後藤ようこ

株式会社ノーブランドの取締役、ライター、看護師。大学病院で臨床経験後、看護学校の教師を…

後藤ようこ

株式会社ノーブランドの取締役、ライター、看護師。大学病院で臨床経験後、看護学校の教師を経て現職へ。今は、中小企業のWEBサイトやパンフレットをデザインする会社を経営してます。Filmarksに1200本以上の映画レビューあります。 https://www.no-b.co.jp

マガジン

  • 映画を通して考える、恋愛、人生、人、そして社会

    1,000本以上の映画レビューを書き綴っている、Filmarksレビューの中から、おすすめの映画をnote用にまとめたマガジンです。

最近の記事

叶わなかった二人の母を、朝と光が未来へと導く 〜映画『朝が来る』〜

当たり前じゃないもの世の中は、当たり前じゃないものにあふれている。 家族がいること、母がいること。 家族をつくること、母になること。 これらは、当たり前に手に入るようにみえても、幾つもの奇跡を経て、ようやくたどり着けるものだ。なのに私たちは、慌ただしい日常を生きていると、これらが当たり前のようにみえてしまう。 だから時々、今ある幸せの感触と手触りを、客観視して確かめたくなるものなのだろう。 久保田利伸さんの歌の歌詞に、 というフレーズがある。このフレーズが大好きで

    • ブルーの背中に花束を 〜映画『BLUE/ブルー』は愛に溢れたボクシング映画の傑作〜

      ※映画のネタバレに気をつけてレビューを書いていますが、鑑賞前に全く情報を入れたくない方はご注意ください。 ボクシングとは両手しか使わない不完全なスポーツ格闘技現在公開中のボクシング映画、『BLUE/ブルー』の監督である吉田恵輔監督が、映画の興行企画のネット番組で、"ボクシングとは手しか使わない不完全な格闘技だ。”と言っていた。吉田恵輔監督は30年間ボクシングをやっているのだという。そこで出会った人たちをモデルに、この『BLUE/ブルー』という映画を作った。 確かに。 こ

      • 手を伸ばしても届かない距離で、一緒に歩く彼(ひと) 〜映画『好きだ、』で堪能する、昭和の高校生たちのノスタルジー

        ちゃんとフラレなかった恋中学の頃、一目惚れした彼が、わたしにとっての初恋だったと思う。4月の入学式のあと、同じクラスになって出会い、秒で恋をした。 バスケットボールをしている彼は、めちゃめちゃイケメンだった。キレイな横顔にトキメイていたのだが、当の本人は全くチャラチャラしていなくて、女子と話している姿をあまり見たことがないシャイな人だった。 中学の3年間、同じクラスだったから、なんとなく想いを告げたような気もするし、相手もわたしの気持ちを分かっていたような気もしたが、なん

        • 命がけの兄弟ゲンカ  〜映画『犬猿』にみる、一番近い やかましい他人

          近くて、ほんのり遠いきょうだいという関係 本気で喧嘩をすると、自分の一番嫌なところが露わになる。 だから、喧嘩した後で冷静になると、さっきまでは頭にきてたはずなのに「なんて酷い言葉を発してしまったのだろう」とすこぶる落ち込んでしまうものだ。 親子喧嘩、夫婦喧嘩、兄弟喧嘩。 身内にまつわる喧嘩は、さまざまあるけれど、この中なら兄弟喧嘩が一番他人同士の喧嘩に近いのかもしれない。 親と子という関係は、常に扶養するもの扶養されるものという関係性になる。子供の頃は親が子を、高齢に

        叶わなかった二人の母を、朝と光が未来へと導く 〜映画『朝が来る』〜

        • ブルーの背中に花束を 〜映画『BLUE/ブルー』は愛に溢れたボクシング映画の傑作〜

        • 手を伸ばしても届かない距離で、一緒に歩く彼(ひと) 〜映画『好きだ、』で堪能する、昭和の高校生たちのノスタルジー

        • 命がけの兄弟ゲンカ  〜映画『犬猿』にみる、一番近い やかましい他人

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          21本

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          妻、嫁、母親という肩書がなくなる日 〜ジェンダーギャップと女性の生きづらさを描く 映画『82年生まれ、キム・ジヨン』〜

          なぜ、政治家のジェンダー差別発言が炎上するのか たびたび、政治家によるジェンダー差別を匂わせる失言が世を賑わせる。 かつては、女性のことを『産む機械』という表現をした政治家もいたし、某都議会の議会中に『お前が結婚しろ』『産めないのか」』というヤジが飛んだと大騒ぎになった事もあった。 直近の話題で言えば、『女性は話が長い』と発した元総理大臣は、大きな国のイベントである五輪の役職を降りる事態まで発展した。 一つひとつを見れば、それほど悪意のある発言では無かったかもしれない

