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第7章 行政書士のビジネスの性質

「月商100万円は、通過点」
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資格起業家理論

これまで、行政書士の仕事をいかにして取るかという点にフォーカスして解説してきました。行政書士開業時の考え方とマインド、そしてベストな営業方法と商談の成功法など、行政書士業務を取るための最適な方法について理解していただけたと思います。そこでこの章では、さらにステップアップした方法を紹介します。

私は、行政書士の仕事には次のような特徴があると考えています。

 ・お客様のニーズによって発生する仕事である
 ・こちらから仕掛ける商品としては優れていない
 ・行政書士の仕事だけでは、あまりにも仕事の幅が狭すぎる
 ・紹介だけでも成り立つが、浮き沈みの差が激しい
 ・継続課金的なビジネスモデルが最初からあるとはいえない
 ・労働集約型のビジネスであり、時間がかかる

行政書士の仕事は国がつくったものなので、その「商材」が優れているかどうかはわかりません。業界的にもあまり議論されることがなく、行政書士で成功できるかは本人次第という定説が最もなものでした。

しかしながら、積極的に売りにいける商品がほとんどないことから、軌道に乗せるまでに時間がかかるという結論です。もちろん、ネットで集客をすれば、広告費をかけることによって仕事を取ることは可能ですが、確実に取れるとは言い切れません。そのマーケットで業務の発生件数が少なければ、確実に売上を立てることは難しいといえます。

そこで考えたのが、「資格起業家理論」というものです。資格起業家理論とは、拙書『資格起業家になる! 成功する超高収益ビジネスモデルのつくりかた』(日本実業出版社)に詳しく解説してあるのですが、先に自分自身から仕掛けやすいサービスを展開して利益を上げる。そこで行政書士としての自分を知ってもらい、派生的に仕事を取るという方法です。この理論を活用すると、いわば「お金をもらいながら行政書士の営業ができる」という状態を作り出すことができます。

わかりやすく例を挙げましょう。例えば、あなたが会社設立の仕事を取りたいと思っていたとします。通常で考えれば、アナログ営業やネット営業を駆使して、会社設立の仕事を取ろうとします。もちろんこの方法は間違っていませんが、その上を行くのが資格起業家のビジネスモデルなのです。

まず、会社設立のお客様は起業家です。これから事業を始めようとする方がお客様になります。資格起業家理論では、そのお客様に対してダイレクトに営業をするのではなく、「起業家向けセミナー」や「起業家向けコンサルティング」などを実施してお金をいただきます。その上で、行政書士としての自分を知ってもらうのです。

すぐに会社設立の仕事が入ってこなくても、数か月後、1年後に入ってくるケースは十分あります。このように、先にセミナーやコンサルティングなどのビジネスを行い、お金をいただきながら行政書士としての告知活動をする。これが資格起業家理論です。

資格起業家理論では、特にこれをしなければならないというルールはありません。あなた自身のこれまでのキャリアを活かしたビジネスを考えます。例えば、営業経験が長ければ、営業コンサルタントとしてセミナーを主催したり、コンサルティングを実施したりすればいいのです。

何を行うのも自由なのですが、成功できるタイプには、セミナーの開催を主にするセミナー型、教材などを販売するコンテンツ型、コンサルタントとしても活動するコンサルティング型、コーチングを主軸とするコーチ型、異業種交流会、勉強会などを主催するイベント型などがいます。

このなかでも、アナログ営業やネット営業で成果が出始めてきたときに取り組んで欲しい資格起業家モデルが「セミナー型」です。

セミナーから始めよう

資格起業家理論に共感していただいた場合、まずは「セミナー」から取り組んでほしいというのが私の考えです。コンサルティング型は高い技能が求められたり、コンテンツ型は在庫リスクがあったりしますが、セミナー型は比較的取り組みやすいものです。

セミナーは、仮に集客が失敗したとしても、痛手はセミナー会場費くらいです。数名~数十名のお客様を集められれば、セミナーではそのお客様たちと近い距離で話をすることができますし、その後の業務獲得率が非常に高いものです。

私自身も、2004年に初めてセミナーを実施してから、最低でも2か月に1回は実施しています。自社開催ではなく、第三者が主催するセミナーに、講師としても積極的に参加しています。その結果として、講師料やセミナー収益などで売上を確保し、派生的に行政書士の仕事を獲得していきました。

