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台湾ライフ|異文化の中で働くということ



私達は常に異文化に触れていると思う。と書いたところで、まず「文化」ってなに?人によってとらえ方が違うんじゃない?と改めて思ったので調べてみた。

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説から。

人間の知的洗練や精神的進歩とその成果,特に芸術や文学の産物を意味する場合もあるが,今日ではより広く,ある社会の成員が共有している行動様式や物質的側面を含めた生活様式をさすことが多い。このように定義される文化は,言語,思想,信仰,慣習,タブー,掟,制度,道具,技術,芸術作品,儀礼,儀式などから構成される。これは E.タイラーの「文化または文明とは,知識,信仰,芸術,道徳,法律,慣習など,人間が社会の成員として獲得したあらゆる能力や習慣の複合的総体」という古典的定義に由来する。この見方によれば,人類文化全体は個性的なまとまりをもった多数の個別の文化単位で構成され,個々の文化単位はある程度他の文化単位と重なり合っている。

さらに大辞林 第三版の解説。

①〔culture〕 社会を構成する人々によって習得・共有・伝達される行動様式ないし生活様式の総体。言語・習俗・道徳・宗教、種々の制度などはその具体例。文化相対主義においては、それぞれの人間集団は個別の文化をもち、個別文化はそれぞれ独自の価値をもっており、その間に高低・優劣の差はないとされる。カルチャー。
②学問・芸術・宗教・道徳など、主として精神的活動から生み出されたもの。
③世の中が開け進み、生活が快適で便利になること。文明開化。
④他の語の上に付いて、ハイカラ・便利・新式などの意を表す。

まとめるとどうやら「文化」とは「行動様式」「生活様式」のことと。かなり幅広いので、極端なことを言えばお隣の家でも生活様式が全く異なれば文化が異なるということになる、ということだと認識しました。同じ日本国内でも関東と関西では全く文化が異なることも多々ありますものね。企業文化というものもありますし。

これらのことを踏まえて、台湾で働きながらやはり文化が異なるよなぁって思うことをつらつらと書いてみたいと思います。ちなみに台湾で働く前は日本国内でしたが、外国籍の方が3-4割いる環境で働いていたので、多少は他国との文化の違いを肌で感じることもありました。今考えてみると、多少は、ですけれども。やはり日本に来て働いている学国籍の方は、かなり日本に合わせようという努力をしているか、もしくは日本の文化にも慣れている、馴染んでいる人が多いから。それが日本人からすると「違うなー」と思っても、実際はやはり日本にある程度馴染んでいるなぁと今なら感じます。

そして働きながらどこが違うかなぁと改めて考えてみました。台湾に住んでいる友人たちと話していた時に出てくる「台湾あるある」も含めて書いてみています。


①時間感覚がゆるい

これは台湾に駐在している方とお話ししていると台湾あるあるでよく言われる「台湾時間」ってやつ。人によって差はあるもののちょっとした遅刻は割と普通。外注先が我が社に来て月次の打合せを行う時にも時間通り来たことがありません(笑)。最初の頃は遅刻20分とか普通だったのですが、さすがに最近は5分程度までに改善されました。営業の人はちょっと違うかな。優先順位の問題かもしれません。日系の企業だときちんと時間通り。

そして会社の始業タイミングに必ず来ているか?というと数分遅れる人もそれなりに。雨の日には必ず遅刻する人とか。あと、会社が始まる時間には来ているのですが、そこから朝ごはん食べ始めたり、お茶入れにいって20分ほど帰ってこなかったり。ただこのあたりは本当に人によっても異なります。でも日本に比較すると多いかなぁ・・・。5分遅れてきたら、5分余分に遅く帰ればいいよね!という人もそれなりにいます。が、会社の方針として始業時間には仕事始めようね、にしています。最初の頃は始業1分前に来る人とかとっても多くてちょっとイラっと来ることもありましたが、現在では気にしなくなりました。きちんとやることやってくれてたらOK。でも遅刻はNG。