          妻、嫁、母親という肩書がなくなる日 〜ジェンダーギャップと女性の生きづらさを描く 映画『82年生まれ、キム・ジヨン』〜

          涙のスピードと喪失感 〜映画『永い言い訳』が教えてくれる呼吸のしかた

          涙には速度がある。 涙のスピードはその時々の感情の深さによって、早くもなり遅くもなる。 でも、その涙の速度は自分にはコントロールできない。ただただ、その時々のスピードでこぼれ落ちる生暖かい感触を黙って感じるしかない。 突然、溢れ出す感情に堪えきれずこぼれる涙、 ぬぐう指先が間に合わなかった雫は、 首筋を通り、あっという間にわたしの胸元を濡らしてしまう。そんな時は、すこし遅れて『悲しい』『悔しい』『苦しい』という感情にようやく気付いたりする。 大人の涙というものは、とて

          涙のスピードと喪失感 〜映画『永い言い訳』が教えてくれる呼吸のしかた

          サクラ吹雪が舞うまでに 〜映画『四月物語』に思う桜の季節のトキメキと憂鬱〜

          いつからだろう。 サクラの花が、こんなに愛おしいと思うようになったのは。 寒い冬を越えて、そろそろクローゼットの中のセーターが気になり始める頃。「もうセーター着ないかな?クリーニングめんどくさいな。」そんな事を思いながら、ふと窓越しをながめたら、ソメイヨシノの薄桃色が遠くに見える。 早春の知らせは、ほんのり暖かく感じる部屋の気温だけじゃない。この一瞬の季節に咲き誇る、満開のサクラが毎年届けてくれるのだ。 子供の頃、小学校の校庭には沢山のサクラの木があった。みあげた満開

          サクラ吹雪が舞うまでに 〜映画『四月物語』に思う桜の季節のトキメキと憂鬱〜

          わたしたちは、戦争は体験こそしていないけど。常に戦争が起きている時代に生きている 〜映画『ハクソーリッジ』レビュー〜

          “毎年6月は沖縄県にとっては大切な時期であり、平和を願い、あの激しかった沖縄戦を忘れることなく、後世に伝えるための数々の催し物が行われます。浦添市では、本作『ハクソー・リッジ』を通じて沖縄戦や前田高地での戦いに関心をもった人への平和学習や、平和パネル展といった企画の実施により平和を学ぶ機 会を設けるなど、平和事業に取り組んでまいります。” http://www.city.urasoe.lg.jp/docs/2017050200104/ (文中引用)ー浦添市ウェブサイトー 日

          わたしたちは、戦争は体験こそしていないけど。常に戦争が起きている時代に生きている 〜映画『ハクソーリッジ』レビュー〜

          映画『スリービルボード』レビュー 〜それでも、行き場の無いやるせなさの出口は何処に〜

          <あらすじ> 米国ミズーリ州の片田舎の町を舞台に、娘を殺された主婦が、犯人を逮捕できない警察に業を煮やし、解決しない事件への抗議のために町はずれに巨大な3枚の広告看板を設置する。それをよく思わない警察や住民と主婦の間には埋まらない溝が生まれ、いさかいが絶えなくなる。そして事態は思わぬ方向へと転がっていく社会派ヒューマン・ドラマ。 白か黒か。 善か悪か。 正義か不義か。 人々はいつも、オセロのコマをどちらかに裏返そうとする。 裏返ったオセロの色の数で勝利を実感するまでやらな

          映画『スリービルボード』レビュー 〜それでも、行き場の無いやるせなさの出口は何処に〜

          映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』レビュー 〜気高く誇り高き、守られるべき尊厳の物語〜

          『国』という括り(くくり)の中でしか生きられない私たち 2016年11月、英国下院議会の首相質疑応答で、労働党の党首が英国の生活保護受給者・失業保険受給者の実情を示し、 と答弁したそうだ。 確かに、本作『わたしは、ダニエル・ブレイク』を観終えた時、強烈な社会への不信感や政治への不信感に見まわれ。、今生きている自分たちの社会を振り返りたくなる。 私たちは、地球という星で生きているが、正確に言えば『国』という最大単位で括られている。 戸籍を持たなければ最低限の人権は保障

          映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』レビュー 〜気高く誇り高き、守られるべき尊厳の物語〜

