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第1章 新しい時代に生き残る行政書士になる

「月商100万円は、通過点」
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「行政書士の平均年収300万円以下」は真実か?

まずは、業界の迷信について解説しておきましょう。

「行政書士は食えない」「平均年収は300万年未満」などという、行政書士はまるでダメ資格であるかのようです。これはたんなる迷信ですから、信じていた方は、今から忘れてください。

まず「平均年収300万円」というデータですが、これは行政書士登録者に実施しているアンケート結果から来ています。しかしながら、このアンケートは行政書士全員が必ず答えているアンケートではありません。また、金額は自己申告ですので、データそのものの信頼性が低いものです。つまり、実際の平均年収を把握できている人がいないのです。

そもそも、平均年収を考えたり、行政書士が食えるかどうかを議論したりすること自体、全く無意味なことです。世の中にはいろいろな商売があります。コンビニエンスストア、アパレルショップ、コンサルタント、飲食店など、無数にある業界すべてにおいて、稼げるかどうかは経営者次第です。マイナーな業界で億万長者になる方もいれば、勢いのある業界なのに破産する方もいます。あくまでも本人次第なのですから、これから始めるあなたも、すでに開業しているあなたも、低い年収のデータに嘆く必要はありません。

実際に、年収が1000万円を超えている行政書士はたくさんいます。成功している人全員が表舞台に出てきているわけではないので、成功事例をあまり聞いたことがないかもしれません。ですから、こうした迷信に惑わされることのないようにしてください。

このような迷信とは真逆なのですが、資格のための予備校が発表しているデータや、資格図鑑に記載されている平均年収なども、やはり参考程度に考えましょう。この手の情報は、「年収は高め、展望は明るく」書いてあります。それは「生徒を集めること」や「購入してもらうこと」を目的にしているので、資格を取ることで無限の可能性が広がっているように解説してあるものです。

資格は、きちんとその性質を見極めた上で活用していかなければ、これからの時代では成功できません。もちろん、使い方と考え方次第で無限に拡大する可能性があるのですが、「資格さえもっていれば大丈夫だ」という甘い考えは捨ててください。この点には注意が必要です。

そもそも、行政書士の見込める年収が300万円と書いてあっても、1000万円と書いてあったとしても、それであなたの年収が変わるわけではありません。

行政書士は有望資格なのか?

結論からいってしまえば、有望資格であるといえます。

たとえ法学部や法務部などの法律畑出身でなかったとしても、取得しやすい資格であると言えます。資格取得の難易度に対して、扱える仕事の範囲をみても、有望資格といえます。

さらにマンガ『カバチタレ!』などの影響(ドラマにもなった)や、資格予備校などでも人気資格として取りあげられていることから、社会的な知名度も徐々に上がってきています。

この社会的知名度というのが実は意外と重要で、全く知られていない資格というのは、非常に不利といえます。なぜなら、「全く聞いたことのない資格」は、信頼性という点でも劣ります。

そうした社会的知名度の点でも有利な資格といえます。

ただし、資格はただ持つだけでは意味がありません。戦略を練り、行動に移し、活用して初めて効果があります。それだけは忘れずにいてください。

今、行政書士業界には何か起こっているか?

2010年現在、日本は不況です。これが単なる好景気と不景気が繰り返されている中での不況であれば、やがて好景気が訪れるのですが、現在の不況は過去の不況とは状況が異なります。

まず、日本は「少子高齢化社会」に突入しています。そしてこのままでは、人口が年々減っていきます。そして減るのは人口だけでなく、法人の数も減っていきます。

行政書士の仕事は、だれもがいつでも頼む性質のものではありません。たとえば、会社をつくることになったから行政書士に設立の手続きを依頼する。あるいは、相続の手続きをしなければならないから依頼する。そういった限られた状況で発生します。

つまり、少子高齢化によって行政書士のマーケットは縮小しています。

ところが、資格予備校も市販されている資格図鑑も、あまりこの点については触れていません。マーケットが縮小傾向にあるのにもかかわらず、資格予備校のビジネスでは、「これからどんどん仕事が増える、良い資格です!」と言わなければなりません。そのため、マーケットについてはあまり触れることができないのです。目を背けたくなるかもしれませんが、これが事実なのです。

