見出し画像

映画『ロマンス』レビュー 〜大島優子さんと大倉孝二さんのベストマッチ!肩の力が抜けていくぬるさが最高のロマンス〜

・・・・・・・・・・・・・・・

『オンナゴコロ』は『女』が描くのに限る

今回は、"ラブストーリーを観たい!”という方に、ぜひおすすめしたい邦画の一本をご紹介したいと思います。

今回はタナダユキ監督の『ロマンス』です。

最近、日本の女性映画監督の活躍がめざましいと感じます。(そう感じるのは一部の映画ファンだけかもしれませんが)やはり、『オンナゴコロ』は『女』が描くのに限る、と私は思います。

今回紹介する本作、『ロマンス』は日本人女性映画監督の中でも、特に映画ファンをうならせる女性映画監督の一人、タナダユキ監督の作品です。

他にも、日本人女性映画監督として有名なのが、河瀬直美監督、西川美和監督、呉美保監督、大九明子、荻上直子などがあげられます。

昨今、彼女らは実に良質な作品を次々と世に送り出しています。

もちろん、個人的にも好きな女性監督が数人いる中に、このタナダユキ監督が入ります。

タナダユキ監督作品の過去作といったら、やはり『ふがいない僕は空を見た』の破壊力ですね。女性映画監督ならではの残酷さとやるせなさが、全面に描かれた作品です。映画ファンなら、必ず思い浮かぶ傑作です。

・・・・・・・・・・・・・・・

大島優子さんにあてがきされた脚本

さて、この本作『ロマンス』は(元AKB)大島優子さんを主役に迎えた作品です。

もともと、大島さんありきの、アテガキに近い形で書かれた脚本なんだそうで、主役は大島さんに決まっていたそうです。

『タナダユキ監督作品にアイドル?』

私は、ちょっと意外でしたが、

本作を見る限りでは(元AKB)大島優子さんは非常に映画に溶け込んでいますので、十分、映画ファンは納得できるのではないかと思います。大丈夫です。

舞台は箱根、
小田急ロマンスカー。

ロマンスカーでアテンダントとして働いている20代の女性が主役の大島優子さん。制服姿も可愛らしいし、テキパキと仕事をこなすしっかり者の女性という主人公像はぴったりです。観終わってみたら、大島優子さん以外に考えられないくらいにはまっています。

・・・・・・・・・・・・・・・

軽快な掛け合いが絶妙

ただ、彼女の良さを、さらに引き立てたのが相手役の大倉孝二さんでしょう。

大島優子さんが主役といいながらも、そのほとんどが、相手役の“おっさん”役である大倉孝二さんが強烈な印象を放っていますので、彼が主役の映画といっても過言ではないでしょうか。それはそれで納得でできる作品です。

大島優子さんの相手役なんだから、今をトキメク20代のイケメン俳優かと思いきや、20歳も離れた年上の中年男性です。映画のタイトルが『ロマンス』という割には、ロマンスがおきそうもない設定なのに、これが絶妙にはまっているから、さすがにタナダユキ監督です。

その作品の魅力の一つになっているのが、脇キャストの存在と、軽快な掛け合いとシナリオです。たった数時間のロードムービーなのに、テンポよく二人の背景までをも、ちゃんと描けている所が心地よいのです。

今回も、さすがに、タナダユキ節ともいえる脇キャストの圧倒的な存在感が、大いに効いている渋い映画です。

とにかく、大島優子さんの魅力と、ちょっとチグハグな相手役の大倉孝二さん。特に、大倉孝二さんの魅力が全開に詰め込まれた物語にしあがっていてオススメです。

・・・・・・・・・・・・・・・

自分を支えてくれる『真のロマンス』

肝心のお話はですが、さすがに、女性監督さながらで『女性のキモ』を押さえているなぁと感じられるシーンが要所々々に散らばっています。

年若き可愛い女性が、恋にも人生にも行き詰まりを感じ、息苦しさを感じている時に、なんともいい加減で中途半端な、赤の他人の知らないおっさん(男性)に救われるお話です。

恋愛対象になるわけでもなく、それでいて自分を、どこか支え癒やしてくれる、いい加減な男性の存在。

ドタバタしながらも肩の力が抜けていく、ほどよくヌルい感じ。結果、何かに追い詰められている女性こそ前を向く元気を与えてくれます。

一瞬の出会いが、これからの自分を支えてくれる『真のロマンス』になることがあるのですよね。

『ロマンス』は美男美女のカップルのお話でなくとも、映画として成り立つ。そんな、女性のスキをつく非常にみぞおちに来る女の物語です。

多少、大衆受けするキャストであること、そして『箱根ロマンスカー(小田急)』全面協力的の広告的な印象はあるのですが、ただ単純な感動だけに済まさないエッセンスは流石だし、この後味の良さは、女性監督さながらで時間が経っても何度も見返したくなります。

世の女性は、地味に胸キュンすることうけあいです。

ちなみに余談ですが、大倉孝二さん演じる中年のおっさんは、映画プロデューサー役だったのですが、やはり映画を作るっていうのは大変なんだな、とつくづく思いました。

一つひとつの作品に、色んな人が関わって、様々な人の情熱が込められています。
これまで以上に、大切にちゃんと映画を観たいと思います。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?