ちなみにバスは遅れることが多いのは日本も同じですが、台北市内のMRTはそもそも時刻表が始発と終電しかありません。ちょっと遅れたからごめんなさいというアナウンスはそもそもありません。その間は時刻表が無いのでホームに行って待つのみ。電光掲示板でどの駅あたりに次の電車がいるのかや、あと何分で来るというのは分かるのですが、時刻表がないというのは私にとっては驚きでした。桃園-台北間のMRT空港線や高鐵は時刻表あります。


②台風がきたらお休み

ここ2-3年ちょっとおかしな感じにはなっているようですが、台湾は6月末頃から10月前半が台風シーズンとなります。ちなみに日本で言う梅雨が5月から6月中旬頃まで。沖縄とほぼ同じです。

で。台湾を通る台風って勢いが弱まる前に直撃するのでとても強烈なのです。だから外に出るなんてアブナイアブナイ。停電とか、水が止まるとかも十分にあり得ます。だから台風が来ると前日の22時ごろまでに各市政府から翌日の学校・仕事がお休みかどうかの通達が掲載されます。

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これは現在のものなのでお休みのお知らせは書いてありませんが、こんな感じで各市政府ごとに掲載されます。そしてお休みの通達があれば、全ての学校と、その市内の会社はお休み。私がいる会社でも台風が来たらそこから日本の取引先に一斉に台風でお休みの為全ての業務が停止するお知らせを送っています。メンバーはお休みになって喜んでるけど、管理する側としては業務への影響が気になるところ。お休みの影響で遅れが出続けないように確認することも注意点のひとつ。因みに台風で会社に出社できないから在宅で、ということは基本ありません。

私は台風で停電や水が止まったことはないですが、実際に停電になったり水が止まったりということはあり得るので、台風前は水、引きこもる程度の食料を確保。携帯のバッテリーも満タンにして備えています。にしても、今年全然台風の気配がない…ちょっとおかしい。


③プライベートが優先

改めて日本人って良くも悪くも仕事優先なんだなぁって思います。日本と同じ感覚でマネジメントは絶対にできません。業務は定時を超えると基本終了。直ぐに帰ります。その日中に絶対にしなければならない業務が残っていたら残業することはあるけれども、基本帰宅。なんならその日のうちに終わらせなきゃいけない仕事をせずに帰っちゃう人もいたりします。だからといって残業を絶対にしないわけではありません。それが自分の評価や給与と紐づいていて、残業してでも業務を終わらせないと評価に影響するとわかっていたら残業しているように思います。私が一緒に働いているメンバーは責任感がかなり強い人たちが多いこともあり、絶対にこの期限に間に合わせるのが仕事だと分かっているものは残業してやっています。

因みに台湾においては通常の企業契約では22時以降残業させること自体が違法なのだそうで、割増の残業代を払えばOKというわけでもないそうです。このあたりは日本と全く異なっていて驚きました。さらに休日出勤の休日手当は驚くほど高い。

付き合いで飲みにいくってこともほぼ皆無。予定が入ってなかろうと急なお誘いはほぼ断られます。関係性にもよりますが、上司がご飯に誘うと業務扱いになるのか確認されることもあり、会社のメンバーとご飯に行くことは歓送迎会とか事前に計画してとか、一人暮らしで残業して遅くなった割と仲の良いメンバーに声かけてOKだったら、という感じで、日本にいた時のように「仕事終わったからちょっと一杯」というノリはほぼありません。そういえばお酒飲む人も少ないんだよなぁ、日本より。台湾に来てお酒を飲む機会はいっきに減りました。ちなみに飲む人たちはとことん飲むようです。

そして、有給もしっかり消化。日本より有給は少ない印象ですが、しっかりお休みを取っています。なんなら有給残が無いのを分かっていても休む人もいます。背景として、日本に比較して祝日がかなり少ないということもあるかもしれません。ちなみに6月に連休があった後、その次の連休は9月末までありません。そして夏休みもありません。個人的には業務に大きく影響がなければ有給使えれるなら使える環境の方が本来であればいいとは思っています。そしてお休みしても業務に大きな影響のない環境や仕組み作りを行うことも私の仕事だよなぁとも思っていたります。お休みのための引き継ぎとかはしっかりして欲しいけど。