さらに現状は、行政書士の数が増えています。弁護士の数が増えていることで「弁護士ビッグバン」として注目されていますが、行政書士の数も確実に増えています。競争相手が多いのですから、生き残りをかけたシビアな世界になるというわけです。

これまで、「行政書士の資格があれば食べていける」という神話がありました。しかし、それは競争がなかった時代のことです。競争がなければ、仕事は口コミで広がり、自然と仕事がやってきました。

このような行政書士業界に最も大きな衝撃を与えたのが「インターネット」です。これは行政書士に限った話ではありませんが、一昔前は行政書士を探すには、人づてかタウンページで探すくらいしか方法がありませんでした。ですから、お客様は他の事務所との比較などもできず、ただ目の前に現れた行政書士に頼むしかなかったのです。

しかし、インターネットが爆発的な普及を見せたあとには、次々に行政書士がホームページを制作しはじめ、あっという間に「サイトを持っていることが当たり前」という状態になってしまいました。

サイトには報酬額が掲載されているケースが多く、例えば依頼人から問い合わせがあったとしても、「おたくの事務所はほかの事務所より少し高いんじゃないですか?」と比較されてしまうわけです。驚くことに、昔は行政書士の報酬が一定だったのです。「昔は料金が一律だった。良い時代だった」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、報酬額が決まっているほうがナンセンスです。

このように、あらゆる意味で行政書士業界も「競争社会」になったと言えます。その結果として、インターネット上の掲示板や情報交流のためのSNSなどでは、「行政書士はもうダメだ」と言われてしまっているのです。

正しい手順を踏めば、誰でも成功できる

では、行政書士で成功する道はないのでしょうか。結論を言えば、行政書士で成功することは可能です。

確かに現実問題として、マーケットの縮小やインターネットによる価格破壊などで競争が激しくなっていますが、正しい手順さえ踏めば、行政書士で成功することは誰にでもできることなのです。

ここで、少し私の話をさせていただきます。

2003年5月、私は行政書士の資格を持って独立開業しました。独立起業というと聞こえはいいですが、新卒で入社した会社にたった1か月でリストラされたことがきっかけで、もう誰かの元で働きたくないからという、どちらかという逃げの開業でした。

ですから、お金も30万円くらいしかない状態。もちろん人脈もない。事務所は自宅である6畳一間の小さな木造アパートでした。

果たして行政書士で食べていけるのか不安だった私は、まずは情報収集から入りました。

当時、私はネットで情報収集していましたが、どうしてもネガティブな情報が多く、やはり行政書士という資格だけではうまくいかないのではないかと思ったこともありました。2003年の頃は開業本も少なく、よくよく考えてみれば本物の行政書士に会ったことすらありませんでした。

「そもそも、行政書士って本当にいるのだろうか?」

そんな疑問すらわいてきました。

行政書士は行政書士会に登録をして初めて行政書士と名乗り、活動できるようになるのですが、登録手続きが完了した後に、登録式という式典のようなものがあります。新しく行政書士となった方に、激励と諸注意をするようなイベントです。

ここには行政書士に成り立ての人が多数集まっており、どうやら行政書士は実在するようです。しかし、自分を含めこれはあくまでも新人。成功者と呼べる人はいないのだろうか、と考えました。

「もし、実際に行政書士で成功している人がいなかったら、ネットの情報は本物だ。しかし、もし成功している人が実在したら、ネットの情報の方が嘘になる」

そう考えた私は、東京都行政書士会の各支部長に話を聞きにいきました。

ちなみに、行政書士にはいくつかの組織があり、日本行政書士会連合会という行政書士法上の法人の下に、各都道府県ごとの「単位会」と呼ばれる組織があります。さらにその下に「支部」と呼ばれるものがあります。

例えば、私は東京渋谷区に事務所がありますので、「東京都行政書士会、渋谷支部所属」になります。各単位会で運営は異なりますが、支部ごとの研修や単位会ごとの研修があり、行政書士の実務を学ぶことができるのです。

