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言葉の宝箱 0103【信じ抜くことは何より難しい】

『無実の君が裁かれる理由』友井羊(祥伝社2019/8/20)

主人公の牟田幸司は大学法学部の2年生。
同級生へのストーカー行為で告発され学校で孤立する。
アルバイト先のイタリアンレストランのオーナーシェフ
祁答院依子に相談すると同じ大学の心理学科4年の遠藤紗雪を紹介される。
紗雪は冤罪を研究しているという。
ストーカー被害を受けた女子学生の友人が入手した
牟田の画像が決め手と聞き、
「顔の錯誤は簡単に起きるから、何の根拠にもならないよ」と彼を力づけ、真相究明に乗り出す。
紗雪のお蔭で疑いも晴れ、
牟田は女子学生と共に真犯人を捜しに動き始めるが、
二人の前に捜査二課の刑事が現れる。
女子学生が振り込め詐欺に関与している疑いがあるというのだ。
彼女の学生証が利用されていた。
学生証の盗難がきっかけと分かり、彼女を襲った犯人も逮捕され、
一件落着と思った矢先、環美兎という女性が現れ、
「遠藤紗雪の父親は人殺しなんだよ」と告げる。
ここまでが第1話『無意識は別の顔』。
第2話『正しきものは自白する』では「自白強要」、
第3話『痴漢事件とヒラメ裁判官』では「作為」、
第4話『罪に降る雪』では「悪意」と
冤罪を生む原因をテーマに物語は進行する。
遠藤紗雪はなぜ冤罪にこだわるのか。
牟田の父は裁判官でかつて
紗雪の父の裁判に携わったことなどが次第に明らかになる。
そして環美兎との関係も。
4つのテーマ、エピソードを回しながら、
紗雪と美兎の関係を少しずつ深掘りにしてゆく。
そして父の一言で牟田は紗雪の父の事件を調べ始め、真相が明らかになる。事件を通して、牟田が成長してゆく様子が描かれているミステリ。

・他人の気持ちを想像するのは難しい P35

・先が見えない状況で理性を保ち続けられるほど、
人の心は強くありません P114

・信じ抜くことは
冤罪を晴らすために絶対必要なことだけど、
何より難しいことでもあるんだ P125

・他人の不幸がないと成立しない以上、
綺麗事を言う気はありません P216

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