④明確な指示が必要

日本では「これは自分で考えて判断しようよ」ということも、明確な指示を待つ人が多いような気がします。割と「これはどうすればいいですか?」と気軽に質問をしてきます。最初は「これぐらい考えようよ!」と思ったものですが、基本的に日本に比較すると格差があるのが当たり前というゆるやかな前提のもと、上下関係は日本よりも明確な部分もあり、下の立場の人が上の立場の人に意見を物申すということ自体が概念としてない人もいるようです。もちろんこれは全ての人がそうだという話ではなく、全体的なゆるやかな傾向としてはそうだよねということなので、個別に見ると全然そんなことないよ、ということも多々あります。企業によってもだいぶ異なるようですし。海外で働いて戻ってきてる人もたくさんいますしね。そして最近はだいぶ変わってきているとも聞きます。

それでも明確な指示が無ければ、きちんと指示をしない方が悪いという雰囲気が多少あるのも確か。「その指示は聞いていません。知りませんでした」と言われることもあります。だから自主的に判断できるようなチーム育成も時間がかかる。どうしてこの判断をするのか、背景も含めて丁寧に説明し、そのケースを積み上げて、どのような時にどのような判断をすればいいのか訓練していく。日本でも一緒だとは思いますが、これがより丁寧に、辛抱強くしていく必要性を非常に感じています。同じような質問を何度もされて、たまにイラっときちゃうこともあるんですけどね。でもこれはどこでも同じか。

ただ。日本においてはなんとなく雰囲気を読み、部下やメンバーが汲み取ってくれていることが多いんだなぁ、指示出す側として甘えていたんだなぁと感じることもあって、明確な誤解のない指示を出すスキルって大切だよね、と思ったのでした。部下に指示出したのに全然違うものが上がってきた、なんて時には、自分の伝え方も一度見直してみるいいきっかけとなるのかもしれません。


⑤気軽に転職する傾向が強い

結構気軽に転職します。もちろん一つの会社に割と長く勤めている人もいるけれど、一つの会社にずっといようという思いはほぼないと思います。なんとなくですが2年ぐらいで転職している印象。短い人だと1年ほど。長くその会社で働いているとしたら、自分にとっての条件が良いから。給料だけの問題ではありません。残業あるなら他の会社に行きます、という話も面接で聞いたりしました。そして次の仕事決まっていないけど辞めますという場合もなきにしもあらず。

気をつけなければならないのは春節明け。台湾は春節前が1年のボーナス時期。ボーナスをもらって春節が明けたら転職する人も多くいます。ボーナスが思ったより少なかったとか、そういう理由で。

そしてその企業で働いた年数(月数)に応じて、何ヶ月前、何週間前には退職について申し出る必要があるという法律もあるのですが、働いていた期間が短ければ2週間とか3週間という場合もあり、有給が残っていると引継ぎ期間が異様に短くなってしまいます。だから、引き継ぎをしっかりしてもらえるように仕組みを作るのってとっても重要です。引き継ぎせずに急に辞めちゃうこともありえるので。



他にも色々あるんですけども。働いていて感じていつ大切なことは、現地のルールを理解してどこまで寄り添うのか、合わせるのかという点を明確にするということ。絶対に守らなければならない法律は理解し遵守すべきですが、慣習として目に見えないルールを知らなければ、ある日突然大変なことが起こるやもしれません。文化として合わせること、企業としてゆずらないこと、これをメッセージとして浸透するまで伝え続けることが大切だと思います。結局は人と人の関係性。譲れないラインは明確にして、歩み寄る姿勢、理解することがとても重要だよなあとも思います。そしてごまかさず、きちんと向い合って話をすること、かな。でもこれって国がどうこうって関係ないんですが、文化が異なるからこそ、より意識する必要はあると思います。

そして最後に。「あぁ、こうきたか!」と面白がるぐらいの心の余裕が結構大切だよなぁって思います。びっくりするぐらい想像していないところに、その違いが隠れていたりするので。


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