こうした行政書士会主催の研修に参加し、人脈をつくり、「行政書士の実態」とでもいうべきことを調査しました。そして、多数の行政書士に会う中で、たったひとつハッキリとわかったことがありました。

それは、成功している行政書士は間違いなく存在する、ということです。

それを知った私は「あとはやり方さえ間違わなければ、絶対に成功できる」と確信しました。そして紆余曲折を経て、1年半で月商100万円を突破し、25歳で初めて著作を出版。現在は士業向けの経営スクール「天才塾」を運営するまでとなり、毎日たくさんのご相談をお受けしています。

私の創業時代の状況は、30万円未満の開業資金、そして人脈なし、社会人経験すらなかったわけです。その私よりひどい状況にある人は、それほど多くはないのではないでしょうか。

とはいえ、ここまで読み進めてみたものの、もしかしたら不安に感じられているかもしれません。次はその不安を希望に変えていきます。

年商1000万円レベルは実現可能!

行政書士業界は、現在の日本マーケットの流れ、そしてインターネットなどのインフラ整備の影響を受け、厳しくなってきているとお伝えしました。しかしながら、これは行政書士に限った話ではなく、どの業界でも影響は受けています。

確かに日本全体が不景気だといえますが、小さな事業者に限っていえば「目の前のお客様からきっちり報酬をもらう」ということができれば、商売は成立するのです。そして、マーケットが縮小傾向にあるとはいえ、行政書士に仕事を頼む人はたくさんいます。

電子化や規制緩和で仕事がなくなるとの憶測もありますが、「手続きを自分でしたくない人」は存在し続けますし、行政書士業界に限っていえば、現在の状況は悲観的な状況ではなく、単に「振り出しに戻った」だけなのです。

これまでは報酬も決まっていましたし、行政書士人口も少なかったので、資格があれば食べられました。しかし、前述のとおり現在は競争しなければならない時代に突入しています。つまり、行政書士も選ばれる時代になってきているのです。そして冷静に考えれば、「ずっと安泰して食える業界」などないのです。時代とともに廃れる商品、サービスは山ほどあります。

例えば、ポケットベル。もう使っている人はいないくらいでしょう。解説するまでもなく、廃れてしまった商品です。これに対して、行政書士をはじめとする資格業は、国が作った資格制度であるがゆえに、商品や商品サイクルについて議論されることがほとんどありませんでした。そのため、「ずっと安泰して食える」と思われてきたのです。

ポケットベルは廃れ、次に携帯電話で通話するのが主流になり、その次には携帯メールが当たり前のツールとなりました。そして今ではiPhoneに代表されるスマートフォンやアップル社から出ているiPadが注目されています。

ビジネスは時代とともに変わるのです。ですから、行政書士も盲目的に「資格だから大丈夫」と高をくくるのではなく、冷静に時代を観察しなければなりません。

また、状況が厳しいのは、新人の行政書士だけではありません。何も営業努力をしてこなかった、10年、20年以上のベテラン行政書士たちも、このあおりを受けています。つまり、今は誰でも努力次第で結果が出せる時代になったと言えます。

言い換えれば、全員がスタートラインに立った状態と言えるでしょう。そして、重要なポイントとしては、「間違った情報を鵜呑みにして諦めてしまっている方」が多いということです。ネットの情報、行政書士業界を知らない人から聞いた噂、実態にそぐわない資格ガイド。そういったところから、「そもそもうまくいかないものなのだ」と決めつけてしまっている方が多いのです。

まだ何もやっていないのに、諦めてしまっている方が多いのはチャンスです。何より、同業との競争が遅れている業界です。つまり、全員がフラットになった今が本当の意味でチャンスなのです。

誤解を恐れずに言えば、本書にあることを中心に、今から行動を起こしていけば、年商1000万円までは達成することが可能です。もちろん地域やあなたが置かれている状況に対応させる必要はありますが、1000万円くらいのレベルであれば、難しい経営理論も不要です。安心して、確信を持って行政書士開業に臨んでください。