アナログ営業とネット営業の次の段階でセミナー営業をすれば、行政書士として1000万円の売上を稼ぐことは可能です。ですから、あなたもアナログ営業とネット営業の次の段階では、このセミナー営業に取り組んでみてください。

「セミナーをするなんて、ハードルが高すぎる」という声もありますが、何か商品を仕入れる費用的なリスクや在庫を抱える恐れはありません。

特に行政書士のような士業は、「知識商売」とも言われますので、あなたが勉強したことや実践した成果を、もっと多くの方々に伝えてください。

自分の身内に行政書士がいたり、昔から仲の良い知り合いに行政書士がいたりして、どうしてもあなたに仕事を頼めないお客様もたくさんいます。そういうお客様であっても、あなたの知識や経験が優れていれば、その知識と経験にお金を払ってくれます。

そして人前で話すことが苦手だと思っている人に伝えたいことは、人前でうまく話すことは訓練することで誰にでもできます。

セミナーほど元手がかからず、リスクが低くて利益率が高く、その後の行政書士の業務につながる連動率の高いビジネスは他にありません。「自分にはできない」という思い込みを捨てて、「自分にはどうやったらできるだろうか」という問題解決思考で臨んでください。

セミナー開催第一の壁 コンテンツづくり

セミナー開催の第一の壁がコンテンツづくりです。つまり、どのような内容でセミナーを開催するかということです。これはゼロからひとりで作り上げるよりは、「誰かのセミナーのマネから入る」方法をおすすめします。

まったくのゼロからすべてを作成することは不可能です。著作権を侵害するのは論外ですが、セミナーのレジュメや話す内容など、最初はマネすることからはじめましょう。

内容づくりでの注意点は、「手続きの解説」の内容は避けることです。例えば、許認可取得の解説や会社設立手続きの解説をしてしまうと、ただの徒労に終わってしまうことが多いのです。なぜなら「手続きの解説」をしてしまうと、「行政書士に頼まずに、自分で手続きを行いたい人」が集まってきてしまうからです。間違っても手続きの解説をテーマにしてはいけません。

考えられるテーマとしては、「経審で高得点を取る方法」「企業のコンプライアンス」といった法知識に関連したテーマが良いでしょう。

あるいは、営業経験や経営経験がある場合には、マーケティング系のセミナーも考えられます。

私の場合は、「フリーランスのための営業術」「誰でもできる簡単経理術」「ブログ活用セミナー」などを経て、2005年前後にブームだった「ビジネスブログ」の活用に特化した内容でセミナーをしてきました。その後、「インターネット法律解説セミナー」「素人が商業出版するためのセミナー」などを開催した経緯があります。

このように、行政書士だからといって法律的なこと以外を話してはダメだということはありません。重要なのは、「お客様に役立つ情報を提供すること」なのです。

セミナー開催第二の壁 人前で話すこと

セミナー開催の第二の壁が、「話すこと」です。人前で話すことは、やはり最初のうちは「緊張」します。そこで、いかに緊張せずに話しができるかが最大のポイントになります。

緊張せずに話すことは、「うまく話せるようになるにはどうしたらいいか?」という質問ともほぼ同義ですが、これは経験値がものをいいます。稀に、初めてのセミナーでも達者に話す方がいらっしゃいますが、そういった方を除き、最初は誰でもうまくいかないものです。失敗するのが当たり前だという前提でいたほうがよいでしょう。

緊張しないためには、徹底的に準備をすることです。多くの場合、緊張は準備不足によって生まれるものですから、レジュメの準備やリハーサルを念入りに行うことがポイントになります。

私も初めてのセミナーのときには、自分のレジュメが真っ赤になるほど、赤ペンで話すことをメモしておきました。そして時間を計って何度もリハーサルを行いました。それでも緊張していました。

今のように緊張せずに話せるようになるまでには、4年近くかかったと思います。やはり経験を積むことが重要です。

セミナーで緊張してしまう心理ポイントは、「時間が余ってしまったらどうしよう」というものです。話すことがたくさんあって時間が押してしまう分にはさほど緊張しないのですが、話すことが無くなってしまうのではないかと思った途端に、緊張してしまうものです。時間が余ってしまうのは、講師として避けたいところですから、120%分のボリュームでつくっておくことが大切です。セミナー講師初心者の場合、セミナーを短く端折ることはできても、伸ばすことは至難の業です。

