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香水の移り香を漂わせ、君は家に帰ってくる


なんのことはない、4歳になる息子のはなしである。


一年ほど前から、上の子が通う小学校に付属の

ナーサリー、つまり幼稚園に通うようになった。

毎日、香水の匂いをぷんぷんさせながら

帰ってくる。

時には、数種類の香水が入り混じった匂いを振り撒く。

その匂いに、時にはうっと圧倒されながら、

「幼稚園でいっぱい、先生たちに抱っこされているのだろうな」

と、私は少しホッとする。

 家に帰ってくるたびに

「今日はなにをしたの?」

「誰と遊んだの?」

「トイレはひとりで行ったの?」

「なにがいちばん楽しかった?」

と、質問攻めにしても

「わからない」「わすれた」「しらない」

と、親からすれば、もどかしいばかり。

子どもたちの学校では専用のアプリに

子どもたちの作品や宿題、

ナーサリーでの様子を撮影した写真や

ビデオを送ってくれる。

けれど、どれを見ても

息子はひとりで遊んでいることの方が多い。

いやいや、これは学校生活のほんの一部

と、自分に言い聞かせる。

けれど、ひとりで

でも楽しそうのブロックを積んだり

絵を描いたりしている姿に

胸の奥の方が、シュッと縮む。

上の娘は、ナーサリーの入った最初の日から

エマちゃんが、アイビーが、アリスちゃんが

と、たくさん、お友達の話をしてくれた。

あんまり多く名前が出てくるので

おぼえるきれないくらいだった。

けれど、同じように育てているつもりでも

全然、別の性格になるのは

当然のことか。息子の口から

お友達の名前が出てくることは

少ない。


上の娘は、ナーサリーに入って、最初の三ヶ月は

毎朝、入り口で泣き叫び

毎朝、送っていく父は

涙目で仕事に行った。

やっと慣れてきても

「今日は行きたくない」

「おうちにいたい」

と、毎朝、毎朝、ごねた。


それに比べ息子の方は

どんなに寝起きが悪くても、調子が悪くても

「今日はお休みする?」

と、水を向けても

「いく」

と、いそいでリュックを背負う。

学校が好きなのは、確かのようで。


毎日、学校から帰ってくる息子を抱きしめて

泣いたのか、甘えたのか

とにかく

先生たちにかわいがってもらって

たくさん、抱きしめてもらってたのだろう

と、今日もきつい香水の匂いに

ホッとする。

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