さらに本書後半で示しているように、行政書士も単に書類作成だけの専門家でなく、マーケティングや経営に詳しくなり、セミナーなどで知識をもっと提供していく。こうした新しいスタイルをこなしていくことによって、成功のスピードが増していきます。というよりも、今後はこうした新しいスタイルが主流になってくるでしょう。

数年前までは、こうしたやり方は業界的にタブーでした。私が初めてセミナーをしたのは24歳のときですが、全く面識のない先輩行政書士から注意を受けたものです。今でも「行政書士は行政書士の仕事だけしているべきだ」という風潮は残っていますが、私が開業した頃よりは自由になってきていると感じています。

行政書士で成功できるかどうかは、すべてあなた次第なのです。

新しい時代に生き残る行政書士になるには?

さて、これまで行政書士の業界や今後の展望などについてお伝えしました。では、これからどのように活動をしていけば、成功できるようになるのでしょうか。

まずは根拠のない余計な情報をシャットアウトしましょう。何度もお伝えしていますが、行政書士で成功できるかどうかはあなた次第です。他の人が何と言おうが何をしようが関係ありません。あなたの決意と行動で結果が出ます。

行政書士業界に限った話ではありませんが、同業者や先輩から苦言を呈されることもあるでしょう。「そのやり方ではダメだ」「もっとこう考えた方が良い」。確かに素晴らしいアドバイスをしてくださる方もいらっしゃいますが、その一方で根拠のない単なる「ダメ出し」をしたいだけの方もいるわけです。

ですから、先輩行政書士からのアドバイスがすべてが正しいとは限りません。特にインターネットが普及する一昔前は、戦略なしに何となくやっても顧客を獲得できた時代でした。その当時のことをもとにしたアドバイスが、そのまま今の時代に当てはまるとはいえないのです。正しい根拠のある情報をつかむことが重要だといえます。

次に意識を変えること。自分の人生ですから、自分が決意しなければ始まりません。他業種と同じように、行政書士で成功している人はいますので、行政書士の資格や世の中が悪いことはありえません。資格に依存することをやめ、自分で自分の人生をどのようにしたいかを決めることが重要です。そして本書にあることと素直に実践し、行動すること。これが重要になります。

もう一度、私の開業の頃の話をしましょう。新卒で入った会社をたった1か月でリストラされました。人脈も社会人経験もなく、精神状態も最悪でした。たった30万円の開業資金を握りしめ、仕事の取り方も暗中模索。毎日弱音を吐きました。「やっぱりダメかもしれない」「成功している人のようにはなれない」と何度も思いました。行政書士のビジネスに関する情報も少なく、無駄な広告費を使ってしまったり、危険な目にもあいました。売上が伸びず、電話やガスが止められたこともあれば、成功者から屈辱的な目にあわされたことも多々ありました。そんな私が、なぜ行政書士として生き抜くことができたのか?

それは「自分を信じた」からです。くじけそうなときにも、いつか必ず成功するんだという強い決意を持ち、「絶対に自分にもできる」と信じ込みました。もちろん自信を喪失することもありましたが、必ず最後には成功できると信じていました。

自分を信じられない人は、お客様や仕事を依頼するスタッフのこと、そして家族を幸せにできるわけがありません。自分を信じられない人には、幸運もついてきません。

あなたは自分を信じることができますか?

あなたの欲しい答えである行政書士として成功するための方法は、本書にすべて掲載してあります。

あなたも固く決意するなら、今から力強い一歩を踏み出してください。

※掲載されている内容は、作品の執筆年代・執筆された状況を考慮し、書籍販売当時のまま掲載しています。

本書「行列のできる行政書士事務所の作り方」は、当初「Marketing Grip」と改題し、POWERCONTENTSPUBLISHINGより加筆編集の上再出版される予定でしたが、現在の刊行が未定となったため、現在は横須賀輝尚オンラインサロン四谷会議でその改変原稿を読むことが可能になっております。

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四谷会議は横須賀輝尚が考えていることの公開と実践と結果、検証、問題勃発などを一番近くで見られるところです。リアルタイムの舞台裏とでもいいましょうか。そのうえで考える力を身に付けてもらえるよう、毎日記事を投稿しています。コンセプトはGet "Think more."です。


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