あれは子どものための歌』

 ミステリー要素アリのファンタジーが好きな人に朗報!この本は、話が進んでいくなかで、だんだんと真相が明かされていくタイプの謎があるファンタジーです。  一話一話、独立した話として読んでもよいのだけど、やはり連作短編として固め読みするのが是非ともオススメ。最後の物語では、それまでの物語が全て合わさって、素敵なエンディングが待っています。  ちなみに個別の話として私が好きなのは、並行して語られる三つの話が最後には重なりあって一つの物語になる「商人の空誓文」と、ロマンス要素ありの「

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「十角館の殺人」途中まで読みました。(ネタばれ無し)読書初心者感想

最近本屋さんに「十角館の殺人」が入り口に置いてあって、 調べてみたら超有名な推理小説だと知りました。 今ドラマ化で実写にもなってて、漫画化もされてる様子。 名探偵コナンと金田一少年の事件簿は好きなので、ミステリーは好きなのですがちゃんとした推理小説読むのはこれが初めて。 頑張って読んでみました。 ネタばれはなし! 登場人物が多くて難しい! 登場人物が多く、しかもみんなあだ名で呼ばれています。 有名な推理小説家由来とのことですが、知らない名前もある。 とにかく人物を覚

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文学の森殺人事件 第六話

「彼女が盗作していたのに認めないから腹が立ってそう叫んでしまったのかもな。俺は気が短い方だから思ったことを口に出さないと気が済まなくなる時があるのさ。もちろん、今では後悔しているよ。でもさ、まさか死ぬとは思っていなかった。疑われるのは仕方がないけど、俺は犯人ではないよ」 「二階堂ゆみが盗作していた?」 「死んだ人のことを悪く言いたくないが、彼女は盗作して富や名声を得ていた。それはネットやSNSでも指摘されてる事実さ。歌手やバンドがメロディや歌詞をアレンジして使うように、二階堂

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文学の森殺人事件 第十話

「あなたは少し声が高いようですね」 「ええ。生まれつき声が高いのです。それが何か?」 「いえ、気になったものですから」 「あなたの周りで彼女に恨みを持つ人間はいますか?」 「私が思うに、二階堂ゆみに対して恨みを持つというよりか、彼女の周りにいる人間そのものが一癖も二癖もあります。三木剛さんをご存じでしょうか?」 「先ほど話しましたよ。ですが、彼にはアリバイがありました」 「彼は担当編集者として全ての権限を握っていました」 「なぜそのことを?」 「彼が私に代筆を頼むように仕向け

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文学の森殺人事件 第十一話

「小説家を諦める?」 「自分の限界を知ったというか。これ以上小説を書き続けても意味なんてないと自覚したんです。二階堂ゆみさんも自伝で『自分の才能に限界を感じたら辞めるべきだと』書いてましたから。私は春彦の小説を批評した割に、自分の小説に対しても自信が持てずにいます」 「私が思うに小説に完璧なんてありません。先ずはいろいろな作家の本を読んでそこから完璧を追い求めるだけです。申し訳ありません。話が脱線しましたね」と西園寺は言った。 「いえ、そうだと思います」立壁由紀は言った。「才

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文学の森殺人事件 第七話

 昼の四時に「文学の森」の二Fフロアに移動すると、著名なミステリー作家のディスプレイが展示してあった。江戸川乱歩、横溝正史、鮎川哲也、西村京太郎、など日本の推理小説の礎を築いた文豪の貴重な資料だ。彼らが生涯残した手紙、原稿、日記、作品などを紹介していた。特に目を引いたのは彼らの紹介映像だった。ミステリーに疎い人間でも興味を持って貰うために主催者が計画していたのだろう。あるいは文豪の残した軌跡を辿るのが狙いなのかもしれないが。  事件発生時、現場に残った人物は帰すわけにはいかな

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文学の森殺人事件 第二話

『文学の森』講座の会場は渋谷区道玄坂を登ったオフィスにあり、二階建ての比較的広い外観をしていた。この日も、マスコミと彼女のファンやあるいは作家志望者たちが、まるで蟻塚に吸い込まれるように集まっていた。もちろんその中にはベテランでなかなか日の目を見ない日陰者たちもいた。  私たちは無事に受付を済ませると、受付嬢が笑顔で中を案内してくれた。 「こんにちは。スコット・ジェファーソンさん!」 「大島、お前も来ていたのか」  春の『文学の森』で親交を深めた太った男が「大島徹という者です

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文学の森殺人事件 第九話

「私は二階堂先生から感謝されていたんですよ。私の性格上、他人とトラブルは絶えませんでしたが、彼女は富と名声を手に入れたことが何よりも嬉しいと言っていました。個人的に恨みを持つのは世界中の一部のアンチか。あるいは『文学の森』で受講した長田という青年ですかね」三木は言った。 「長田さんとも過去にトラブルがあったそうですね」 「一編集者として彼の書いた小説を読んで『プロの道は諦めた方がいい』と助言したら逆恨みして、悪口を言いふらしているのでしょう。実際に彼は何をやっても上手くいかな