          映画『デトロイト』レビュー 〜なぜ、日本のお笑い芸人のブラックフェイス騒動がNGだったか〜

          ※本ブログ記事は、映画『劇場』のレビューです。ネタバレに注意して書きましたが、映画鑑賞前にネタバレを見たく無い方はご注意ください。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 米国におけるブラック・フェイス昔、ある民放のバラエティ番組で芸人さんが顔を黒塗りして笑いをとった事が『差別につながる』『そんなことない、ただの笑いだ』といった類の論争が、ネット上で沸き起こった。 私は、番組を観ていないし、何を論議しているのか分からなかったので、その論争には加わらなかったが、日本国内における差

          映画『デトロイト』レビュー 〜なぜ、日本のお笑い芸人のブラックフェイス騒動がNGだったか〜

          映画『ロマンス』レビュー 〜大島優子さんと大倉孝二さんのベストマッチ!肩の力が抜けていくぬるさが最高のロマンス〜

          ・・・・・・・・・・・・・・・ 『オンナゴコロ』は『女』が描くのに限る今回は、"ラブストーリーを観たい!”という方に、ぜひおすすめしたい邦画の一本をご紹介したいと思います。 今回はタナダユキ監督の『ロマンス』です。 最近、日本の女性映画監督の活躍がめざましいと感じます。(そう感じるのは一部の映画ファンだけかもしれませんが)やはり、『オンナゴコロ』は『女』が描くのに限る、と私は思います。 今回紹介する本作、『ロマンス』は日本人女性映画監督の中でも、特に映画ファンをうなら

          映画『ロマンス』レビュー 〜大島優子さんと大倉孝二さんのベストマッチ!肩の力が抜けていくぬるさが最高のロマンス〜

          なんども許され、なんども愛される女たち 〜"きみの鳥はうたえる”『佐知子』と、"寝ても覚めても”『朝子』 の考察〜

          ・・・・・・・・・・・・・・・ 異なる二人のヒロインの魔力昨今、映画館ではキラキラのJK映画が花盛りだ。 胸キュンとか、壁ドンとか、顎クイとか。 女性をときめかせる言葉は、実に甘くて理想の恋を追い求める女性達の貪欲さは、古今東西、変わらない。 しかしながら、これらJK映画の反対側では、実にシブい邦画も公開されていて、巷の映画ファンを喜ばせているから興味深い。 これらは、決して甘い物語ではないものの、リアルな女性像をあぶり出し、魅力的な女たちをスクリーンの中で羽ばたかせ

          なんども許され、なんども愛される女たち 〜"きみの鳥はうたえる”『佐知子』と、"寝ても覚めても”『朝子』 の考察〜

          映画『岬の兄妹』レビュー 〜主演女優 和田光沙さんに最大級のリスペクト〜

          ・・・・・・・・・・・・・・・ 価値観を変える映画映画を見終わって映画館を出た瞬間に、目に入る風景が茶番に見える作品に出会うことがある。数時間前の自分の価値観が微妙にゆがんでみえ、現実と虚構の区別がつかなくなるような錯覚である。 普段の生活では目に触れない、接することのない世界の物語を目の前に突きつけられた瞬間に、それまでの自分の価値観は役に立たない、無駄なもののように感じ、虚脱感に見舞われるのである。 本作、『岬の兄妹』もそういう類の作品だ。 決してメジャーな監督や

          映画『岬の兄妹』レビュー 〜主演女優 和田光沙さんに最大級のリスペクト〜

          ドラマ『本気のしるし』レビュー 浮世離れした彼女は聖女か悪女か 〜

          ・・・・・・・・・・・・・・・ 男を見る目、女を見る目よく、『男を見る目があるとか無いとか』とか、『女を見る目があるとか無いとか』言うことがある。 果たして、こと恋愛に関しては、この『見る目』という目は標準化されるのだろうか?といつも思う。 私は個人的に、そんな目はどこにも無いと思う。 たまたま出会った人が、自分にとっては良い人で、または心地よい人で、たまたま愛を紡ぐことができた。ただ、それだけの気がしてならない。だから、見る目があったから幸せになった、見る目がなかっ

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          戦争を考える時に、かならず見ておきたい戦争映画25本

          2012年から始めた映画レビューアプリ『Filmarks(フィルマークス)』。地道に映画鑑賞記録としてレビューを書き溜めた結果、1,200本の映画レビューが蓄積されました。 実際には、もう少し映画を観ていますが、観た映画すべてのレビューを書いている訳ではないので、ここに記録した映画は、何かしら心に響いた作品となっています。 この1,200本の中から、心に残った戦争映画についてまとめてみたいと思います。日本では8月15日が終戦の日です。1年に一度、私達は戦争という悲劇と真正

          戦争を考える時に、かならず見ておきたい戦争映画25本