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ラップのオーディション番組に見るアメリカの現在の日本。そして、天晴れカーディ・B!

ラップをするとはどういうことか。人種や貧困、銃問題など、参加者によって繰り広げられるリリックにより、なかなか私たちには見えてこないアメリカが見えてくる。

青春は小さな希望とほろ苦さと

青春期の映画が好きである。好きな青春映画はたくさんあるが、NETFLIX『リズム&フロー』を観てすぐに思い出した作品は、以下の3作品。

①NBA入りを目指す若者を描くドキュメンタリー『フープドリームス』。「夢を実現することは甘くない」をガツンと。

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②『8マイル』。なんやかんやで、好きなラッパーNO.1は、この時からずっとエミネムかもしれない。

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③スコットランドが舞台の『スウィートシックスティーン』。大好きなケン・ローチ監督作品。ちなみに主演を務めたのは地元のプロサッカーの選手だったマーティン。

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現状打破を目指し、夢を実現するためにもがく若者が主人公。どの作品にも小さな希望の光とほろ苦さが共通している。

これらと同じ熱量をもって、私が、楽しんでいるのがNETFLIX『リズム&フロー』だ。

アメリカン・ドリームの光と影

全米各地でオーディションが繰り広げられられる。出演者の自宅などで収録された独白が随所に盛り込まれるため、なかなかに厳しいアメリカの現実がつきつけられる。オーディションを通し、優勝者が決まる。勝者が決まるということは、たくさんの敗者が決まるということだ。アメリカン・ドリームという明るい光は、たくさんの影と対になる。

そういう目線で見なくても、最新ラップ事情が垣間見れて楽しいし、「今、若者にはシンプルなラップが好まれる」とか、「カッコイイやつじゃなく、準備してるやつを探してる」とか。錚々たるラッパーたちの審査員コメントを聞いているのもすこぶる面白い。

天晴れ、カーディ・B

とりわけカーディ・Bのコメントが一貫していて清々しい。

カーディは、マーケットを意識する。あなたはSNSで映えるのか?  皆からフォローされるスター性があるのか?  思わず口ずさみたくなるようなメロディはつくれるのか? 若い女の子たちがお小遣いでいきたくなるようなライブができるのか?  ティーンのお手本のような存在になれるのか?…などなど。※記憶で書いているので正確ではありません。

上手いだけのラッパーならたくさんいる。辛い境遇なのは皆同じ。私が探しているのは、自分たち(審査員となっているラッパー)をも凌駕する特別な才能をもったアーティストだ、とカーディは言う。情けは無用。とにかく容赦がない。中途半端に手を差し伸ばして後に大きく傷つかないように。それが覚悟を持って厳しい人生をサバイブし、今の地位を築いたカーディの優しさだ。

時のスターたちが審査員にエントリーされてるが、私はとにかくカーディの視点やコメントに興味津々。生半可な覚悟でオーディションに臨むことを許さないカーディのプロ意識の虜である。

結局、アーティストって佇まいだよな〜、とか(ラップの英語がまったく聴き取れないが、それでも、アーティストとしてイケてるのか、イケてないのかは、その佇まいで素人目にもよく分かる)。イキってる人はたいていダメだな、とか。品って大切だな、とか……

通常のオーディション番組のように軽やかにも、もちろん十分楽しめる。秋の夜長にいかがでしょう?





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