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文学の森殺人事件 第五話

 昼の三時に「文学の森」講座に警察が到着した。警部補の進藤達哉と新人の佐々岡司の二人組だった。彼らは壇上で倒れていた二階堂ゆみの嘔吐物に目を向けると、直ぐに鑑識に報告して、調査に乗り出した。その上で病死とは考えられないと断定した。なぜ、このような事件が起こってしまったのかと我々は頭を悩ませた。もちろん重要参考人と思われる人物に関しては勝手に帰宅したらいけないと念を押していて、明らかに事件に関係ないと思われる人物には酷な話なのも承知の上だった。とはいえ、現実を受け止めなければな

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文学の森殺人事件 第十三話

 夜の七時『文学の森』講座で西園寺一は最後の確認がしたいと私に声をかけた。彼は一同が集まる前に進藤警部補に八人の容疑者の身柄を拘束して、逃げられないようにした。とはいえ、恩田薫にはアリバイがない。恩田という人物はとにかく謎が多い。どこか恩田の姿は謎めいていて、気味が悪いが、警察の目を欺くほど頭脳明晰ではないだろう。西園寺はこれまで収集した情報が確かなら犯人の正体はだいたい見当が付いたようだった。 「西園寺さん、話とは何のことですか?」 「スコット君、君は鈍いね」 「何とでも言

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文学の森殺人事件 第八話

「悪い噂?」 「実際に二階堂先生は取材で警察に話を聞いたり、旅をされたりなど非常に真摯に仕事と向き合っていました。彼女が他人の文章をそのまま盗作するのはあり得ないことです」 「話が食い違ってきますね」 「嘘を嘘と見分けられない人に真実を語るのは難しいかもしれません」 「あまりこのようなことを言いたくはありません」西園寺は言った。「ではなぜSNSなどで二階堂先生が盗作をしていると話題になるのですか?」 「西園寺さんは誰かが流した悪意のある嘘の情報を信じるのですか?」  西園寺は

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人工知能の限界は~東野圭吾さん『魔女と過ごした七日間』~

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、東野圭吾さんの『魔女と過ごした七日間』を読み終えました。 元見当たり捜査員の父親を殺された中学3年生の陸真が、「魔女」を自称する不思議な女性と出会うことから、物語は始まります。 父親が隠していた秘密に驚く陸真ですが、彼女と協力して犯人を追うことに。 「魔女」こと羽原円華は、自身がもつ特異な能力と大胆な行動力を活かして、どんどん真相に近づいていきます。 「人工知能」と「DNA鑑定」について深く考えさせられる一冊です。 個人的に久

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文学の森殺人事件 最終話

「私が主犯格だと?」三木剛は訊ねた。 「いいえ、三木さんは主犯格ではありません」 「立壁由紀さんに泥を被らせ、犯人に仕立て上げたあの人物が主犯格です」 「いい加減勿体ぶらずに言えよ!」と長田春彦は言った。 「では、言いましょう――共犯者とはここにいる全員です。ここにいる全員が二階堂ゆみを殺害するために集結した犯人です。私はアリバイがないのは恩田さんだけだと思っていました。しかし、よく考えてみると、全員のアリバイが虚構であることは直ぐに見破れなければいけなかった。私がまんまと騙

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文学の森殺人事件 第十二話

① 大島徹(派遣社員)  今まで出会ってきたなかで一番善良な人物で、人当たりも良く信頼も厚い。容疑者と考えられる所はほとんどなく、アリバイもある。仮に彼が犯人なら『文学の森』にいる全員が怪しく見えるほどだ。けれども、大島は犯人と接点があるのかもしれない。彼は珍しく怒声を上げたのも関わらず、怒声を浴びせられた長田春彦は彼を善人だと称した。それはなぜだろうか? 普段は派遣社員をしていて、生計を立てているが、過去に二階堂ゆみとの接点もあった。彼は小説を書いているが、なかなか芽が出

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文学の森殺人事件 第四話

 昼の一時に『文学の森』講座がはじまるので私たちは渋谷に向かった。道玄坂を登った先におしゃれなオフィスがあって、そこでワークショップが開催される。この日も、二階堂ゆみの受講を楽しみにしていた。  受付を通った先に眼鏡を掛けた醜男がいた。 「大島、今日も来てたのか?」と私は言った。 「スコットさん、それに西園寺さんまで!」大島徹は嬉しそうだった。 「それで大島、小説の方はどうなんだ?」 「まだ書いていますよ。とはいえ、出版社から相手にされないのは慣れてますがね」 「本気でプロを

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