また、話し方の基本として、「えー」や「あのー」という無駄な言葉を取ることです。収録した場合は特に耳障りなので、意識して取り外すようにしてください。

面白い内容を話すコツとしては、自分の体験談を中心にすることです。セミナーは理論や理屈だけでは退屈なものになってしまいます。そこでメリハリをつけるのが体験談です。「私の場合」「例えば」などを口癖にして臨むと、セミナーの満足度は高まるといえるでしょう。

セミナー開催第三の壁 集客すること

セミナー第三の壁にして最大の壁が「集客」です。つまり、セミナーに来てくれるお客様を集めることです。いくら良い話ができても、お客様がゼロでは意味がありません。そのため、セミナー集客は最も重要になってきます。

「ホームページにセミナーの案内を掲載すれば、集客できますか?」「ブログで記事にすれば、お客様は集まりますか?」という相談を受けますが、この方法ではほとんど集まりません。

もしあなたがテレビに出ているような有名人であれば話は別ですが、サイトやブログに掲載したり、「Twitter」でつぶやいたとしても、集客はほぼ不可能といってもいいでしょう。

セミナーの集客で重要なのは、顧客リストに対して直接案内を送ることだからです。これが基本です。

これまで名刺交換した人や、過去のお客様にメールでお知らせをする。あるいはダイレクトメールを送るなど、顧客名簿に直接案内をする方法をしない限り、お客様には気づいていただけません。ですから、メールと紙媒体の2種類を使い分けて、ダイレクトに集客していきましょう。

(1)メールで集客する場合
メルマガ配信ソフトなどを使用し、これまで名刺交換した人のメールアドレスに一斉に配信する方法です。ひとつひとつ手作業で入れていくのは大変手間のかかる仕事ですが、一斉に配信できると非常に便利なので、積極的に利用しましょう。

メール本文にセミナーの案内を掲載したり、あるいはセミナー申し込み用の専門サイトをつくって、そのサイトアドレスをメール本文に掲載します。

自社リストが少ない場合は、他社メルマガの広告を使うのもひとつの方法です。無料メルマガ配信スタンド「まぐまぐ」などで検索すると、広告を受け付けているメルマガもあるので、そういったメルマガを見付け、広告を出稿してみましょう。

また広告だけでなく、アナログで読者数の多い方と仲良くなり、告知していただくのもひとつの方法です。

私自身は、これまで名刺交換した人にセミナーの案内を送ったり、何万部も読者がいる方のご協力を得てセミナー集客をさせてきました。このように、メールをつかって何人の方に告知できるか、そしてその告知できる人数ができるだけ多くなるように考えるのが基本です。

(2)紙媒体を使う場合
紙媒体を使用する場合は、メール集客と同じように、これまで名刺交換した人に対して、セミナーのご案内を紙媒体で送ります。セミナーのチラシを送るというとわかりやすいでしょうか。これも可能な限り多く送れるように名簿の数を増やしていきます。

自社名簿で足りない場合は、タウンページを使用して事業者名簿を集めたり、いわゆる名簿販売業者から名簿を買い、送付する方法もあります。紙媒体は昔から行われているスタンダードな手法ですが、コストがかかりますので、最初はメール集客の方を重点にする方が良いでしょう。

セミナー集客をさらに成功させるためには

セミナーの3つの壁である、「コンテンツ」「話し方」「集客」を少しずつ超えられるようになってきたら、少しマーケティングのレベルが上がってきたといえます。セミナーを成功させるために、より一層それぞれの分野に磨きをかけていきましょう。

学びたいこととしては、マーケティング、文章術、話し方など。こういったことを学んでいけば、さらに資格起業家理論は加速します。

本書の冒頭で、1000万円までであれば、高度な経営知識は要らないとお伝えしてきましたが、ここまで出来るようになってくると、「ビジネス書」を読む力もついてきますし、学べる土台がついてきたと言えます。

ここまで来たら、次のステージです。マーケティングや経営、ビジネスモデルをもっと学ぶとより可能性が開いてきます。貪欲に学び、あなたのビジネスを拡大させていってください。

※掲載されている内容は、作品の執筆年代・執筆された状況を考慮し、書籍販売当時のまま掲載しています。

本書「行列のできる行政書士事務所の作り方」は、当初「Marketing Grip」と改題し、POWERCONTENTSPUBLISHINGより加筆編集の上再出版される予定でしたが、現在の刊行が未定となったため、現在は横須賀輝尚オンラインサロン四谷会議でその改変原稿を読むことが可能になっております。

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